建設業、施工管理の離職率
厚生労働省の令和2年度雇用動向調査によると、令和2年の1年間における「建設業」の入職者数は277万1,000人で、前年度から比べて25万人増加しています。離職者数は261万9,000人で、前年度から比べて11万1,000人増えています。入職率は10%、離職率は9.5%で、他業種と比べてもあまり高い数字ではありません。単純になり手が少ないため、離職する人数も他の職種に比べて少ない傾向にあります。ただ、入職者が少ないことによる業界全体の高齢化は深刻な問題になっています。


施工管理の仕事内容
一般的な土木事業においては、国、地方自治体等の官公庁が主たる発注者になります。土木での施工管理業務は、大きく3つあります。発注者に示された設計図をもとに、きちんとモノが作られているかを随時確認する「品質管理」、工事中の事故がないようにする「安全管理」、そして現場が工期に向かって適正に進んでいるかをチェックする「工程管理」です。発注者と下請けの専門工事会社を管理しながら対象工事を進めていくのが、施工管理の一般的な仕事内容になります。
施工管理の離職の原因とは?
土木の仕事は、基本的に人を動かして公共構造物を作っていくので、責任の大きい仕事です。自分の都合だけでは動けない部分も大きく、それゆえのストレスも抱えることになります。
1.天候によって工程管理に支障をきたしやすい
他の業種と比べると、工程管理に天候が大きく影響します。例えば平日に雨が降ったら工事が進まないため、休日に埋め合わせをしないといけません。
2.人の命を預かっているため責任が重い
現場で働く人の命を預かるという面で、安全管理の部分でも非常に大きな責任感を伴います。建設中の道路や橋など公共構造物が生活に直結する地域住民の方々への対応や、発注者への対応もありますので、様々な方面に細心の注意を払って安全管理を行う必要があります。
3.長時間労働や休日勤務が発生する
施工管理は、日中は現場を管理し、それが終わってから夕方以降にようやく内勤の仕事をすることになるため、どうしても長時間労働になりがちです。天候の問題で休日勤務が発生することもあります。また、現場の管理となれば、炎天下でも極寒の中でも、外に出る必要があるため、厳しい就労環境となります。
4.転勤の可能性が高い
プロジェクトの現場に勤務地が左右されるため、転勤の可能性も高くなります。建設予定の場所であれば、山奥でも都市部でも関係なく出向かなければなりません。
5.業界全体の高齢化が進みコミュニケーションに苦労する
建設業界に入る学生自体が少なくなっている現状で、若手にとって直属の上司との年齢格差も大きくなっています。そうすると、価値観の違いやコミュニケーション上のストレスが発生しやすくなります。また、施工管理の仕事は若手であっても、経験が豊富な職人を管理していかなければならないため、現場とのコミュニケーションに苦労する人も少なくありません。
離職率の低い会社の特徴
業界全体で、他業種に比べて離職率は高くない、とはいえ、若年層が少ない故に離職率の改善は課題です。入ってきた若い社員を大事に育てていこうという流れもできてきています。離職率が低い会社は、前述した離職の原因に対しての対策をきちんと講じているかどうかに加えて、以下の4つの特徴があります。
1.風通しのいい社風である
若手が働きやすい、風通しのいい社風であるかどうかは重要です。平均年齢が高くなく、直属の上司との年齢差が開きすぎないことも、風通しの良さに関わってくるでしょう。
2.安定した経営基盤、優れた技術力がある
将来性に不安を感じないような安定した経営基盤や、安定した業務の受注があるかどうかも大切です。この基盤となるものは、他社より優れた技術力を確保しているか否かになります。これは、大手に限りません。
3.教育体制がしっかりしている
キャリアプランを明確にするサポートや、適正な人事評価、業務負荷が偏らないような人員確保を行うなど、若手をしっかりと育てる体制作りを進めている会社は増えています。また、資格取得支援や社内制度などのスキルアップ制度が整っており、社員の育成にお金と時間をかけている会社は、若手を育てていこうというビジョンが明確です。
4.福利厚生が充実している
従業員やその家族が健康で安定したより良い生活を送れるようにするための福利厚生が充実している会社は人材定着率が高くなっています。働き方が多様化しているなか、住宅、健康・医療、慶弔・災害、育児・介護、自己啓発、休暇、レクリエーション等の福利厚生に力を入れている会社は、働いている側、または家族としても安心感が得られます。
土木の施工管理は責任重大な職務
土木の施工管理は、大規模で、多くの人が関わってくるだけに、責任が重い仕事です。その分、様々な障壁をクリアして作り上げていった先には、大きな達成感ややりがいがあります。業界としても就労環境や福利厚生の改善が進んでいるので、今後の離職率は変化していくでしょう。
参考:
厚生労働省「令和2年雇用動向調査結果の概要」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/21-2/index.html
<取材先>
株式会社ティーネットジャパン 西川隆之さん
TEXT:小林麻美
EDITING:Indeed Japan + ミノシマタカコ + ノオト


