雇い入れ時の健康診断は必須? 費用は誰が負担? 健康診断にまつわる法律


企業が労働者に対して実施する健康診断には、雇い入れ時健康診断と定期健康診断の2種類があります。そもそも健康診断は必須なのでしょうか?
 
健康診断に関する法的な規定や、労働者の健康管理において企業が取り組むべき事柄について、特定社会保険労務士・杉山晃浩事務所代表の杉山晃浩さんに伺いました。

 
 

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健康診断の実施は企業の義務


「健康診断」とは、病気の早期発見や予防のために行う検査のことです。不調の早期発見によって大事に至らずに済み、健康状態を知ることで健康維持の助けになります。
 
企業が実施する労働者への健康診断は「労働安全衛生法第66条第1項」により、事業者の義務とされています。
 
「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第66条の10第1項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ)を行わなければならない」
 
違反した場合には「50万円以下の罰金」(労働安全衛生法第120条)が科せられるので注意しましょう。
 
費用の負担については法律で言及されていませんが、義務化されている以上、事業者が負担するのが基本です。

 
 

雇い入れ時健康診断の注意点


雇い入れ時の健康診断については、「労働安全衛生規則第43条」において「事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない」と明記されています。
 
検査項目は以下の通りです。項目を省略することは、基本的に認められていません。ただし、対象者が3カ月以内に医師による健康診断を受けていた場合、結果を証明する書面があれば、該当する項目については免除することできます。
 
雇い入れ時健康診断の明確な時期については法的に規定されていませんが、以上のことから入社日を起点に前後3カ月以内の健康診断であれば問題ないでしょう。

 
 

◆雇い入れ時健康診断の検査項目

 

  1. 既往歴および業務歴の調査
  2. 自覚症状および他覚症状の有無の検査
  3. 身長、体重、腹囲、視力、聴力の検査
  4. 胸部X線検査
  5. 血圧の測定
  6. 貧血検査
  7. 肝機能検査
  8. 血中脂質検査
  9. 血糖検査
  10. 尿検査
  11. 心電図検査

 
 

定期健康診断の注意点


労働者の定期的な健康診断については、「労働安全衛生規則第44条」において「事業者は、常時使用する労働者(第45条第1項に規定する労働者を除く)に対し、1年以内ごとに1回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない」と定められています。
 
「常時使用する労働者」には、正社員だけでなく、1年以上の勤務歴、かつ1週間の所定労働時間が正社員の4分の3以上であるアルバイトやパートタイマーも含まれます。
 
費用は企業負担が原則ですが、健康診断の時間は労働時間に含まれないため無給とすることは可能です。とはいえ、労働時間内に有給扱いで実施している企業が多いといえるでしょう。厚生労働省は「円滑な受診を考えれば、受診に要した時間の賃金は事業者が支払うのが望ましい」としています。
 
ただし、労働者が規定されている項目以外の検査を望んだ場合、その費用は労働者に負担させるのが一般的です。

 
 

◆定期健康診断の検査項目

 

  1. 既往歴及び業務歴の調査
  2. 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
  3. 身長*、体重、腹囲*、視力、聴力の検査
  4. 胸部X線検査および喀痰(かくたん)検査*
  5. 血圧の測定
  6. 貧血検査*
  7. 肝機能検査*
  8. 血中脂質検査*
  9. 血糖検査*
  10. 尿検査
  11. 心電図検査*


*医師の判断により省略可

 
 

特殊健康診断の注意点 ー業種や職種による例外ー


「特殊健康診断」(労働安全衛生法第66条第2、3項)とは、定期健康診断の一つです。特定業従事者(労働安全衛生規則第45条)、海外派遣労働者(労働安全衛生規則第45条の2)、給食従業員(労働安全衛生規則第47条)に対しては、特別な事項が定められています。
 
該当する業種や職種に就く労働者は、6カ月以内ごとに1回(年2回)、配置換えごと、6カ月以上派遣する際など、実施回数や実施時期に違いがあります。また、検査項目が増加するケースもあるので、事業者はきちんと把握したうえで、労働者に適切な健康診断を受けさせましょう。

 
 

健康診断実施後の企業の対応


健康診断を実施した後は、以下の対応を忘れず行ってください。

 

  1. 結果を労働者に通知する(労働安全衛生法第66条の6)
  2. 健康診断の結果は、法で定められた期間、保存しておく(労働安全衛生法第66条の3)
  3. 異常が見つかった労働者について、医師に意見を聞く(労働安全衛生法第66条の4)
  4. 3の結果を受けて、適切な措置を講じる(労働安全衛生法第66条の5)
  5. 必要な労働者には健康指導を行う(労働安全衛生法第66条の7)
  6. 「定期健康診断結果報告書」を所轄の労働基準監督署長に提出する(労働安全衛生法第100条)


4の適切な措置として、まずは該当する労働者に二次健康診断の受診を勧奨します。その上で、5の健康指導を含め、就業場所の変更や作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少、昼間勤務への転換など、必要な措置を講じます。
 
6の労働基準監督署への報告義務は、常時50人以上を使用する事業所が対象です。ただし、特殊健康診断を実施した場合は、労働者の人数にかかわらず報告しなければなりません。
 
ちなみに、健康診断の結果、労働者に疾病が見つかっても、原則としてそれを理由とした入社拒否や解雇はできないので注意しましょう。
 
雇い入れ時および定期的な労働者の健康診断は、企業の一存で導入の可否を決められるものではありません。「労働安全衛生法」や「労働安全衛生規則」に基づいて、正しい対応を行ってください。
 
逆に健康診断の受診は労働者の義務でもあります。拒否した場合は、就業規則に則った処罰の対象となります。 労働者の健康や安全を守るためにも、企業に法的罰則が及ばないためにも、あらかじめ就業規則に処罰内容を定めておくことが大切です。

 
 
 

※記事内で取り上げた法令は2021年8月時点のものです。
 
<取材先>
特定社会保険労務士 杉山晃浩事務所 代表 杉山晃浩さん
 
TEXT:塚本佳子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト


 
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