法律上「パート」と「アルバイト」の違いはない
パートはアルバイトとどのように違うのか疑問に思ったことはありませんか?「大人がパート、若者がアルバイト」といったイメージを持たれている方もいるかもしれませんが、実際には両者の間に法律上の区別はありません。
「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(通称パートタイム労働法)では、「同じ事業所に雇用された通常の労働者と比べて、1週間の所定労働時間が短い労働者」をパートタイム労働者(短時間労働者)と定義しており、そこにアルバイトとパートの違いはありません。
語源はそれぞれ、パートが短時間勤務での労働者を意味する「パートタイマー」、アルバイトがドイツ語の「Arbeit(仕事、労働)」に由来しており、求人情報を掲載する際、企業が言葉のイメージからそれらを使い分けているだけなのです。
パートの定義について、より詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
「アルバイト」と「パート」にはどんな違いがあるの?
パート労働時間の基本ルール
◆労働時間と休憩時間
従業員の労働時間は、労働基準法第32条で「1日8時間・週40時間」と定められており、どちらかを超過した分が残業時間として扱われます。そして雇用側は、最低でも週1回、もしくは4週間の間に4回以上の休日を与えることが労働基準法第35条で義務付けられています。
なお、パート、アルバイト、正社員等すべての従業員の休憩時間について、労働基準法第34条で次のように定められています。
◆高校生を雇用する際の注意点
労働基準法においては「高校生」という区分はなく、年齢によってルールが異なります。
パート(アルバイト)として雇用できる年齢の下限は15歳です。しかし、労働基準法第56条によって、15歳の誕生日を迎えたあと3月31日になるまでは雇用できないように定められています。これにより、中学校を卒業した15歳を春休みのうちに雇うことはできません。
そして満18歳未満の場合、午後10時から午前5時までの労働は労働基準法第61条によって禁じられています。18歳を迎えた高校生の場合は深夜勤務も可能です。とはいえ、高校生の雇用にあたっては、そもそも学校側がアルバイトを許可していない場合トラブルに発展する恐れもあるので注意が必要です。
◆業種による労働時間の違い
「特例措置対象事業場」と呼ばれる以下の事業場において、常時10人未満の従業員が働く職場の場合、法定労働時間の例外として「1日8時間・週44時間」までの勤務ができるように認められています。
しかし、18歳未満の場合はこのルールは適用されず、先述の「1日8時間・週40時間」となります。
◆パートの休憩時間の算出方法・注意点
休憩時間は企業が定める「所定労働時間」ではなく、休憩時間を除き労働者が実際に働いた「実労働時間」に従い、正確に算出しなければなりません。
具体的には、所定労働時間が8時間で休憩時間が45分の場合、実労働時間は7時間15分という計算になります。なお、休憩時間はあくまで自由時間となるため、基本的に時給が発生することはありません。
また、業務が立て込んでいるからといって休憩を与えないこと、その分を時給として支払うことは、その両方が禁止されています。さらに休憩時間は疲労回復を目的としているため、必ず労働時間の途中で与える必要があります。休憩時間を複数回に分割して与えることは問題ありません。
◆掛け持ちの際の法定労働時間
パートを複数掛け持ちしている場合でも、法定労働時間は「1日8時間・週40時間」となり、それを超えた場合は時間外労働としての割増賃金として通常の125%以上を支払わなければなりません。
この際、割増賃金を支払うのは「後に雇用契約した事業主」となるため、従業員を雇用する際は掛け持ちの有無について必ず確認するようにしましょう。
パートの労働時間に関する基礎知識を詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
アルバイト・パート従業員の労働時間におけるルールと留意点
パートの有給休暇取得条件
事業主は、正社員だけでなく、パートにも有給休暇を与える必要があります。
労働基準法では以下の2項目に該当する労働者をパートタイム労働者と定めており、パートの有給休暇は、所定労働日数に応じて付与されるので、フルタイムの正社員に比べ日数は少なくなります。
- 週所定労働時間が30時間未満
- 週所定労働日数が4日以下、または1年間の所定労働日数が48日から216日まで
▼「1週間の所定労働日数が4日」かつ「1年間の所定労働日数が169日~216日」のパート従業員
継続勤務期間別の有給休暇付与日数
▼「1週間の所定労働日数が3日」かつ「1年間の所定労働日数が121日~168日」のパート従業員
継続勤務期間別の有給休暇付与日数
▼「1週間の所定労働日数が2日」かつ「1年間の所定労働日数が73日~120日」のパート従業員
継続勤務期間別の有給休暇付与日数
▼「1週間の所定労働日数が1日」かつ「1年間の所定労働日数が48日~72日」のパート従業員
継続勤務期間別の有給休暇付与日数
年5日の確実な取得が求められるパート従業員の条件
「1週間の所定労働日数が4日」かつ「1年間の所定労働日数が169日~216日」のパート従業員
→勤続3年6カ月以上で対象
「1週間の所定労働日数が3日」かつ「1年間の所定労働日数が121日~168日」のパート従業員
→勤続5年6カ月以上で対象
パートの有給休暇に関するルールを詳しく知りたい方はこちらをご参照ください。
パート従業員への有給休暇付与は必須? 新しい有給休暇のルールを知ろう
パートにおける「残業」の取り扱い
パートにも正社員のように残業してもらうことはできるのでしょうか? 結論から言えば、業務内容や賃金、就業時間など、基本的な労働条件を示す「労働条件通知書」で示していれば、パート従業員の残業は問題ありません。とはいえ、フルタイムの正社員よりも労働時間が短いことを理由にパートとして働く人も少なくないため、事前に認識をすり合わせておくようにしましょう。
◆残業時間の上限は?
労働基準法によって、従業員の労働時間には上限が定められています。「1日8時間・週40時間」という法定労働時間を超えることが予想される場合、事前に「36(サブロク)協定」と呼ばれる協定の締結と労働基準監督署への届出が必要となります(労働基準法第36条)。この36協定を締結することによって、労働時間の上限は一部の業種を除き「1カ月45時間以内」かつ「1年360時間以内」となります。
36協定を締結しないまま残業させたり、有効期限(最長1年)が過ぎているのに届出をしないまま残業させたりした場合、是正勧告の対象となるため注意しましょう。
パートの残業に関するルールを詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
パート従業員に残業をさせてもいいの? 残業時間の上限は?
パートの正社員登用について
最後に、企業がパート従業員を正社員として登用することで期待される効果と注意点をご紹介します。
◆企業がパート従業員を正社員に登用するメリット
・人手不足の解消
求人サイトを利用しても応募者が少ない、人材獲得競争が激しいといった印象を持たれている事業主の方も少なくないはず。
そこで人材不足を解消する手段として期待されているのが、パート従業員の正社員登用です。外部から新規に人材を採用するのではなく、すでにお互いに仕事ぶりや事業内容を理解しているパート従業員を正社員に転換することで、人材のミスマッチの減少や採用や教育コストの削減というメリットも期待できます。
・助成金の受給
企業はパート従業員を正社員として登用することで、厚生労働省から「キャリアアップ助成金」を受給できます。対象となる事業主や申請要件などの詳細は厚生労働省の「キャリアアップ助成金のご案内」をご参照ください。
◆パート従業員を正社員登用する際の注意点
・保険の加入手続き
一定の労働契約条件を満たしている場合、事業主は被雇用者の社会保険(健康保険・厚生年金保険)や雇用保険への加入手続きを行う必要があります。なお、基本的に労災保険は従業員全員が対象となり、保険料については企業が全額を負担します。
・ルール共有が必要
パート従業員と正社員とで、賞与や異動を含む待遇やルールが異なる場合、トラブルを未然に防ぐ意味でも、正社員登用の際にしっかりと伝えておく必要があります。
パートを正社員登用するメリットと注意点について、より詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
パートタイマーを正社員登用するメリットと注意事項
パート採用を有効活用し、人材不足解消へ
以上、企業がパートを採用する際のポイントから、正社員登用についてご紹介しました。今後も雇用を取り巻く状況は変化しつづけると予想されますが、パート採用を有効活用し、優秀な人材を獲得しましょう。