就活スタイルに「スニーカー」の選択を。ジョンソン・エンド・ジョンソンの新たな試み「#スニ活」が生まれたわけ

話題のスニ活について、ジョンソン・エンド・ジョンソンの担当者に話を伺いました。

2019年3月、ヘルスケアメーカーのジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社が「#スニ活」というキャンペーンを始め、ネット上で話題になりました。
 
就職活動で履く靴は、男性は革靴、女性はパンプスが一般的ですが、この活動は「スニーカーなど、自分が快適に感じる靴を履いて就活をしてもいいのでは」と呼びかけるものでした。
 
日本の就活スタイルの固定観念を覆すこの取り組みは、どんなきっかけで始まったのでしょうか。その反響やこれからの課題も含めて、同社のマーケティング本部の太田幹子さん、人事部の面未希さん、西川絵里さんにお話を伺いました。

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「消費者の健康を第一に考える」理念と反していた

 
#スニ活 就活に、スニーカーという「選択肢」
 
ーーまずは、「スニ活」のキャンペーンを思いついた経緯を教えてください。
 
太田さん:TwitterなどのSNSを見ていて、多くの就活生が靴擦れに悩んでいると気づいたのがきっかけです。日本の就活って、黒髪、リクルートスーツ、男性は革靴、女性はパンプス、というのがスタンダードですよね。でも、多くの学生は革靴やパンプスを履き慣れていなくて、すぐに靴擦れをしてしまう。
 
私たちは「バンドエイド」というブランドの商品を発売しています。これは傷を負ったときに使って欲しい商品ですが、そもそもは「傷を負って欲しくない」という想いがありました。これは、私たちの企業が消費者の健康を第一に考える、という信念をもっているから。その企業が就活で学生に傷を負わせてはいけないと考え、「スニ活」のアイデアが生まれました。
 
ーー提案を受け、社内ではどのような反応がありましたか。
 
西川さん:私が所属する人事部はもちろん、社長もスニ活のアイデアを聞いてすぐに「それは意義のあることだ」と快諾しました。社内でも反対の声はありませんでしたね。というのも、「消費者第一」という我が社の信念が大前提としてあり、さらに2年前から社内で「自分らしい服装」を推奨していたことが影響しています。スマートカジュアルとして、ジーンズもスニーカーもOKになり、社員からは「歩きやすい格好のおかげで通勤が楽になった」「リラックスした服装でよりクリエイティブな発想ができるようになった」という声があり、社員自身が十分に良さを感じていたため、スニ活への理解も早かったんです。
 
ーースニ活は、社内ではもちろん、就活生を筆頭に世間でも多くの好意的な反響を得ました。新しい取り組みには炎上のリスクがつきものですが、そういったネガティブな声はなかったのでしょうか?
 
西川さん:ありませんでしたね。スニ活はあくまで選択肢を与えているだけです。私たちは、決して革靴を否定するわけではないし、スニーカーを押し付けるわけでもない。「自分らしい靴を履いてきてもいいですよ」と、選択の自由度を上げたと考えています。
 
実際の就活では、革靴やパンプスの人もいれば、スニーカーの人もいて、皆さんそれぞれ好きな靴を履いてきてくれました。実際にスニーカーを履いてきたのは3割ほど。一方、スニーカーを履いた面接官も複数人いましたね。私たちが提唱しているキャンペーンですから、企業側も学生と同じスタンスで就活に臨みました。

 
今回の取材でも、社員それぞれが好きな靴を履いて参加していました。今回の取材でも、社員それぞれが好きな靴を履いて参加していました。

スニ活は企業側にとってもメリットがあった

ーー先鋭的とも思えるこの活動を始めたことで、貴社に応募してくる学生層は従来の就活と変わりましたか。
 
西川さん:新しいキャンペーンによって応募してくる方が従来と大きく異なるということはなかったですね。それなのにスニーカーを選ぶ人が一定数いたということは、実は今まで多くの人が窮屈な思いをしていたんじゃないか、という気づきにもなりました。
 
ーースニーカーを履いたら就活が有利になる、あるいは不利になる、なんてことはあったのでしょうか?
 
面さん:あくまで靴の選択肢が増えただけであって、もちろん足元は選考基準には入りません。私たちが面接時に重要視しているのは、いかに学生がベストな状態で自分らしさを発揮するパフォーマンスをできるか。ですから、靴擦れをしているとか、履き慣れていない靴で緊張しているとか、そういうパフォーマンスを阻害するものを取っ払ったうえで、一人ひとりの学生さんとお会いしたかったんです。
 
昨年はスニ活によって学生がリラックスしやすくなり、面接では今までよりも本質的な会話につながりやすくなった気がしますね。面接後は玄関までお送りするのですが、そこでも『すごく話しやすかった』と言ってくれる学生さんがいて、お互いにとって良い環境作りができたのかなと思いました。

課題は、より大きなムーブメントを作ること

 ーースニ活が始まった2019年は、#KuToo運動(仕事場で女性にハイヒールを強制する服装規定をなくすための運動)などのムーブメントがありましたね。実際のところ、世間の価値観は少しずつ変わって来ていると感じられていますか?
 
面さん:私は昨年まで営業をしていて、よく病院を訪問していました。そこでは必ずパンプスを履いていたのですが、あるとき病院の医師に「そんな靴じゃ歩きにくくない?」と心配されたんです。同僚にも「ハイヒールじゃなくてもいいんじゃない」と言われて、とても驚きました。
 
私はずっと、マナーだからパンプスを履かないといけないと思っていたんです。でも、いつのまにか、服装に対する価値観が変化してきたんだな、と。
 
フラットな靴に変えたら、それもいいねって言ってもらえるようになって。TPOはもちろんあるけれど、不必要な場合はパンプスを無理に履かなくてもいいと選択できる自由は、自分にだけでなく周囲にもメリットがあるのではないか、と思いましたね。
 
ーーただ、「新たな選択肢を提供する」行為によって、学生は「本当にスニーカーを履いて選考に影響はないのか」「どんなスニーカーを履けばいいのか」など、考えなければいけないことが増えてしまうのではないでしょうか。
 
太田さん:やっぱり、いきなり「スニ活」と言われても、どういう格好をすればいいのかわからないだろうとは思いました。皆さんリクルートスーツには革靴やパンプスを合わせるイメージが強いから、スーツにスニーカーを履く姿がうまく想像できない。そこで丸井さんとコラボして、具体的なスタイルイメージを作り、スニ活のサイトで紹介してみたんです。
 
革靴でもいいし、スーツに合わせた黒っぽいスニーカーでもいいし、白いスニーカーもけっこうおしゃれだよね、という気づきがあるように意識しています。こうやって提案することで、学生の方々にも具体的にイメージできるかな、と。
 
ーー約1年間、スニ活に取り組んでみて気づいた課題、そして今後の目標について教えてください。
 
太田さん:現状の課題は、やはり一社のみで行なっているキャンペーンである、という点です。実際、学生から「本当はスニーカーで来たかったけど、この後に行く企業は革靴じゃないといけないので諦めました」という声もいくつかいただきました。だから今後は、もっとメディアや他の企業も巻き込んで就活生がより快適に就活できるようにしていきたいですね。
 
ーースニ活に興味を持つ企業がある一方で、全ての企業が導入するのは難しい面もあると思います。
 
西川さん:スニ活のコンセプトは、人々の健康のために、また社員一人ひとりが自分らしくいるためにという自社の企業理念や事業の生業と一致したものでした。だからこそ、これほどスムーズに展開できたというのもあります。
 
他の企業の方々は各社で大切にされている理念を最優先に、欲しい人材を戦略的に採用したいと思いますから、今後はおそらくその企業の事業の生業に合った様々なムーブメントが起こるのかもしれません。ただ、それが学生さんにとって「自分らしく」いられるようなものならいいな、とは思いますね。

 
 
 
<取材先>
ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
マーケティング本部 太田幹子さん
人事部 面未希さん
人事部 西川絵里さん
 
TEXT:園田もなか
EDITING:Indeed Japan + ノオト

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