なぜ従業員満足度調査(ES調査)を実施するの? 期待できる効果とは


従業員満足度調査(ES調査)とは、従業員の意識や行動をアンケートなどで把握し、結果を分析して経営に生かす手法です。実施の背景には、経営環境の変化や、働き手の価値観の多様化が挙げられます。ES調査の目的や導入前に検討したいポイントについて、ES調査のサポートを手掛けるクレイア・コンサルティングのシニアマネジャー・和田実さんにお聞きしました。

 
 

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従業員の満足度を左右する2つの要因


――従業員満足度調査(ES調査)とはどんな調査ですか。
 
ESとはEmployee Satisfactionの略で、様々な観点から会社や職場、仕事に対する従業員の満足・不満足を聞き出す調査手法です。選択式のアンケートを用いて回答を定量的に把握・分析し、その結果をもとに継続的な組織改善につなげることが一般的です。従業員満足度の概念は1920年頃にアメリカで提唱され、日本では1960年代頃から関心が高まってきたようです。
 
この調査の前提としてよく引用される理論の一つが、「ハーズバーグの二要因理論(動機づけ・衛生理論)」 です。働く人にとっての仕事における満足度は「満足」に関する要因と「不満足」に関する要因に分かれる、とする考え方です。
 
「満足」に関する要因は、勤務態度や業績を向上させようとする動機づけにつながるという意味で「動機づけ要因」と呼ばれます。達成感を得ることや、承認されること、昇進への期待などが該当します。
 
もう一つの「不満足」に関する要因は業績向上への動機づけにはつながらないものの、整っていなければ不満につながるため、予防的観点で最低限備える必要があるという意味で「衛生要因」と呼ばれます。給与や福利厚生、上司や同僚との人間関係などが該当します。
 
ES調査は、この2つの要因がそれぞれ満足度にどう影響しているかを調べるもので、その結果を分析し、衛生要因および動機付け要因の両方の充実を目指します。
 
――近年、ES調査を実施する企業が増えているようですが、どのような背景がありますか?
 
2000年頃からES調査を実施する企業は増加傾向にあります。その背景には、経済のグローバル化や少子高齢化などによる経営環境の劇的な変化があるでしょう。多くの企業にとって人的資源の最大限の活用が目標となり、シニア活用をはじめとした多様な人材を活かす人事制度の導入なども進んでいます。
 
さらに、社会情勢により終身雇用や年功序列が崩れ、働く人たちの価値観も多様化しています。企業側には従業員一人ひとりの働くことへの意識や価値観を的確に把握し、魅力ある仕事や職場環境を提供することが求められていることも、ES調査のニーズが高まってきている大きな要因と言えるでしょう。
 
これまでES調査を実施するのは大企業が中心でしたが、効果が知られるようになり、最近は中小企業の実施も増えているように感じています。

 
 

従業員の意識を定量的に認識できる


――ES調査にはどんな効果が期待できますか?
 
調査を実施する利点は大きく分けて3点あります。
 
1点目は、従業員の意識や心理状態を定量的に把握できる点です。一般的に回答は選択式で、5つ程度の選択肢を用意します。
 
たとえば「会社に対する満足度」の回答の選択肢を「5点:そう思う、4点:ややそう思う、3点:どちらともいえない、2点:あまりそう思わない、1点:思わない」とした場合、回答の平均値が「3.5点」なら、社員の半分程度は満足している可能性が高いと判断できます。
 
2点目は、調査結果を生産性の向上や離職防止につなげられる点です。ES調査を実施することで、従業員自身が会社が求めていることを間接的に知ることができます。そして、従業員が回答した様々な意見に対して会社側が何かしらの前向きな反応を示せば、会社は自分たちのことを考えてくれると感じるようになるでしょう。さらに、実際に会社や職場が働きやすくなり、働きがいが増したと実感することにつながれば、もっとここで働き続けたい、もう少し頑張ってみようと思うようになります。
 
このように従業員の意識や行動に直接的に働きかけることができることも、ES調査を実施する大きな利点と言えます。
 
3点目は、調査結果を定点観測することで持続的な経営改善に生かせることです。調査結果から自社の課題が明らかになり、中長期の成長に向けた様々な改革を推進する手掛かりをつかめます。最近では、成功したサービス系企業の分析を元にした、従業員満足が顧客満足や企業の業績アップにつながる因果関係を示す研究もあります。
 
実際に当社がサポートした企業では、初年度は厳しい結果でも、調査結果を踏まえた改善を地道に続けていくことで、年々ES調査のスコアが改善し、企業業績にもよい影響を与えることにつながった事例がたくさんあります。

 
 

ES調査の実施目的や対象者を明確に


――ES調査を実施する前に知っておきたい注意点と必要な準備を教えてください。
 
具体的な質問文の検討に入る前に、押さえてほしいポイントが6つあります。
 
1.Why?
何のためにES調査を実施するのか、調査結果を何に活用し、どんな結果を導きたいのかを明確にします。すでに問題点が分かっている特定の箇所を仮説検証・改善したいのか、健康診断的に従業員の意識状態を俯瞰的・網羅的に知りたいのか、などをはっきりさせないと、結果をどう捉えるべきか分からず右往左往することになりかねません。
 
2.Who?
目的に合わせて、正社員、パート、アルバイト、派遣社員など、対象とする従業員の範囲を定めます。対象を広く設定する場合は、全員共通の質問と属性ごとの質問に分けるとよいでしょう。
 
3.What?
何を聞くかを明確にしましょう。単に満足の度合いを聞くのか、もう一歩踏み込んで満足度に関連しそうな行動内容を聞くのか、自由記述の設問を設けるか、といった設問全体の方向性を考えていきます。
 
4.How?
回答形式や設問数を決めます。一般的に設問数が80問を超えると回答者が負担に感じやすくなると言われています。
 
5.Where?
オンラインで実施するのか、紙に書いてもらうのか、結果はどうフィードバックするのかを決定します。
 
6.When?
実施時期を明確にします。調査を実施する担当部署の繁忙期を避け、余裕を持って取り組める時期に実施するのがよいでしょう。
 
これらの6つの要点を押さえた上で、具体的な質問項目を設計し、結果の分析方法などを検討していきましょう。調査を通じて課題を分析することで、よりよい組織づくりの糸口が見えてくるはずです。

 
 
 

※記事内で取り上げた法令は2021年7月時点のものです。
 
<取材先>
クレイア・コンサルティング株式会社 シニアマネジャー 和田実さん
 
TEXT:岡崎彩子
EDITING:Indeed Japan + 笹田理恵 + ノオト

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