ついうっかり……では許されない
「アウティング」とは
第三者が本人の了解を得ずにその人の性的指向を暴露する「アウティング」は、悪意のあるなしにかかわらず許される行為ではありません。
当事者の周りの人が職場での雑談や飲み会の席でうっかり口を滑らせないためには、どんなことに気をつければいいのでしょうか。また、アウティングしてしまった場合、どのような責任が生じるのかを知っておくことも防止対策として大切です。アウティングについて、LGBT法連合会・事務局長の神谷悠一さんに伺いました。
当事者の周りの人が職場での雑談や飲み会の席でうっかり口を滑らせないためには、どんなことに気をつければいいのでしょうか。また、アウティングしてしまった場合、どのような責任が生じるのかを知っておくことも防止対策として大切です。アウティングについて、LGBT法連合会・事務局長の神谷悠一さんに伺いました。
公開日:2023/07/28
アウティングとは
「アウティング」とは、本人が公表していない自身の性のあり方(性的指向・性自認)を第三者が本人の同意なく他者に暴露してしまうことです。職場におけるアウティングはパワーハラスメント(パワハラ)の一種であり、「SOGI(Sexual Orientation Gender Identity)ハラ」の言葉も誕生しました。
アウティングと混同してしまいがちな言葉に「カミングアウト」があります。
◆ アウティング……本人が公表していない自身の性のあり方を、第三者が本人の同意なく他者に暴露してしまうこと
◆ カミングアウト……(LGBTQ+の文脈において)自らの性のあり方を自覚し、それを自ら他人に開示すること
職場でのアウティング事例
アウティングの被害は枚挙にいとまがありません。たとえば、次のような事例があります。◆ 職場におけるアウティングの事例
- 内定した企業の人事担当者から「あの人もトランスジェンダーだよ」といわれた。
- 配属先の管理職が朝礼で「次に配属される人はゲイだが気にしないように」といった。
- 飲み会の席で先輩に「この人、実は(同性の)彼氏・彼女がいるんだよ」といわれた。
そのため、アウティング行為を起こさないよう注意を払うと同時に、起こってしまった場合、いかに被害を最小限に抑えるかが重要になります。
アウティング防止措置は企業の義務
2020年6月、「改正労働施策総合推進法」(通称、パワハラ防止法)が施行されました(中小企業は2022年4月から)。パワハラ防止法に基づく指針には、SOGIハラやアウティングもパワハラであることが明確に記載されています。同法律によって、アウティング防止措置は企業の義務になりました。講ずべき措置も指針として提示されています。1.アウティングの禁止や懲戒規定を明文化し周知・啓発する
企業はアウティングが起きないよう、アウティングの禁止や懲戒規定に関する方針を就業規則等に明文化する必要があります。さらには、従業員全員に周知・啓発しなければなりません。2.相談窓口を設けるなど体制を整備する
相談窓口や担当者をきちんと定め、アウティングに対応するための制度を設けなければなりません。その際に重要なのがプライバシーの保護です。相談者(アウティングされた人)ならびに行為者(アウティングした人)のプライバシーを保護するためのマニュアル策定や研修といった取り組みも必要です。3.アウティングが発生した場合、迅速かつ適切に対応する
アウティングが発生した場合、まずは事実関係の確認をします。事実が認められた場合の被害者のケアと、懲戒規定に基づく加害者への処罰などを早急に行います。パワハラ防止法では発生後に適切な措置を講じることも義務としています。アウティング発生時に必要な事後対応
職場でアウティング被害が起きてしまった場合、一般的なハラスメント対応と同様に、被害者に対する加害者の謝罪、加害者と被害者を引き離す措置(原則として加害者を異動させる)など、被害者のメンタルヘルスケアを迅速に行います。さらにアウティングの性質を踏まえた対応策として、東京・豊島区男女共同参画苦情処理委員は、区内で起こった職場におけるアウティング事件の再発防止のため、以下の項目を盛り込んだ周知資料の作成を表明しました。
「『アウティング』が起こった場合の適切な事後対応には、被害者への謝罪等、一般的なハラスメント被害に対する事後対応の他に、本人の同意を得ない情報が広まった範囲を確認し本人と共有すること、更なるアウティングが起こらないよう広まった範囲内における情報管理の徹底などが含まれること」
意見表明を受け、豊島区は今後のアウティング防止施策に反映し、さらなる予防啓発を進めていくための措置を講じました。
他者の性的指向を知った人が意識するべきこと
現在の日本社会では、性的指向や性自認に関する情報によって、差別やハラスメントが引き起こされることが少なくありません。そのため、LGBTQ+の当事者は、本人の性のあり方に関する情報をコントロールする必要があります。これを「ゾーニング」といいます。社会における差別や偏見によって、当事者が一義的に、本来であれば必要のないカミングアウトの選択やゾーニングを迫られている現実を、周囲の人たちはもっと認識する必要があるでしょう。
そして何よりも意識しておくべきことは、「カミングアウトをするかどうかの判断は、当事者に委ねられている」ということです。どんな理由があるにせよ、周囲が勝手にアウティングしていいものではありません。
なかには「カミングアウトをされた人も大変だ」という声もありますが、当然ながらカミングアウトする人が悪いわけではありません。社会的にSOGI差別があるからこそ、カミングアウトするかしないかが当事者に大きな問題としてのしかかってしまっているからです。
ただ、どう接したらいいかわからないなど、カミングアウトされた人が対応に迷い、誰かに相談したくなることもあると思います。そうした場合、守秘義務のある自治体や専門相談窓口に相談しましょう。
※記事内で取り上げた法令は2023年4月時点のものです。
取材先
LGBT法連合会 事務局長
神谷悠一 さん
早稲田大学教育学部卒業。一橋大学大学院修士課程修了(修士/社会学)。専門分野はジェンダー・セクシュアリティ研究。LGBTを支援するNPOなどの役員を歴任し、2015年にLGBT法連合会の事務局長に就任。「多様性のある社会の実現」や「LGBTとハラスメント」などをテーマに講演会を行なっている。
神谷悠一 さん
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