「珍しいアルバイト」を募集する企業の採用活動とは 歴史に触れる「発掘作業員」編


アルバイト求人を検索する際、多くの人は自分の知っている仕事から選択肢を考えるでしょう。では、知る人ぞ知る「珍しいアルバイト求人」を掲げる企業は、どうやってスタッフを確保しているのでしょうか。
 
今回注目したのは、遺跡(埋蔵文化財)を発掘する仕事です。建設NRT株式会社が募集する「発掘作業員」のアルバイトは、興味を持って応募してくる人の9割が未経験者。その業務内容や採用活動で心がけていることを聞きました。

 
 

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発掘作業は体力とコツ次第、歴史を感じながら働く


――「発掘作業員」とは、どんなアルバイトなのでしょうか
 
その名の通り、発掘や記録などの作業を通して、遺跡の発掘調査をサポートする仕事です。調査対象となる日本各地の遺跡は、旧石器時代にまで遡る古いものから、明治・大正時代の比較的新しいものまで多種多様。それらを調査する発掘作業員の業務は、おおまかに屋外で行う「発掘調査」「遺物洗い」、屋内で行う「遺物整理」の3つに分かれます。
 
――具体的にはどんな作業に取り組むのでしょうか?
 
「発掘調査」は、遺跡の土を掘り出し、昔の人が使っていた道具(遺物)や生活の痕跡(遺構)を見つける作業です。発掘する際には、土質などの状況に応じてスコップやジョレン(土砂をかき寄せる道具)、移植コテなどを使い分けます。中華お玉やスプーンなどを使うこともあるんですよ。
 
「遺跡の発掘」と聞くと、一般の方は土器や石器を竹べらなどで繊細に掘り出す作業をイメージするかもしれません。しかし、大部分はスコップで土を掘って一輪車で運ぶ作業なのです。
 
――なかなか体力勝負なんですね。
 
一概に体力のみではありません。作業時の身体の使い方がわかれば、年齢、男女問わず作業できます。体力も必要ですがコツですね。作業時間は現場によって異なりますが、主に9時~17時です。
 
――「遺物洗い」や「遺物整理」ではどんなことをしますか。
 
「遺物洗い」は、出土品を水洗いして土を落とす作業です。対象にもよりますが、土をしっかり落としつつ、傷つけないようブラシで軽くたたくように洗っていきます。時代ごとに様々な種類の遺物が出土しますから、仕事を長く続けるほど土器や石器などに詳しくなりますね。
 
「遺物整理」は、土器の破片に細かい文字で出土位置を記録したり、割れた土器をつなげて形を復元したりする作業です。出土した土器や石器を計測して、実測図を作ります。これらの資料がまとめられ、最終的にその遺跡現場の報告書になるんです。
 
――発掘作業員のアルバイトにはどんな魅力があると思いますか。
 
教科書や博物館で見るような、昔の人の生活の跡や道具に直接触れられる点は、好きな人にとっては大きな魅力じゃないでしょうか。なんと言っても、発掘された遺跡の第一発見者になれるんですよ。
 
それに、自分が参加した調査の成果が報告書として一般に公開されます。報告書は各地の図書館など身近な施設に保管され、記録として残るもの。「自分は遺跡の研究や文化財の保護に一役買っているんだ」と、やりがいを感じるスタッフも多いようです。
 
――その一方で、他のアルバイトにはない苦労はありますか。
 
現場に入ったばかりの新人さんにとって、最初の試練は筋肉痛かもしれませんね。土を掘って運んでの繰り返しは、普段の生活ではまずやらない作業です。体力的にはしんどいですよね。
 
しかも現場は屋外なので、暑さや寒さなど気候の変化にも対応しなければなりません。とはいえ、1週間くらいで体が慣れてくる方が多いようです。

 
 

未経験者を広く採用し、情報収集を欠かさない


――アルバイト採用の流れについて教えてください。
 
オンライン上か電話で応募してもらいます。このとき、仕事内容をこちらから改めて応募者に伝えるようにしています。他であまり募集のない職種のため、「きっとこんな仕事だろう」と応募者がイメージするものが実際の業務と全然違う可能性があるからです。最終的には面接で合否を判断します。
 
――求人を出す際は、応募者を集めるために何か工夫をしていますか?
 
多くの人にとって馴染みのない仕事ですから、キャッチコピーや仕事内容はできるだけ分かりやすく示すよう心がけています。また、応募者からの情報収集も欠かせません。実際に採用した方には、「どんな仕事を探していて発掘作業員に辿り着いたのか」「応募の決め手は何だったのか」を聞き、採用活動に生かしています。
 
――実際には、どんな人が応募してくるのでしょうか。
 
募集現場の場所や時期にもよりますが、20代から60代まで幅広い年齢層から応募があります。「定年退職して時間ができたから」など、年配者からの応募が比較的多い傾向にありますが、就職活動中の学生さんや30〜40代の方もいらっしゃいますね。男女比は7:3くらいでしょうか。
 
応募理由としては、「昔から遺跡に興味があった」「歴史の授業が好きで、この仕事を経験してみたかった」といった声をよく聞きます。ほかにも、遺跡の近くで生まれ育った方、作業員の友人が楽しそうだったという方など、いずれも仕事内容が決め手となって応募される方がほとんどです。
 
――専門的な分野の仕事ですが、応募者に業務経験は求めていますか。
 
いえ、アルバイトスタッフは経験不問です。そのため、応募者の9割以上は未経験者ですね。
 
未経験の方に、いきなり難しい仕事をお願いすることはありません。ただ、採用前に最低限の業務内容を理解してもらう必要はあります。遺跡や歴史に魅力を感じて応募される方が多い分、それぞれが持つ仕事へのイメージがあるはずです。採用活動では、そういった認識と実際の業務をすり合わせるようにしています。
 
――応募書類や面接時のチェックポイントを教えてください。
 
応募書類は、募集要項を満たしているか確認します。出勤可能日数なども重要ですが、体力仕事なので、前職は内勤か外仕事か、通いやすい現場はありそうかなどをチェックしています。
 
面接では、コミュニケーションの取り方を見ています。遺跡発掘の現場には、多くの人が関わっているので、専門知識のある調査員や現場責任者の言うことを素直に聞けそうかどうかは大事なポイントです。
 
遺跡発掘は皆で協力して進める作業ばかりなので、協調性があって現場に馴染めそうな方はぜひ採用したいですね。採用側としては、応募者に通いやすい現場を紹介していくことも心掛けています。

 
 

未経験のアルバイトが、業界の今後につながる可能性も


――未経験者を歓迎すると、確かに応募のハードルは下がりますが、業務を教えるのが大変になることはないのでしょうか。
 
問題ありません。確かに、遺跡発掘の現場は専門的な道具や用語、作業手順があり、覚えることは多いです。だからこそ、社員や経験豊富な作業員が、道具の持ち方から教えられるような体制を整えています。
 
――具体的にどんな準備をしていますか。
 
専門用語や発掘道具の使い方、現場作業における安全面の注意事項をまとめたマニュアルを作成しています。とはいえ、現場にはなかなか言語化しづらい技術やニュアンスがあり、そういった部分の伝え方には難しさを感じることは少なくありません。そんな時は、実際に作業を見ていただくのが一番。現場経験がものを言う作業は、一緒に進めていく中で徐々に習得してもらうようにしています。
 
――事前に教えられることと、現場経験から身につけてもらうことを、初めから分けて想定しているのですね。
 
そうです。たとえば発掘調査では、土の色や含有物、硬さなどから「掘って取り除く土」と「掘らずに残す土」を見極めるのですが、この判断を難しいと感じる方が多いんです。難易度の高い土質だと、ベテランの作業員でも掘り足りなかったり、逆に掘り過ぎたりしてしまうこともあります。ただ、調査に関わる判断は専門家である調査員がするので、悩ましい場合は判断を仰げば大丈夫です。
 
――「誰に聞けばいいかのか」がはっきりしているのは、未経験者を採用する現場では必要なことですね。こうした経験をもとに、アルバイトスタッフがスキルアップする制度はありますか。
 
資格取得の支援制度を設けています。現場全体を見ていただく方のうち、職長・安全衛生責任者、土木施工管理技士などの資格取得を希望される方には、会社が費用を負担しています。
 
また、安全面への配慮も欠かせません。技能講習の受講が必要な資格を取得してもらえると、任せられる範囲も広がりますね。
 
――アルバイトスタッフを対象に、その後のキャリアを用意されているのでしょうか。
 
将来的にこの仕事を続けていきたい人には、正社員への登用制度があります。アルバイト求人が正社員の確保にもつながっていますね。現社員の多くがアルバイトから登用されています。
 
たまたま見つけて応募される方がほとんどの職業なので、この業界を今後も維持していくためには、ちょっとした興味から入ったアルバイトスタッフが技術や経験を身につけ、長く業界に関わってくれることを期待しています。そうした意味でも、アルバイト採用の間口を広くして、しっかり育てていくことが大切なのです。

 
 
 

<取材先>
建設NRT株式会社 佐藤昌浩さん

http://www.k-nrt.co.jp

TEXT:森夏紀
EDITING:Indeed Japan + ノオト

 

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