女性管理職比率5%台から20%超へ
カルビーが目指す女性活躍とは

「女性の活躍なしにカルビーの将来はない」という考えのもと、女性活躍推進に取り組むカルビーグループ。2010年にはダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の専任部門を設置して改革を進め、開始当初5%台だった女性管理職の割合を20%台にまで引き上げています。

女性が活躍できる組織づくりを進めるために大切なポイントやD&Iに対する考え方について、同社の人事・総務本部戦略総務部長であり、全員活躍推進室長の石井信江さんにお話を聞きました。
公開日:2023/07/28

グローバルを意識した経営に女性活躍は必須

――女性活躍推進に取り組まれたきっかけを教えてください。
取り組みが始まったのは10年以上前にさかのぼります。将来的に日本の少子高齢化が進み、労働人口も減る見通しのなか、私たちのビジネスを国内だけで展開していくことは現実的ではありません。グローバルを意識した事業推進や経営を考えると、D&Iに取り組むことは必須でした。

また、組織作りの観点でも、日本のように同質化を好む組織運営や事業推進にいずれ終わりがくることは目に見えています。北欧などを中心にグローバル企業は女性活躍が進んでいて、日本は周回遅れのような状況でしたが、まずはそこに課題意識を持って取り組まなければならないと考え、2010年にD&Iの専任部門を立ち上げて女性活躍推進の取り組みがスタートしました。
――カルビーでは女性従業員が約半数を占めると聞いています。もともと女性が多かったのでしょうか?
そうですね。当社では以前から従業員の男女比は半々くらいです。しかし、取り組みを始めた当時、女性の管理職比率はわずか5.9%でした。社内の半数は女性なのに、会社の意思決定の場に女性がいないというアンバランスな状況ですから、そのギャップを埋めなければならないとの危機感から、D&Iの取り組みを本格化させていきました。
――取り組みはどのように進めていったのでしょうか。
女性管理職登用を当社のKPI(重要業績評価指標)として定め、当時の政府も「2020年までに30%」という数値目標を掲げていたこともあり注1、まずは30%を当面の目標に掲げました。カルビーの従業員の男女比は半々なので、あくまで最終的に実現すべきは従業員比と同じ50%です。

数値目標に対して全国の事業所ごとに計画を立て、施策を進めていくと、管理職を任せられる能力があるのに登用されていない女性が何人もいることが見えてきました。その人たちから順に管理職登用し、初動は比較的スムーズに進みました。難しかったのは、その後に続く人材を育成することです。

「管理職になってみたい」と思えるように 人材育成は本社と現場で役割分担

――人材育成はどのように進めていきましたか。
当社には大きく分けて、間接部門、生産部門、営業部門があります。当時、女性管理職の登用は本社人事で統轄していたわけではなく、リストアップから登用、育成まで現場主導でした。そのため、事業所によってどうしても育成のレベルにバラツキが出てしまい、継続的な登用が進まなくなるケースもあり、本社人事と地域人事の役割を改めて分担しました。
まず、地域人事では部門ごとに候補者をリストアップして、選ばれた人のスキルアップのためにどういった課題を与えたらよいか、工場などの生産部門ではローテーションの組み方など部門全体で定期的に人材育成の内容を検討する場を設けました。さらに、候補者に対しては、マネジメントのスキルを上げるため、小規模なチームの運営を通じて、そのリーダーとして組織運営のノウハウを学んでもらいました。

一方、本社人事では女性従業員の意識改革に関する施策を進めました。例えば「管理職にならなくてもいい」と考えている女性従業員に対して、「なってみたい」と思ってもらえるよう、ライフとワークの両立、さらにキャリア実現に向けたマインドセットと課題の発見、解決力向上を目的とした研修型のプログラムを実施しました。また、妊娠から育児期までの上司と部下のコミュニケーションのサポートハンドブックも配布しました。
――人材育成の手応えを感じるようになったのは、いつ頃からですか。
様々な施策がサイクルとしてうまく回るようになったのがここ1~2年でしょうか。2023年の時点で、女性管理職の比率は本社が30%弱、生産部門が30%近くまで上がっています。ただし、全体としては22.6%(2023年4月)に留まっています。

これは、営業部門が10%弱と伸び悩んでいるからです。個々で動いて成果を上げる営業という職種の構造的な課題ですが、マネジメントのスキルを伸ばす育成が十分にできていないことが要因です。これは他の企業も同じかと思いますが、仕方がないとあきらめずに必要な力を付けられるよう様々な施策を講じ続けることが必要だと捉えています。
――取り組みを進めるうえで、大事なポイントや注意点はどこにあると感じていますか?
やはり、現場での人材育成と本社による意識改革がうまく進み、良いサイクルで循環していることが大切です。ここがうまくいかないと、継続的に女性を管理職に登用していくことが難しくなると思います。

また、注意が必要なのは、本部長などの経営陣が変わるときに管理職の候補者リストが変わらないようにすることですね。工場長や課長が変わるたびに候補者が変わっていては人材の育成がうまくいきません。今は同じリストで継続することができていますが、直属の上司だけに候補者選定を任せるのではなく、その部門のトップがきちんと候補者リストを握ることにより、同じ人材の育成を継続的に進めていくことがポイントだと感じています。
――女性活躍を進めるには働き方改革も必要だと思います。働き方の整備はどのように進めましたか?
働き方については、女性活躍の観点から整備を進めたわけではなく、別軸で動いていました。2007年に一部組織先行でフリーアドレス導入。ノートパソコン・携帯電話の貸与、ペーパーレス化などを進めました。その後、2010年に丸の内へ本社移転し、それらの流れを標準化させていきました。
このように環境を整えると、仕事がどこでもできるようになります。2014年からオフィス勤務者を対象に在宅勤務制度を導入し、2018年には利用場所・回数の上限を撤廃。新型コロナウイルスの感染拡大後はフルフレックス制度を導入し、コアタイムを廃止することで、より柔軟な制度に変えていきました。

実はこれによって、育児中の女性従業員が時短勤務からフルタイム勤務に変える動きが増えました。女性活躍の観点が出発点ではありませんでしたが、結果的に女性活躍推進につながったので、様々な取り組みをしてきてよかったと感じているところです。

「活躍する」とはどういうことか?

――女性活躍に取り組んだことによって、どのような効果がありましたか?
従業員が、女性が管理職に就くことを当たり前だと感じるようになったことでしょうか。最初は女性の上司が珍しく、戸惑いもあったかもしれませんが、性別は関係なく、上司がどういう人間なのかが大切だと理解されるようになったと思います。

加えて、従業員一人一人が抱える事情に配慮できる環境が整いました。これは女性活躍の文脈からだけではなく、コロナ禍の影響など様々な要因があるとは思います。とはいえ、多様な人材に配慮した労働環境が整う一助になったと感じています。
――女性活躍、さらにD&Iの推進について今後の目標を教えてください。
女性管理職比率30%という目標を掲げながら、会社全体としては未だ30%にたどり着いていないのが現状です。課題である営業部門での女性の役職者を輩出できる仕組みづくりや環境整備、さらには営業そのものの働き方や業務の進め方に手を打っていかなければなりません。課題は明確なので歩みを止めることなく、まずは30%を達成し、50%を目指して取り組みを進めていきたいですね。

一方で、管理職になることだけが「活躍」なのかということも考えなければなりません。私たちは「全員活躍」を掲げていますが、「活躍とは一体何なのか?」という点をきちんと定義できていません。カルビーの考える「活躍」の定義を明確にし、それに対して一人一人が、自分がどういう位置にいるかを確認し、何ができるかを考えていく。これが今からやらなければならないことだと考えています。
――言われてみると確かに「活躍」の定義は難しいですね。
一般的に使われている言葉ですが、実はちゃんと分かっていない人も多いと思います。また、D&Iの取り組みも雲をつかむような感覚で進めていた時期もありました。当初は、女性活躍を推進していけば自ずとD&Iの取り組みも進むと信じていましたが、続けていくと女性活躍を推進するだけではD&Iの課題は解決することができないことに気がつきました。

というのも、D&Iは、性別だけに限らず、世代間ギャップや考え方の違いなど個々の多様な状況を受け入れながら前向きに取り組み、良いものを生み出すことが本質的な意味合いです。そのため、男女の属性における課題と、より一層パーソナルな意味合いが強くなるD&Iにおける課題は別々で考えるべきだと感じます。

今後どのようにD&Iに取り組むかは、これから考えを深めていくところですが、まずは先行して取り組みを進める女性活躍に関して女性管理職比率の目標を達成したいです。と言いながら、そもそも「女性活躍」と言っている間は、女性が活躍できていないということ。当たり前に女性が活躍して、早くこうした目標を必要としない状態になりたいですね。

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