リファレンスチェックとは
リファレンスチェックは、面接や履歴書からはわからない、応募者の前職での職務状況や人柄について、前職の上司や同僚から意見をもらうものです。
履歴書に書かれているスキルや性格が、実際の人物と合致しているかどうか、あるいは、本人がアピールする業務実績が事実であるかどうかについて、事情を知る第三者からの客観的な評価を得て、選考の参考にされるものです。
リファレンスチェックを効果的に運用すれば、入社後のミスマッチを防ぐことができ、人材の定着に繋がると考えられます。また、求める能力を備えた人材を採用できることも、会社として大きなメリットと言えるでしょう。
リファレンスチェックを行う際の注意点
ただし、個人情報を本人の同意なく第三者に提供することは、原則として違法とされています(個人情報保護法23条1項)。そのため、あらかじめ応募者自身の同意を得た上で行なうことが大前提となります。
また、第三者の意見や評価は、必ずしも客観的であるとは限らないことも考慮する必要があります。実際、主観的な内容(好き嫌い)に偏ってしまうことも多いため、前職の上司や同僚に協力を依頼する場合は、採用基準の基本である職務遂行能力についてコンピテンシー評価(※1)を中心に行なうよう心掛け、具体的事実の確認を重視する必要があります。
(※1)社内の優秀な従業員に共通する行動特性(コンピテンシー)を基準にした評価手法
なお厚生労働省は、応募者の基本的人権を尊重し、転職活動における採用選考は応募者の適性・能力のみを基準として行なうことを推奨しています。主観的な感想や評判を収集して判断材料にすることは、こうした厚生労働省の方針からはずれる行為になりかねないので注意が必要です。
リファレンスチェックを行うデメリット
最近ではリファレンスチェックを請け負う企業も増え、アウトソースすればより効率的な採用活動が行なえるのは事実です。ただし、採用活動とはあくまで、応募者の職務適性や能力を知ることを目的とするものであり、前職での評価、評判などを元に、応募者の新たな一面を知る必要が本当にあるのかどうかは、事前に一考の余地があるでしょう。
また、応募者に対する評価の一端を、前職の関係者に委ねることは、見方を変えれば自社での採用担当者や面接官の育成機会を逸することにも繋がります。本来、前職での職務内容や役割、実績については、面接官が直接得た情報によって判断されることが望ましく、それゆえ面接官は応募者の職務遂行能力を適正に見極めるスキルが求められます。
リファレンスチェックは、あくまで応募者の情報を補足するものであるという認識に留め、実施する場合はくれぐれも注意しましょう。
<取材先>
採用・面接アドバイザー 川村稔さん
人材開発会社にて30年間、SPI型適性検査のコンテンツ開発や職務適性分析(営業、SE職、技術職、地方自治体などの行政職他)、各試験(個人、集団、討議などの面接と筆記、適性検査、論文)の設計を務める。現在は駒澤大学経済学部非常勤講師、採用面接官指導と面接官受託を中心に、新人、中堅職員、管理職、コミュニケーション、対人分析、OJT、マネジメント、人事考課者面談などの研修講師を務め、自らの採用面接官指導経験を伝承するサイトを開設し、後進の指導も行なう。株式会社ミナアス・障がい者就労支援事業運営法人顧問。
TEXT:友清 哲
EDITING:Indeed Japan + ノオト