看護休暇の目的
看護休暇は、従業員が子育てをしながら働き続けるための施策として設けられた制度です。小学校就学前の子が病気やけがをしたときに加え、「子の疾病の予防を図るために必要な世話」として予防接種や健康診断も看護休暇の対象になります。子の疾病やけがの程度に制限はなく、従業員の申し出により取得できるのが特徴です。
看護休暇の利用条件
看護休暇は日雇いの従業員は利用できません。また、企業の中で労使協定を締結している場合、下記に当てはまる従業員は看護休暇を取得できない可能性があります。
- 入社6カ月未満の従業員
- 週の所定労働日数が2日以下の従業員
◆企業が看護休暇の申請を拒否した場合
看護休暇は従業員の権利のため、会社が拒否した場合は育児介護休業法違反とみなされます。罰則はないものの、厚生労働大臣から事業主への勧告があります。都道府県労働局に指導されても従わなかった場合は企業名が公表されるなどの措置を取られる可能性があります。
子のけがや疾病は予期せず起こるものです。従業員の権利のため、例え当日の申請であっても会社は看護休暇の取得を認めなくてはなりません。
会社によって看護休暇の内容を手厚くすることは可能ですが、有給の5日取得義務もあることから、実施しているケースはあまり多くはないようです。
看護休暇の取得日数・給与
看護休暇の取得日数は、1年度につき5日と定められています。これは、就学前の子がいる従業員に認められた日数で、子が2人以上の場合は10日までとなります。「1年度」は、事業主が特に決めていない場合は4月1日から翌年3月31日までを指します。
現在は、看護休暇を半日単位で取得できます。所定労働時間が8時間なら、4時間から利用できる仕組みです。所定労働時間が4時間以下の従業員には、育児介護休業法で半日単位での看護休暇の取得は認められていません。
◆法改正により時間単位の取得が可能に
2021年1月1日の育児・介護休業法施行規則の改正により、看護休暇の取得単位がこれまでの半日から時間単位へと変わります。改正後は「看護休暇を始業時間から2時間取得して子の通院に付き添った後、出社して働く」などの使い方ができるようになり、柔軟に働けるようになります。
法改正に伴い、1日の所定労働時間が4時間以内の従業員も看護休暇を利用できるようになり、原則としてすべての従業員の取得が可能に。育児と仕事の両立をしやすくなる仕組みへと変わりつつあるのです。
◆「中抜け」の扱い
法改正で認められる時間単位休暇には、子の通院などで会社を抜けた後、終業時間内に戻ってきて再度働く「中抜け」は含まれません。
しかし、中抜けを禁止しているわけではないため、国は会社に中抜けを含めた看護休暇の取得を求めています。また、中抜けありの休暇を設けていた会社が中抜けなしとなった場合は、従業員にとって不利益な労働条件に変更したとみなされるので注意が必要です。
◆看護休暇取得時の給与
無給・有給の規定はなく、会社のルールによって扱いは異なります。現状では、無給の会社が多い傾向にあります。
看護休暇導入に際する国からの助成金
会社が看護休暇を導入する際に、中小企業を対象に国から両立支援等助成金を受けられる可能性があります。複数のコースがあるなかで、看護休暇に該当するのは育児休業等支援コースの現場復帰後支援です。
2021年1月からの法改正での時間単位取得に関連して、受給には以下の条件を満たす必要があります。
- 育児・介護休業法を上回る有給の看護休暇制度を設けること
- 実際に、1カ月以上の育児休業(産後休業を含む)から復帰した従業員について復帰後6カ月以内で上記1の看護休暇を10時間以上利用すること
【受給額】
有給の看護休暇制度導入時:28万5,000円 ※1事業主につき1回
有給の看護休暇制度利用時:1,000円×時間 ※1事業主につき5人まで(1人目にかかる支給申請日から3年以内)
両立支援等助成金の申請には、本社の所在地にある労働局雇用環境・均等部(室)を訪れるか、配達記録が残る形の郵送による方法があります。看護休暇制度を導入しただけでは申請できず、1人目の対象者が出た時点で「制度利用時」の助成金とあわせて申請します。
助成金を受給するためには有給の看護休暇を導入する必要があります。法定の年次有給休暇の5日取得義務も考慮すると、看護休暇を有給にするかどうかは慎重に検討が必要です。
参考:
厚生労働省 リーフレット「子の看護休暇・介護休暇が時間単位で取得できるようになります!」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000582033.pdf
東京労働局「仕事と家庭の両立に関する助成金(両立支援等助成金)」
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/news_topics/kyoku_oshirase/_120743/_122075.html
※記事内で取り上げた法令は2020年10月時点のものです。
<取材先>
寺島戦略社会保険労務士事務所代表 社会保険労務士 寺島有紀さん
TEXT:畑菜穂子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト