オンラインの採用イベントによって、中小企業の集客が難しくなる
オンラインのイベントは、会場費のコスト削減や求職者との接点が増えるなど、メリットも多くあります。ただし、中小企業の採用活動においては不利な側面もあるのです。
対面で行うリアルな採用イベントの場合、会場のキャパシティに限界があるというデメリットがあります。人気の高い企業に申し込みが殺到したとしても、定員から溢れてしまう求職者が出てしまいます。その結果、漏れてしまった求職者が同日程にある他社の説明会に参加するなど、偶然の出会いも生まれやすい環境だったともいえるのです。
しかし、オンラインでは定員数を応募者数に応じて拡張できるため、人気のある企業に一極集中してしまいます。人気の業界であれば、検索などからヒットして参加者が集まる場合もありますが、知名度のある大企業と中小企業が同じ土俵で戦うのは厳しいといえるでしょう。
会社紹介の動画を制作し、企業への興味関心を作りだす
採用活動におけるオンライン化が進む現在、中小企業がとるべき施策の1つとして「会社紹介動画の制作」が挙げられます。動画を通じて、自社を気軽に知ってもらうきっかけになります。
動画制作はハードルが高く感じるかもしれませんが、本格的に作り込む必要はありません。機材はスマホを使い、動画の編集も字幕をつけることでも十分です。撮影や編集技術よりも重要なのは、会社の雰囲気やアピールポイントを確実に伝えることです。たとえば、動画内で社長へのインタビューを実施した場合、「〇〇社長」と呼びかけるのか、「〇〇さん」と呼びかけるのかによっても受け手の印象は異なります。呼びかけ一つとっても社長との距離や雰囲気が伝わるものです。
作成した動画は、たとえばYouTubeなどのプラットフォームにアップし、自社に興味をもってくれている求職者にリンクとともにイベントの案内を送付するといったような使い方ができます。案内の際に「私たちの説明会に参加した方が良い理由」を文面にして伝えることも一案です。
単純に告知だけをするよりも会社のイメージがつきやすいため、集客もアップするはずです。
会社の紹介動画をフックに、オンラインの採用イベントへの動員につなげましょう。
オンライン以外の採用活動も視野に入れることが重要
中小企業にとって不利な状況とはいえ、自社の魅力を伝えるためにもオンラインでの採用イベントは必須でしょう。ただし、イベント以外の方法も同時に行うことをおすすめします。
最近は、社員から友人や知人を紹介してもらうリファラル採用や、企業側から求職者に声をかけるスカウト型サービスの活用も有効な手段となっています。やみくもに応募者数を増やすよりも、採用につながる人材からの応募を増やすことに注力する方が、結果として採用成功につながります。
採用の手段が多様化している現在、求人広告を出せば良い人材を採れる時代ではありません。大手企業と比較して知名度が低い中小企業こそ、採用手法もあわせて模索する必要があります。
<取材先>
採用研究所 所長
谷出 正直さん
新卒で大手人材会社に入社。子会社への出向を含め、新卒採用支援事業に約11年間携わる。独立後、企業の採用コンサルティングや採用アナリストとして活動。新卒採用に関する情報、ノウハウの収集や発信、共有の仕組み、人のつながり作りに強みを持つ。メディアへの情報提供やコラム連載、記事の寄稿、企業や大学でのセミナーの講師、人事・経営者向けの勉強会・交流会の主催、オリジナルのメルマガの配信などを行う。
TEXT: 佐々木ののか
EDITING:Indeed Japan + 成瀬瑛理子 + ノオト