30年以上完全週休2日、有休の完全消化、残業ゼロを実現する拓新産業の取り組み


30年以上前から、建設業界のなかでいち早く社員の働き方の改革に取り組んだ、建設機材レンタル業の拓新産業。従業員数は65人(21年6月現在)。「顧客満足」より「社員満足」を高めることが会社の利益を生むと考え、完全週休2日制、有給休暇の完全消化、残業ゼロを実現していきました。建設業界内での働き方改革の取り組みや働きかけ、改革によってもたらされた効果について同社社長の宮里誠さんにお話を伺いました。

 
 

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若者が入りたいと思える企業になるために


――社員の働き方を見直すようになった経緯を教えてください。
 
当社の取り組みは、私が入社する前の1989年に創業者の藤河次宏前社長が始めました。新卒採用のために合同企業説明会に参加した際、一人もブースに来てくれず、「もっと魅力ある企業にならなければ」と考えたのが始まりだと聞いています。
 
それまでは、工期を守るために土日出勤や残業も当たり前でしたが、まず就業規則を見直して完全週休2日制を導入。さらに残業ゼロや有給休暇の完全消化にも着手。現在も90%以上の有休消化率を達成しているところです。
 
――30年以上前に建設業界で週休2日制の企業は珍しかったのではと思います。苦労もありましたか?
 
当時、建設業界で週休2日制を導入した企業の前例がほぼなかったため、営業担当者から大反対を受けたと聞いています。ライバル会社は土日も仕事をしているわけですから、お客様に理解してもらえず仕事を断られることも多々ありました。
 
私自身も24年前に入社して以降、営業担当として、何度も取引先に足を運んで説明し、なんとか理解していただこうと努力しました。スケジュールに協力してくださる現場もありましたが、理解を得られずに断られることも多かったので、「これでは営業数字を上げられません!」と上司に意見したことも。
 
残業ゼロを実現するためには、サービス面でも変化がありました。例えば、弊社の就業時間を過ぎてから取引先が資材の返却に来た場合、一切受け付けないようにしています。この方針に対しても社内外から批判がありましたが、取引先への説明を繰り返し、今ではかなり理解していただけるようになってきました。

 
 

働き方を見直し、利益もしっかり上げる


――休みを確保し、残業をゼロにしながらも利益を上げるのは難しい課題ですね。どのように克服しましたか?
 
藤河前社長が立てた営業戦略は、大口の一社に偏らず、なるべく多くの顧客にアプローチすることでした。小口でも利益を積み上げることで、たとえ1社に断られても大きな痛手にならずに済むわけです。
 
そのため、新規の顧客開拓にも積極的に取り組みました。まずは顧客の要望をじっくり聞いてから、タイミングを見て当社が完全週休2日制であることや営業時間の説明をして、理解してもらえるよう工夫しました。
 
――社内の体制づくりで工夫している点はありますか。
 
誰が休んでも困らない状態が理想なので、そのために社員一人一人が様々な仕事をこなせることが必要です。そのために2~3年ごとに配置転換を行っています。幅広い業務を経験しておくことで、誰かが休んでも他の人が仕事を代行できるようになりました。さらに、異動によって各業務に取り組むメンバーが定期的に変わるため、部署内の改善点に気付きやすく、より良い仕事のやり方が見つかるメリットも。全員が幅広い業務を担えるようになることで、産休の取りやすさにもつながっています。
 
――ここまで伺ったように、実現の難しい改革を他社に先駆けて進められた要因はどこにあったと感じますか?
 
やはり、一番大切なのはトップの決断と実行です。働き方改革は、ただ心地良く働けたらいいのではなく、 利益を上げ、きちんと給料を出すことができて初めて実現します。
 
当社では、社内向けの経営計画発表会を毎年開いています。1年の経営方針と収益の見通しを示すことでトップの本気度が伝わり、社員は安心して働き方の見直しに努めながら業務にも積極的に取り組むことができます。

 
 

無駄を省く努力で働き方改革を継続


――働き方の見直しを通じて、採用面での変化はありましたか?
 
30年前は応募者集めに苦労していましたが、現在の企業風土に魅力を感じる学生は多いようで、2020年度は会社説明会に50~60人が訪れ、1~2人の採用枠に対して20人が面接を受けました。
 
私自身もワーク・ライフ・バランスが整っていることに魅力を感じ、24年前に大学新卒で入社しています。入社して1年経った頃、趣味で続けていたサッカーの合宿に参加するため、1週間の休暇を申し出たら、すんなり許可がもらえたこともありました。「いい会社に入ったな」と実感しましたね。
 
――建設業界の景気動向は厳しい時代を迎えていると聞きます。業績と労働環境をキープするために、これからどんな工夫が必要になると考えますか?
 
少子高齢化を背景に、建設業界は右肩上がりとはいかず厳しい状況にあります。常々、社員に伝えていますが、良いワーク・ライフ・バランスで働けることは決して当たり前ではなく、今後業績が悪くなれば、完全週休2日や残業ゼロも実行できません。そうならないために利益を確保しながら無駄なコストは省き、持続可能な経営を続けていくことが必要です。そのためにも鉛筆1本の値段でも比較表を作り一番安いものを購入したり、接待費を抑えたりするなどの努力をしています。
 
さらに、コスト統括部の中に改善提案チームを設けて、業務をより効率化する案やコストカットのアイデアを社内で募っています。採用された案の一つが、トラック配送情報のデータ化です。以前は社内のホワイトボードで示していましたが、それぞれの机上のパソコンで対応できるようになり、業務効率が上がりました。働き方改革に着手して30年以上経ちますが、マンネリ化することなく常にこうした努力を積み重ねていくべきですね。
 
――最後に、宮里さんが考える理想の企業のあり方について教えてください。
 
当社の働き方への取り組みに対し、周りの同業者から「どうしてそんなことができるの?」と聞かれますが、できるかどうかは「会社の繁栄と社員の幸せのバランスをどう取るか」というトップの判断にかかっています。
 
私は、「多少売り上げを抑えても、社員を守らなければ事業を続けられない」という創業者の考えを受け継いで、社員が安心して人生設計を立てられるような経営を続けていきたい。そのためにも、社員みんなで知恵を出し合いながら努力していきたいです。

 
 
 

※記事内で取り上げた法令は2021年6月時点のものです。
 
<取材先>
拓新産業株式会社 社長 宮里誠さん
 
TEXT:岡崎彩子
EDITING:Indeed Japan + 笹田理恵 + ノオト

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