昼休み返上の業務は法律違反? 意外と見落としがちな休憩時間の労務リスク

オフィスで休憩する女性のイメージ

昼食を摂りながら電話対応やメール返信などの業務に携わっている社員を見かけたことはありませんか。会社では、昼休み中も業務に携わるケースも少なくありません。しかし、休憩時間を返上した労働は法律違反となり、場合によっては自社に罰則が科せられる可能性もあるのです。
 
今回は、休憩時間に起こりやすい労務リスクについて、寺島戦略社会保険労務士事務所代表で社会保険労務士の寺島有紀さんに伺いました。

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休憩時間は法律でどう定められている?

就業時間内の休憩時間は、労働基準法第34条で以下のように定められています。
 

第三十四条 使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
○2 前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。
○3 使用者は、第一項の休憩時間を自由に利用させなければならない。
 
出典:労働基準法


休憩時間は労働者をリフレッシュさせる目的があるため、労働から離れる権利が保障されます。そのため、いつ就労要求があるかわからない状態で待機させられる「手待ち時間」は休憩時間には含まれません。

◆まとまった休憩時間が取れない場合

1時間の休憩時間をまとめて取得させるのが難しい場合は、分割して取ることもできます。ただし、60分間を10分間ずつ取得させるなど細かく区切ってしまうと、自由に使えるはずの休憩時間に制限ができてしまいます。休憩時間を分けるときには趣旨から逸脱していないか注意しましょう。

◆労働基準監督署に休憩時間の労働が発覚した際の流れ

休憩時間の労働が発覚した場合、罰則に至るまでにはいくつかのプロセスがあります。一般的な流れを確認しましょう。
 
(1)労働者からの申告
労働基準監督署に労働者から申告があります。
 
(2)労働基準監督署が立ち入り調査(臨検監督)を実施
FAXや電話連絡ののち、労働基準監督署が会社を訪問。事情聴取や帳簿の確認を行います。
 
(3)(法令違反が認められた場合)是正勧告書を交付
是正勧告を受けた場合、会社は指摘された状況を改善する必要があります。指定された期日までに是正報告書を作成して、労働基準監督署に報告します。一連の作業は、労務担当者が顧問の社会保険労務士と一緒に行うことが多いです。
 
(3)で改善が認められれば、労働基準監督署による指導は終了です。しかし、是正勧告を無視した場合には、30万円以下の罰金もしくは6カ月以下の懲役が科せられます。

 
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休憩時間にするとNGなこと

休憩中の労働にも、様々なパターンがあります。よくあるNGシーンを見ていきましょう。

◆電話やメール対応

クライアントなど社外とのやりとりはもちろん、休憩中の部下に上司が「ちょっといいかな」と声をかけたり、メッセージを送ったりすることも労働とみなされます。もし緊急の対応が生じた場合は、休憩時間を別途付与するなどの配慮が必要です。

◆ランチミーティング

組織命令で参加が義務付けられ、昼食を摂りながら業務の話をするランチミーティングは自由時間には該当しません。

◆強制参加の飲み会

ランチミーティングと同様に、強制的に参加させられる飲み会は労働にあたります。自由参加で歓談するだけの会であれば、労働にはなりません。
 
休憩時間中の労働は、会社からの業務命令によるものだけではありません。労働者が定時に帰るために昼休みを労働にあてるなど、本人の意志で働く場合もNGとなります。

 
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休憩時間の業務を避けるために心がけること

休憩時間を返上した労働を避けるために、どのようなことを心がければいいのでしょうか。会社としてできる取り組みを紹介します。

◆休憩時間の明確化

休憩時間を一律に設けていない場合、誰がどのタイミングで休憩を取得しているのか分かりにくいものです。上司やチームメンバーと共有するためのルールを決めるといいでしょう。
 
休憩に入る際にはメールで伝えるほか、Slackなどのチャットツールを使用している場合は休憩中だとわかるアイコンに変える方法もあります。リモートワークが増えている昨今では、このような取り組みは特に重要です。

◆管理監督者への周知

休憩時間の明確化と同じく必要なのが、現場の管理監督を担う社員への意識の植え付けです。管理監督者の独自ルールにより休憩時間の労働が発生している場合もあるため、管理職研修で定期的に周知することが肝心です。場合によっては管理監督者自身に労働基準法上の罰則が科せられる可能性もあると伝えて、共通認識を持ってもらうようにしましょう。
 
休憩時間を自由に使うことは、労働者にとって当然の権利です。「労働時間」と「休憩時間」を明確にするとともに休憩に対する意識を社内で共有して、働きやすい職場づくりを目指しましょう。

 

(参考)
厚生労働省「労働基準監督署の役割」

https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/dl/131227-1.pdf

※記事内で取り上げた法令は2020年9月時点のものです。
 
<取材先>
寺島戦略社会保険労務士事務所代表
社会保険労務士 寺島有紀さん
 
TEXT:畑菜穂子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト

 
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