「自社にとってダイバーシティとは何か」を追求した
freeeの取り組み

中小企業の採用・人事・労務の担当者は、1名〜数名で多くの人事業務や組織づくりの施策を行わなければならないため、先進的な取り組みになかなか着手できないかもしれません。

「スモールビジネスを、世界の主役に。」をミッションに掲げ、小企業や個人事業主向けに業務効率化クラウドサービスを開発・提供しているフリー株式会社。2018年にダイバーシティ推進室を立ち上げ、組織のDEI(Diversity:多様性、Equity:公平性、Inclusion:包括性)を高める取り組みを続けています。その目的や施策について、同社の採用兼ダイバーシティ推進室長である吉村美音さんに話を伺いました。
公開日:2023/11/01

ダイバーシティは、ミッション実現のために不可欠だった

——freeeの事業概要と、ダイバーシティ推進室が立ち上がった経緯を教えてください。
当社は、スモールビジネスを行う法人や個人事業主の方々へ、クラウド型会計ソフト「freee会計」をはじめとした業務効率化クラウドサービスや、人事労務および会社設立支援サービスを提供する会社です。

ダイバーシティ推進室が立ち上がったのは、創業6年目を迎えた2018年です。当時は従業員が急増して350名を超える規模になって多様性も高まりつつある、freeeの第二創業期といえる時期でした。

急激な成長を遂げている一方、当時の経営陣は、組織の規模が大きくなるにつれ、従業員の意見が自分たちの耳に届かなくなることへの危機感を抱いていました。会社がさらに成長していくにあたり、多様な従業員の声を吸い上げる取り組みが必要だとの話になったのです。そこで、私ともう一人のメンバーでダイバーシティ推進室を立ち上げることになりました。
——ダイバーシティ推進室では、現在どのような取り組みを行っていますか。
ダイバーシティ推進室の4名が中心となり、解決したい課題ごとにメンバーを集めて他部門も巻き込みながら、さまざまな取り組みを行っています。

施策の中心となるのは、「よろず相談窓口」の運営です。ダイバーシティに関する悩みごとを気軽に相談できる仕組みで、私と経営陣が相談役になっています。

また、新たに入社する従業員全員に対して、DEI研修を実施しています。当社では、常日頃からミッションや行動指針の浸透に力を入れており、この研修も、freeeにおけるDEIの考え方を理解したうえで活躍してもらいたいとの思いで行っているものです。

さらに、当社の行動指針である「価値基準」を体現する日として「価値基準記念日」を設け、freeeが大切にすることを考える機会としています。直近の価値基準記念日はジェンダーをテーマにし、社会の進化を担う責任をもつfreeeとして、ジェンダーに対するみんなの考え方のギャップを知る社内イベントを主催しました。

この他にも、LGBTQ+の存在を社会に広める外部イベント「東京レインボープライド2023」に協賛し、スモールビジネスをされている方と一緒にブース出展をしました。こうした社内外でのさまざまな施策を通して、ダイバーシティはfreeeにとって不可欠なものであり、当たり前のことだという意識づけを行っています。
——freeeにとってのダイバーシティとは、どのようなことだと考えていますか?
当社のミッションである「スモールビジネスを、世界の主役に。」を実現するために、ダイバーシティはなくてはならないものだと考えています。

スモールビジネスは、事業を立ち上げる背景や実現したいことが千差万別であり、とても多様なものです。freeeのサービスは、スモールビジネスに関わる皆さんの自己実現を支援するためのものですから、私たち自身も、多様な考え方が存在する環境に身を置くべきだと思っています。ミッションに沿って、ユーザーの皆さんに本質的な価値を提供するためにDEIは欠かせないことだと思っています。

小さな意見にも耳を傾け、「マジ価値」を議論する文化

——組織の多様性がプロダクト開発やサービス改善に生かされた事例はありますか。
視覚障害のあるエンジニアが意見を出し、「freee人事労務」アプリのアクセシビリティ(製品やサービスの利用しやすさ)を向上したという事例があります。視覚に障害のある方でも、画面読み上げ機能によって、打刻や勤怠入力といった人事関連業務ができるようにしました。

その他にも、社内にいる多様なメンバーへのヒアリングをもとに、エンジニアがデータ分析をし、仮説検証を経てプロダクト改善に繋げている事例は多くあります。
——従業員がお互い遠慮してしまい、意見を出したり、気軽に質問をしたりすることを躊躇するケースはないのでしょうか。
freeeの従業員は、自分の考えを伝えたり、同僚から意見を求めたりする事が比較的多いです。

その理由は、当社が大切にしている「価値基準」があるからだと思います。ユーザーに本質的な価値を届けることを「マジ価値」と呼び、マジ価値に繋がる議論であれば、「マジ価値のもとに平等」という考え方をもって、部門や役職を問わず誰もが自由に意見を言える風土があります。
自分の考えを伝えることを遠慮してしまうような状況は作りたくはありません。
freeeが大切にする価値基準と「マジ価値」
freeeが大切にする価値基準と「マジ価値」
また、freeeでは創業以来、お互いの考えを「あえて、共有する」カルチャーも大切にしています。他のメンバーにはあまり関係がないかもしれないと思った内容でも、「マジ価値」が少しでも増える可能性があったり、お互い気持ちよく仕事ができたりするのであれば、どんどん共有していこうという行動指針です。社内では、略して「あえ共」と呼んでいます。

「あえ共」がしやすいような仕組みも設けています。先ほどご紹介した「よろず相談窓口」は、ダイバーシティ関連の窓口のほかに複数の相談窓口を設けていますし、気軽に意見を募る小さなイベントや、プロダクトの相談ができるオフィスアワーが毎週のように行われています。

こうした価値基準を全従業員がもっているので、深い繋がりがないメンバーとでも気軽に意見し合える雰囲気がありますね。
——マイノリティと呼ばれる方々の意見を吸い上げて、プロダクト改善などの行動に移すために、意識や工夫をされていることはありますか。
当社の場合は「マジ価値」が前提にあります。スモールビジネスに携わるすべての人が創造的な活動により時間を使えるようになるためには、多様な意見を取り入れ、プロダクト開発や改善に繋げていく必要があります。そのためにまずはfreeeの社内からもマイノリティが声を上げられる文化醸成がとても重要です。根底の考え方が揃っているからこそ、マイノリティの意見も受け止める姿勢が醸成されているのだと思います。

組織の多様性が高まるにつれ、進化のスピードが速くなった

——吉村さんのお話を伺って、ダイバーシティ推進はそれ自体が目的ではないのだと感じました。
そうですね。会社のミッションを実現するために必要な要素、かつ、なくてはならない要素です。DEIは多様である一方、「何でもあり」ではありません。

ダイバーシティ推進室を立ち上げた際、freeeにとってのダイバーシティとは何かを深く考えました。その結果、ダイバーシティの例外を明らかにすると、freeeにおけるDEIでやらなくてはいけないことがおのずと明確になると気づきました。ミッションの実現がfreeeの存在意義なので、すべての施策をミッションの実現を目的においた上で行うことにしました。

目的が曖昧なまま、「ダイバーシティは良いことだから、推進しないといけない」と思うと、施策を考えるのが逆に難しくなってしまうのかもしれません。DEIとは、自分と違う考え方を認める大変な作業です。それでも、freeeにとってはミッションや価値基準の実現に欠かせないことだと考えているからこそ、数々の施策を行っています。そう思うと、ダイバーシティの在り方は各社各様であるのが正しい姿なのではないでしょうか。
——ダイバーシティ推進室が発足してからの5年間における、自社の変化をどう捉えていますか。
多様な人が入社して従業員数は5年で約3倍になり、グループ会社も立ち上がるなど、組織や人材の様子は大きく変わりました。その一方で、ミッションなどの大切にすべき考え方は変わっていません。

この5年を振り返ると、従業員が他のメンバーから得る気づきがどんどん多くなり、プロダクトも組織も進化するスピードが速まっているように感じています。組織が大きくなるとスピードは鈍化するのかと思っていたのですが、いい意味で期待を裏切られています。やはり当社には多様性が必須であり、その重要度は今後増していくのだろうと思っているところです。
——今後の抱負をお聞かせください。
組織が大きくなったからこそ、これまで以上にマイノリティの声を吸い上げるよう意識しなければならないと思っています。さまざまな施策を行っているものの、これで十分だとは思っていませんし、理想とするDEIの姿には程遠いと感じています。

「スモールビジネスを、世界の主役に。」というミッション実現に向けて、一つひとつの課題に向き合いながら、ダイバーシティをより推進していきたいと思います。
取材先
フリー株式会社 採用兼ダイバーシティ推進室長 
吉村美音 さん
TEXT:御代貴子
EDITING:Indeed Japan + ノオト

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