パートタイマーを正社員登用するメリットと注意事項

パートタイマーと正社員のイメージ

近年、労働に関する法律の改定が行われ、多様な働き方を自由に選択できる時代になりました。たとえば、正社員やパートなど雇用形態に関わらず、同じ仕事に従事する人には同一の賃金(同一の待遇)を支給する「同一労働同一賃金」(パートタイマー・有期雇用労働法)が2020年4月1日に施行されました。これにより、正社員などの正規労働者とパートタイマーなどの非正規労働者との間にあった待遇格差が是正され、従業員は働きに応じた給与や待遇を得ることができるようになりました。
 
歴史を遡ると、2013年には有期労働契約において「無期転換ルール」(有期労働契約が更新されて通算5年を超えたときに、労働者の申し出によって、無期労働契約に転換できる)が施行されています。これにより一部で雇い止めが問題視されることになりますが、その一方で、正社員を目指さなくてもパート従業員として仕事を長く続けられるようになり、自分らしく働ける環境が整いました。
 
そもそも、企業がパート従業員などの非正規労働者を正社員として正規労働者に登用するメリットはなんでしょうか。期待できる効果と正社員登用をする際の留意点をまとめてみましょう。

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企業がパート従業員を正社員に登用するメリット

◆人材不足の解消

事業拡大や従業員の退職による人員補充など、人材不足の理由は様々です。最近は売り手市場であり、求人サイトに出稿しても、企業が求める人材(正社員)を必ずしも採用できるとは限りません。そのため外部から人材を採用するよりも、自社の事業や業務内容を理解しているパート従業員を正社員へ転換する方が自社の求める人材を獲得しやすく、結果的に採用や教育にかけるコスト削減にもつながります。

◆助成金の受給

企業はパート従業員(非正規雇用労働者)を正社員(正規雇用労働者)に転換すると、厚生労働省から「キャリアアップ助成金」を受給することができます。対象となる事業主(企業)や申請要件があるので、詳しくは厚生労働省の「キャリアアップ助成金のご案内」をご参照ください。

▼厚生労働省 「キャリアアップ助成金」について
https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000527143.pdf
 
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正社員登用する際の注意点

パート従業員を正社員登用するにあたり、注意すべき事項が大きく2点あります。共通するのは、パート従業員などの「非正規労働者」と正社員などの「正規労働者」で異なる待遇、福利厚生、社内制度、業務などが適用される場合です。

◆保険の加入手続き

雇用主(企業側)は、必要に応じて「保険の加入手続き」を行わなければなりません。ここ数年で保険の加入条件が変更になっているため、注意が必要です。
 
社会保険(健康保険厚生年金保険)や雇用保険は、一定の労働契約条件を満たしていると、雇用主や被雇用者の希望に関係なく、加入が義務づけられています。ちなみに、労災保険は基本的に従業員全員が対象で、企業は保険料を全額負担します。
 
たとえば、社会保険なら、AまたはBどちらかの要件を満たせば、パート従業員も加入対象者になります。
 
A.1週間の所定労働時間が週30時間以上の方
または
B.下記の5つの要件すべてを満たしている方
(1)所定労働時間が週20時間以上
(2)月額賃金8万8,000円以上
(3)勤務時間1年以上見込み
(4)学生でないこと
(5)以下のいずれかに該当すること
1. 従業員数が501人以上の会社で働いている
2. 従業員数が500人以下の会社で働いていて、社会保険への加入を労使間で合意している
 
パート従業員の正社員登用にあたっては、従業員がどの加入要件に該当するのかを事前に確認し、漏れなく手続きするようにしましょう。また雇用保険についても同じような一定以上の加入要件があるので、合わせてチェックしてみてください。
 
▼厚生労働省「雇用保険の加入手続きはきちんとなされていますか?」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147331.html

◆変更/追加する制度・ルールなどの共有

企業によっては、パート従業員と正社員とで適用される制度や待遇、ルールに違いを設けていることがあります。たとえば賞与や異動の有無など、正社員なら理解していて当然のことでも、パート従業員というポジションまでは周知されておらず、理解されていないケースは少なくありません。正社員に切り替える時には、パート従業員にその点をしっかり伝えるようにしましょう。

フルタイムの勤務が難しい場合は「短時間正社員制度」

正社員にはなりたいが、家庭の事情によって長時間働けないパート従業員を登用する場合は、「短時間正社員」の制度を使えば、よりフレキシブルな働き方が可能です。
 
厚生労働省の定義によると、「短時間正社員」とはフルタイム正社員と比べて1週間の所定労働時間が短い正規型の社員、かつ次の2つの条件に該当する社員を指します。
 
(1)期間の定めのない労働契約(無期労働契約)を締結している
(2)時間当たりの基本給及び賞与・退職金など算出方法などが同種のフルタイム正社員と同等
 
法律に抵触しなければ、企業は労働時間などを自由に設定することができます。厚生労働省の「短時間正社員制度導入支援ナビ」には、「短時間正社員」制度の導入手順などもまとめられており、導入を検討している方は参考にしてみてください。
 
▼短時間正社員制度導入支援ナビ

https://part-tanjikan.mhlw.go.jp/navi/outline/
 
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従業員との対話やコミュニケーションが重要な鍵に

パート従業員を正社員登用する際には、企業と従業員、お互いの合意が必要になります。そのため企業が一方的に条件を提示するのではなく、従業員の意志・意向をしっかり聞くことが大切です。
 
また、先にも触れましたが、正社員になって追加・変更される給与や待遇、制度、業務内容などがあれば、漏れなく伝えましょう。実際、正社員登用後に「こんなこと、聞いてなかった」という声を従業員の方からよく耳にします。企業としても大きな戦力として期待して、登用した人材であるはずなのに、そうした不満から本来の力を発揮してもらえないのは、両者にとってマイナスでしかありません。契約時のコミュニケーションは密にとるよう意識してください。
 
メリットだけでなくデメリットもしっかり伝えて、従業員の疑問・不安を解消できる対話ができれば、会社への信頼にもつながります。従業員への真摯な向き合い方が、「パート従業員の正社員登用を成功させる」ポイントといえそうです。


※記事内で取り上げた法令は2020年6月時点のものです。
 
<取材先>
志村経営労働事務所 社会保険労務士 小林寛子さん
 
TEXT:西谷忠和
EDITING:Indeed Japan + ノオト

 
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