個人経営のお店はどうやって人材確保している? 求人のコツを聞いた


※この記事は2020年2月15日に取材したものです。
 
個人経営のお店では、店内やトイレの壁に求人の張り紙をしているのを見かけることがあります。実際のところ、アルバイト募集の張り紙を見て応募してくるのでしょうか? 「求人は張り紙がメイン」という居酒屋「樫尾食堂」に、その効果やメリットについて話を聞いてみました。

 
 

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関係性の希薄な求人は難しい


――「樫尾食堂」さんの求人は、どういった手段をとっているのでしょうか?
 
僕はこのお店に加えて近所にもう1店舗、姉妹店を経営しているのですが、どちらも店内や入口付近に求人の張り紙を貼ってスタッフを募集しています。あとはお店のFacebookページで求人の投稿をしたり、僕個人のアカウントでも同じ内容をシェアしたりしています。
 
――お店を知っている方や樫尾さんをご存じの方など、比較的小さなコミュニティに向けて求人を出されているんですね。
 
ええ。1号店を2012年に開店して以降、ほとんど「小さなコミュニティのなかから探す」という求人を行ってきました。
 
――そもそも、店に求人の張り紙をして応募してくる人は、一度はお店に来たことがある人だったりしますよね。地元率も高そうですし。
 
そうですね。あくまで僕のお店の場合、かつ個人の経験則になるのですが、広く募集することによって応募者が確実に増える反面、お店との関係は応募の段階でほぼ皆無ですよね。関係性の希薄な求人で良い人材を採用するのは、非常に難しいことだと認識しました。
 
「エリアやお店の特徴を把握した上で応募してくる人」の方がスタッフとしては魅力的なんです。これは、近くに住む人や常連客で賑わうローカルなお店だからかもしれません。最寄駅も、市外・市内から多くの人が集まるようなメインステーションではなく、どちらかというとローカル色が濃いですね。
 
――張り紙やSNSでの求人では、実際にどれくらいの応募があるのでしょうか? また、張り紙やSNSならではの効果や特徴についても教えてください。
 
張り紙を見て応募してくれるのは、1年に2〜3人くらいですね。SNSも同様です。少ないと感じるかもしれませんが、規模の小さいお店ですし、以前と比べてかなり増えました。そもそも採用は新しい人間関係をつくることなので、応募があっても採用までうまくつながらない場合もあります。しかし、お店の雰囲気をよく知った上で応募してくれる方は、その後も長く働いてくれる傾向があるんです。お店の雰囲気にも馴染みやすいからでしょうかね。

 
 

お店に興味を持つ人が応募してくる安心感

 
樫尾食堂・樫尾酒店 オーナー 樫尾英理究さん

――過去に印象的な応募者はいましたか?
 
少し前まで台湾の留学生の女の子が働いていたのですが、もともと通学時に当店を「気になるお店」として認識し、求人のチラシを見て応募してくれたそうです。彼女には、留学を終えて台湾に帰るまで約2年間働いてもらいました。酔客も多いなか、お客さんへの対応も上手になり、たくさんの人から可愛がられていましたね。
 
――留学生からの応募もあるのですね。応募のハードルについてはどう思われますか?
 
姉妹店もこのお店も、外から店内の様子が見える設計なので、雰囲気は掴みやすいと思うんです。来店時に店内の様子を見ることができ、そのタイミングで求人募集の張り紙が目に入れば、「ここで働きたい!」とピンと来ることもあるのではないでしょうか。
 
通学路にあって気になっていたとか、お店に飲みに来たことがあるとか、張り紙による求人はお店を認識していないと届きません。その分、募集してくる人はお店に興味を持ってくれているのが前提になります。こちらとしても、面接時や採用時の安心感が違いますね。
 
――採用側としても、エントリーの動機をスムーズに把握できそうです。
 
僕自身がオーナーであり、料理のメイン担当でもあるので、現場で毎日の仕込みや営業をこなさなければいけません。個人経営の小さなお店は一人ひとりが担う仕事量が多いため、日々の業務に加えて面接のための時間を取り、相手のことを細かく聞くのはやはり大変です。こちらから説明しなくてもお店の雰囲気を把握した人が応募してくる方法なら、経営者の負担は軽くなりますね。

 
 

スタッフや常連客の繋がりで採用することも


――張り紙やSNSでのシェアのほかに、小さなコミュニティの中に有効な求人方法はありますか?
 
アルバイトスタッフや、常連客からの繋がりで新しいアルバイトが入ってきてくれる、みたいな求人はありますね。張り紙を見たスタッフやお客さんが「いい人紹介するよ」と教えてくれるんです。
 
――お店の雰囲気を知っている人からの紹介はとても心強いですね!
 
大学生のアルバイトスタッフなどは、後輩を紹介してくれます。大学生を1人採用したら、その後輩、そのまた後輩……と、採用の縦のラインができることもあります。現スタッフが、信用に足る後輩を紹介してくれるんですよ。いきなりスタッフ候補として僕と会わせるのではなく、オフの日にその後輩を連れて飲みに来てくれることもあります。
 
本人はリアルなお店の雰囲気を掴みやすいし、僕としても新しいスタッフになるかもしれない人と気さくに関係を築くことができるので、ありがたいですね。おいしいお酒を飲みながら「楽しくていい店だな」と思ってもらえると、「ここで働きたい」という気持ちに自然となるのかもしれません。ひいてはいい採用に繋がるのではないでしょうか。
 
――常連さんからの紹介には、どのようなケースがありますか。
 
アルバイト先を探している知り合いに、「おすすめのお店があるよ」と紹介していただくとか。過去には息子さんを紹介してくれたこともありました。
 
身近なお知り合いや家族を紹介してくれる場合も、いきなり面接ではなく、まず本人を連れて来店してくれることが多いですね。その場で僕や他の常連客と積極的に関係性を築いてくれるような人だと、採用に向けてポジティブに考えられます。
 
――面接だと、どうしても「いい自分を見せよう」と臨む人が多くなります。その点、まずお客さんとして対面するのは、人となりを把握する効果がありそうですね。
 
そうやってまず飲みに来てくれる人は、スタッフ採用後もお金儲けのためだけではなく、店そのものを気に入って働いてくれます。小さな張り紙から興味を持ってくれる人、いい人材を紹介してくれる人、等々、小さなコミュニティの良さを感じられる採用が当店には合っていますね。店内の求人の張り紙は、それをつなぐ貴重な道具だと思います。
 
様々な働き方が当たり前になりつつある今、採用の方法も多種多様であってしかるべき。張り紙や知人の紹介、Indeedのような求人サービス、お店によって最善の手を選ぶのがよいのではないでしょうか。

 
 
 

<取材先>
樫尾食堂・樫尾酒店 オーナー 樫尾英理究さん
京都市在住。イタリアンや居酒屋での勤務を経て、2012年に独立し「樫尾酒店」をオープン。2019年には2号店となる「樫尾食堂」を開店。京都市の西側・西院駅エリアの人気店となっている。
 
TEXT:ヒラヤマヤスコ(おかん)
EDITING:Indeed Japan + ノオト

 

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