「在留資格」確認しないと罪に問われることも
◆在留資格とは
在留資格とは、外国人が日本に住んで行うことができる活動の範囲を示したものです。在留資格で定める活動は下記などの28種類があります。
例)
- 技能(外国料理の調理師、スポーツ指導者、航空機の操縦、貴金属等の加工職人など)
- 介護(介護福祉士)
- 教育(中学・高校等の語学教師など)
- 技術・人文知識・国際業務(機械工学等の技術者、通訳、デザイナー、私企業の語学教師、マーケティングなど)
活動内容によって在留期間が5年、3年、1年、3カ月など入国管理局によって決められます。
また、在留資格には上述したような、日本国内で行うことができる活動の内容を定めた、いわゆる「就労系」と呼ばれる資格と、「身分系」と呼ばれる資格があります。「身分系」には、日本人の配偶者やその子どもに与えられる「日本人の配偶者等」、日系3世などの「定住者」、そして「就労系」の在留資格で働いている人の家族に該当する「家族滞在」などがあります。
◆不法就労と企業側のルール
企業が下記のような行為をした場合、入国管理法に基づき「不法就労助長罪」として罪に問われます。
・在留資格を持たない「不法滞在」の外国人と知りながら雇用する
「在留資格を持っていない」あるいは「在留期間の期限が切れている」外国人を雇用することは法律で認められていません。
・在留資格に定められている内容とは違う業務に就かせる
身分系の在留資格では仕事内容にほとんど制限はありませんが、就労系では在留資格で定められたこと以外の業務はできません。たとえば、調理師として働く「技能」の在留資格なのに接客業務に従事させるなど、資格で定められた内容以外の仕事をさせるのも入国管理法違反です。
・留学生に対して定められた時間を超えて業務に従事させる
就労を第一目的としていない「留学」「文化活動」「家族滞在」そして「特定活動」の一部の在留資格を持つ人は、個別に資格外活動の許可を得れば週に28時間まで働けます(「留学」の場合、長期休み期間のみ週40時間まで可能)。本人が望んだとしても、留学生を在留資格で決められた時間を超えて勤務させることはできません。
つまり、企業は採用する段階から退職するまで、常に外国人社員の在留資格を確認し続ける必要があります。在留資格の内容は、3カ月を越えて日本に在留する外国人に発行される「在留カード」に記載されています。企業の担当者は在留カードを確認して、外国人社員の労働者名簿を別途作りましょう。担当する業務内容に食い違いはないか、在留資格の期限をその都度管理してください。
自社の担当者だけで悩まず専門家に相談を
◆在留資格の交付申請
採用したい外国人が海外に住んでいる場合は、まず管轄する地域の地方出入国在留管理官署に在留資格の交付申請をしなければなりません。
申請では、「雇用される外国人」と「採用する企業」の両方が審査されます。まず、雇用される外国人は、日本で今までの職歴と関連性のある仕事をするか、それを証明する書類を揃えているか、日本語の能力があるかなどが調べられます。その上で企業には「なぜその外国人の採用が必要か」を説明することが求められます。単に「人手不足だから」といった説明では認められないでしょう。
経営者の中には、外国人社員の待遇について「外国人社員の母国と同じ水準で」と考えている人もいます。しかし、当然ながら外国人社員の待遇は、日本人社員と同じでなければいけませんし、健康保険など各種保険の加入義務があります。
採用したい人がすでに日本国内に住んでいる場合は、現在の在留資格の内容や期限を確認しましょう。採用後に担当する業務と在留資格が異なる場合には、変更申請が必要です。
◆採用後の手続き
採用後は、ハローワークに「外国人雇用状況の届出」を提出します。そして、在留期限のおよそ3カ月前から、企業の担当者は在留期限の更新手続きのために外国人社員本人をサポートすることが求められ、在職証明書などの書類の発行をします。
在留資格の期限が切れると交付申請のやり直しになり、一定期間その外国人は仕事ができません。在留資格がないことを知りながら故意に滞在を続けるなど悪質と見なされた場合、外国人本人は国外退去の強制、企業は不法就労助長罪に問われることになります。
◆在留資格の申請・更新は、専門家への相談も
このように、在留資格の申請・更新は複雑で、多くの書類の作成や提出が必要です。外国人の採用にあたっては、在留資格など国際業務の知識や経験のある行政書士に相談しながら進めます。
また、外国人を雇用する企業の人事・労務担当者には、在留資格も含めた入管法(出入国管理及び難民認定法)の知識が必須となります。少子高齢化が進み、多様な人材の受け入れはどの企業にとっても重要な課題となるはずです。書籍やセミナーなどで少しずつでも学ばれることをおすすめします。
<取材先>
社会保険労務士法人東京国際事務所 代表社員
佐藤正巳さん
行政書士・社会保険労務士。著書に『ゼロから始める外国人雇用実務ガイド』『こんなときどうする?外国人の在留資格申請と労務管理』(とりい書房)などがある。
TEXT:石黒好美
EDITING:Indeed Japan + 笹田理恵 + ノオト