採用戦略とは、採用活動の手法やプロセスを決める際の判断軸となる方針のことをいいます。自社に合った採用戦略の設計方法について、大手企業の採用・人事責任者を経験してきた株式会社人材研究所・代表の曽和利光さんにお聞きしました。
採用戦略を考えるための2つの軸とは
自社が取るべき採用戦略を考えるには、まず現在置かれている状況をしっかり把握することが重要です。採用活動における自社の状況は、以下の2つの軸によって分析できます。
1つ目の軸は、自社が「多くのエントリーを得られる企業であるかどうか」です。といっても単に数が多いかどうかということではなく、“自社がターゲットとする層の”エントリー数で判断します。例えば5万人のエントリーがあったとしても、そのほとんどがターゲットと違う層であれば「少ない」と考えます。逆に500人しか応募がなくてもほとんどターゲットと合致していれば「多い」と言えるかもしれません。目安として、採用したい人数に対してターゲット層からのエントリーが100倍以上あれば「多い」と判断してよいでしょう。
2つ目の軸は「今回の採用に使えるリソースが多いかどうか」です。リソースとは、大まかに予算とマンパワーに分けられます。予算については、新卒であれば採用1名あたり50~100万円、中途なら採用1名あたり年収の35%という相場を目安にします。それに対し、今回の採用活動に使える予算が上回るか下回るかで「多い・少ない」を判断しましょう。マンパワーについては、目安として年間20人の採用につき1人の担当者をアサインできるかどうかが判断基準となります。
自社はどれに当てはまる?採用戦略の4タイプ
採用戦略の決め方は、上記で説明したエントリーとリソースそれぞれの「多い・少ない」の組み合わせによって、下記の4タイプに分類できます。
- エントリー:少ない/リソース:少ない
限られたリソースで効率よくエントリーを増やす必要があります。そのためには、ライバルの少ない市場に挑むブルーオーシャン戦略が有効です。地方、第二新卒、未経験といった競争率の低い市場へのアプローチに特化するとよいでしょう。 - エントリー:多い/リソース:少ない
できるだけ時間や手間をかけずに、より自社に合った人材を選考することが成功への鍵となります。そのためには、応募の段階である程度の絞り込みを行うことがポイントです。RJP(Realistic Job Preview)と言われる、自社の業務や職場のリアルな状況を包み隠さず伝える方法を取ることで、よりマッチング精度の高い人材からの応募が見込めます。2人の採用枠に対し1万人にエントリーされるという状況だったある大手企業では、応募の段階でボリュームの大きい論文を課したことで50人のエントリーにまで絞ることができたという事例もあります。 - エントリー:少ない/リソース:多い
豊富なリソースを生かして広告を出すなど、エントリーを増やすための入り口拡大に注力するとよいでしょう。また、途中辞退対策も重要です。面接の持参書類を減らして候補者の負荷を少なくすること、面接に来た人には筆記試験のフィードバックを約束するといったメリットを作るなどの方法が効果的です。 - エントリー:多い/リソース:多い
2のように応募の段階でふるいにかけるよりは、選考の過程でより自社にマッチする人を見極めることに力点を置くのが重要です。マンパワーや時間に余裕があれば、この機会に自社のハイパフォーマーを細かく分析し、その傾向を筆記試験や適性検査に落とし込むのがおすすめです。面接の精度を高めるため、面接官のトレーニングを行うのも良いでしょう。
採用戦略を立てた後の注意点
せっかく採用戦略を策定したにも関わらず、実際に行う採用プロセスが戦略から乖離していくケースが散見されます。そうすると、リソースを無駄に消費してしまったり、要員計画が達成できなかったりといった結果を招く恐れがあります。媒体の選定、エントリーシートの準備、面接の仕方など、すべてのプロセスを採用戦略と紐づけることが重要です。
<取材先>
人材研究所 代表取締役社長 曽和 利光さん
京都大学卒業後、リクルートに入社。人事部のゼネラルマネージャーとして培ったスキル・ノウハウと、2万人の面接経験を融合しワンランク上の人材を採用する独自手法を確立。その後、大手生命保険会社などで一貫して人事領域で活躍し、2011年に株式会社人材研究所設立。著書に『就活「後ろ倒し」の衝撃』(東洋経済新聞社)などがある。
TEXT:北村朱里
EDITING:Indeed Japan + 波多野友子 + ノオト