採用時に健康診断を行うことは企業の義務なのか?


採用にあたり、企業が従業員に健康診断を受けさせることは必須なのでしょうか。健康診断の義務、企業が健康診断を行うメリット、従業員に拒否された場合の対応まで、株式会社iCARE代表取締役の山田洋太さんに伺いました。

 
 

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採用時の健康診断は法律で義務付けられている


企業が採用した人(常時使用する労働者)に受けさせる健康診断は正式には「雇入時の健康診断」といい、労働安全衛生規則の第43条に定められています。入社後の定期健康診断と同様、すべての企業に義務付けられている法定健診のひとつです。
 
雇入時の健康診断の目的は、「その人が働ける状態にあるかどうか」を判断することです。プロスポーツ選手はチーム入団時に必ずメディカルチェックを受けますが、これは選手がチームに相応しいパフォーマンスを発揮できるかを確認するためのもの。雇入時の健康診断も、それと同様の機能を有しているのです。

 
 

健康診断における「異常あり・なし」の基準とは


雇入時の健康診断における「異常あり・なし」の基準は、病気を早期発見するために個人が受けることの多い検診とは別の観点で設けられます。例えば、病院の診察で血圧を測定した時に最高血圧が140以上あると、医学的には高血圧となり食事や生活習慣の指導対象となります。しかし雇入時の健康診断では、140を超えた程度では異常を指摘されることはなく、一般的には200を超えるレベルではじめて異常と判断されます。
 
これは、雇入時の健康診断が「その人が就業できる状態にあるかを判断する」という目的に特化しているためです。血圧が140を超える程度では就業すること自体に問題はありませんが、200を超えると、日常の勤務でかかる程度の負荷においても体が危険な状態に晒される恐れがあるという考え方です。
 
この「危険」のレベルは、仕事の内容や環境によって異なります。そのため法律で一律に定められてはおらず、各社が業務内容や環境とそのリスクを照らし合わせて、基準値を設定する必要があります。例えば、高い鉄塔に一人で登るような高所作業は心臓への負担が大変大きく、発作などが起きた場合のリスクも甚大です。そのような仕事の場合、血圧の異常基準は一般的に150程度に設定されるのです。
こうした基準値は、産業医のアドバイスを受けながら会社の人事部門が決定します。企業が産業医の選任義務を負うのは従業員50名からですが、産業医がいない企業は地域の産業保健総合支援センター(さんぽセンター)に相談することができます。

 
 

従業員に拒否権はある? 拒否されたらどうすればいい?


前述したように、雇入時の健康診断は法律で義務付けられています。そのため、従業員側にも拒否する権利はありません。何らかの理由で労働者に雇入時の健康診断を拒否された場合、まずは「働けるかどうかを判断するために会社が義務を負っている」「その義務を果たさなければ会社が法律で罰せられる」ということを丁寧に説明したうえで、協力を促しましょう。
 
拒否している理由をヒアリングし、できる限りの解決策を模索することも重要です。「どこに行ったらいいかわからない」という理由であれば健康診断を行っている医療機関を紹介したり、「業務が忙しくて時間が取れない」という理由であれば管理監督者にかけあって業務を調整したりしてもらうなどの後押しをしましょう。それでも応じてもらえなければ、命令違反としての取扱いとなり、就業規則の懲罰規定に則って徐々に厳しく対応していかざるを得ないでしょう。
 
以上が基本的な考え方と対応方法ですが、従業員の状況を鑑みて、企業側が一定の配慮を行う場合もあります。例えば「不妊治療中なので被曝が気になり、レントゲンを受けたくない」といったケースであれば、一定期間は除外するといったことです。
 
法令順守はもちろん大前提ですが、厳格にしすぎることで従業員との関係を崩す原因にもなります。法令順守と柔軟な姿勢のバランスを大切にしながら、丁寧な対応を行うのがポイントです。

 
 

健康診断を行う企業のメリットとは


法定健診を滞りなく実施することは、法令順守や従業員の健康のためだけでなく、企業活動へのメリットという観点からも重要です。近年「健康経営」という言葉がよく聞かれるようになりましたが、離職率低下や採用ブランディング強化につなげることを目指し、従業員の健康への投資を積極的に行う企業が増えているのです。
 
その投資にあたって必要不可欠なのが、従業員の健康に関するデータです。例えば人事担当者が、福利厚生としてのスポーツジムの割引や、社員食堂でのヘルシーメニュー導入を経営層に提案するとします。それが自社に必要である根拠がなければ実現は難しくなりますが、仮に自社の従業員の肥満率や血圧の平均値が全国平均と比べて高いというデータで根拠を示すことができれば、提案が通りやすくなるでしょう。
 
このように、従業員の健康に関するデータを分析して人事の施策に落とし込めるという点においても、企業が健康診断を行うことは有意義であると言えるのです。

 
 
 

<取材先>
株式会社iCARE代表取締役 山田洋太さん
 
TEXT:北村朱里
EDITING:Indeed Japan +波多野友子 + ノオト


 
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