従業員の国籍は100超!
言語や文化の壁を越える楽天のダイバーシティ経営
世界中に拠点を持ち、真のグローバルカンパニーを目指して多様性のある環境づくりを進めている楽天。およそ3.2万人の従業員のうち約2割が外国籍人材で、国籍数は100を超えるという同社では、言語や文化の壁を排除するためにどのような取り組みを行ってきたのでしょうか。
同社のコーポレートカルチャーディヴィジョン・エンプロイーエンゲージメント部の半澤幸太さん、同じくグループ人事統括部・採用育成部の外間祐子さんにお聞きしました。
同社のコーポレートカルチャーディヴィジョン・エンプロイーエンゲージメント部の半澤幸太さん、同じくグループ人事統括部・採用育成部の外間祐子さんにお聞きしました。
公開日:2023/07/14
社内公用語の英語化で得られた成果は?
――従業員の国籍数は100以上。こうした多様な人員構成は、どのような理念や取り組みによって進められてきたのでしょうか。
半澤:楽天グループでは「イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする」ことをミッションとして掲げてきました。そしてそれを実現するために、「グローバル イノベーション カンパニー」であり続けるというビジョンがあります。つまり世界中の皆さんをエンパワーメントするためには、我々がよりグローバルな視点を持つ必要があり、日本人だけで事業体を構成すべきではないという考え方なのです。
こうした方針のもと、自ずと外国籍人材が社内に増加し、いっそう社内で多様性が重視されるようになりました。社内公用語が英語に設定されたのもその潮流の一環です。
――御社が社内公用語を英語にすると発表したのは2010年のことでした。世間的にも大きな話題を呼びましたが、当時、社内に混乱はなかったのでしょうか?
半澤:私の入社前のことですが、その時点では英語が不得手な社員が少なくなかったため、困惑する社員もいたと聞いています。たとえば毎週行われる全体会議の朝会が、ある日を境に英語で実施されるようになり、困った人がいたようです。そのような状況を踏まえ、英語学習を支援するプログラムが複数用意されるようになりました。
外間:私が在籍しているグループ人事統括部が、まさしくそのサポートを担当する部署になります。新たな言語をマスターしなければならないのは従業員にとって負担ではありますが、長期的に見ればプラスに繋がるという側面も当然ありますから、比較的ポジティブに受け入れられて今日に至っています。
――社内公用語の英語化によって、どのような成果やメリットが得られましたか?
半澤:一番は情報の伝達スピードの向上でしょうか。国を跨いだコミュニケーションにおいても通訳を介する必要がないため、情報をタイムリーにシェアすることができます。私自身は楽天に入社して7年目になりますが、世界中の方々とスピーディーに意思疎通が図れることに当初は驚いたものです。
また、やり取りされる情報のクオリティ向上にも大きな影響を与えています。海外からの視点やアイデア、あるいは事例などを、翻訳を介さずダイレクトに得られるため、国内でのプロジェクトを進めていく上で、間違いなく有用であると実感しています。
多様性を担保するための5つのフォーカストピック
――社内に多様な人材が在籍していることで、言語だけでなく文化や風習、あるいは宗教など多方面で壁が生じるのではないかと思います。御社ではそうした壁を取り払うために、どのような対策を講じていますか。
外間:多様性の中には性別や国籍だけでなく、身近なところでは年齢や世代の違いも含まれます。そこで、人事的な研修においては、全社でeラーニングを実施したり、1on1での面談を行ったりすることで、個々の間にあるギャップを少しでも埋められるように尽力しています。
具体的には、「GENDER」、「FAMILY」、「LGBTQ+」、「CROSS CULTURE」、「PEOPLE WITH DISABILITIES」という5つのフォーカストピックを設定して、それぞれに特化したサポートを強化しています。当社にとって、互いのバックグラウンドを理解することは非常に重要なため、これらの指標を元に社内制度のアップデートや、認知・理解の向上を図っているのです。
――挙げていただいた5つのフォーカストピックは、まさしく御社だけでなく日本社会全体に当てはまるものだと感じます。それぞれに向けられたサポートには、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。
半澤:順にご説明します。まず「GENDER」については、毎年3月8日に設定されている国際女性デーに合わせて、従業員によるトークセッションを実施し、楽天で活躍する女性従業員との交流機会を創出しています。
次に「FAMILY」では、産休・育休から復職した女性従業員が安心して働けるよう、オフィス内に搾乳室を設けています。また、仕事と育児の両立を支援するために従業員専用の託児所「楽天ゴールデンキッズ」を設置しています。さらに、従業員の家族や友人を本社ビルに招く「ファミリーデー」を通して、当社グループへの理解を深めていただけるよう取り組んでいます。
従業員専用の託児所「楽天ゴールデンキッズ」(提供:楽天)
「CROSS CULTURE」に関しては、主に宗教的な事情に配慮した取り組みを行っています。たとえば、イスラム文化を持つ従業員へのサポート体制として、社内のカフェテリアでイスラム教の戒律で許されたハラル料理を提供したり、宗教や宗派を問わず誰でも利用できる祈祷室や、お祈り前に身を清めるための足洗い場を設置したりしています。
社内にはどんな宗派の人でも利用できる祈祷室が設置されている(提供:楽天)
――なるほど。こうしたサポート体制は、当事者からの声やニーズに基づいて設計されたものなのでしょうか?
外間:そうですね。当社では1on1を重視する土壌があり、困り事や悩みを抱えている従業員一人ひとりに対して、上長がしっかり把握できる体制が設けられています。キャリアプランの相談に乗る上で、個々の状況や条件に応じた業務配分、あるいは働き方をプランニングできる文化が根付いているんです。
実際に社内の声をヒアリングしてみても、これだけバックグラウンドの異なる人材が揃っていながらも、「働きやすさについては満足している」という声が多数届いています。何より、多言語、多文化がうまく共存していることで、むしろ自由に意見交換ができているという声は多いですね。
真のグローバルカンパニーを目指す上での課題
――多様な人材の働き方に適応するよう努めるなかで、日本人特有の文化に戸惑う外国籍人材も存在するのではないでしょうか。
外間:そうですね。日本人特有のノンバーバルな「察する」「気を使う」文化に対しては、「自分が把握しきれていない暗黙知(経験則や言語化できないルール)がチーム内に存在するのではないか」といった不安の声が実は少なくありません。そうした戸惑いをできるだけ解消するために、外国籍の人材や外国育ちの人材を対象に、日本の商習慣をテーマにしたワークショップを定期的に実施しています。
日本のビジネスシーンで頻出する“ホウレンソウ”に関しても、海外の習慣に慣れた人材からすると異質に見えるようですし、事を起こす前に“根回し”をする動きなども、同じく理解が及ばない行動のようです。こうした問題に関しては、「CROSS CULTURE」における取り組みのなかで、今後も引き続き改善策を講じていかなければならないでしょう。
――なるほど。いわゆる“お国柄”に対して共通の理解を求めるのは、簡単なことではなさそうですね。
半澤:そう思います。多様性の垣根を取り払うためにメッセージを発信しようとしても、日本人に向けた温度感に合わせてしまうと、地域や国籍によっては強すぎたり弱すぎたりして結果的に伝わらないことがありそうだと感じています。非常に難しいことではありますが、世界の潮流と日本の現状を正確に把握した上で、メッセージをチューニングしなければならないでしょう。
――約3万2000人の従業員に多様性への理解を求めることは、有意義な取り組みである反面、困難な道のりにも思えます。ここまでのプロセスで最も苦労された点は何でしょうか。
半澤:多様性という課題に対しては、興味のある層とそうではない層に二分されますので、我々がリーチできていない人たちもまだまだ大勢存在しています。そうした層に取り組みの重要性を認識してもらうためには、どのようにコミュニケーションしていくのが正解なのかについて、常に頭を悩ませ続けているポイントです。
――最後に、一連の取り組みによって楽天グループは今後どんな姿を目指していくのか教えてください。
半澤:楽天は、多様な視点、多様な価値観、多様な能力を備えた人々が働きやすい環境を創り出すことが、より良いサービスを生み出すイノベーションに繋がると考えています。それは「男女雇用比率を五分五分に持っていく」といったわかりやすい目標設定とは異なり、どのような人材であっても、一人ひとりが個性と特性を発揮しながら活躍できる環境を整えることを第一義に据えているのです。多様な人材が揃い、それぞれの個性を輝かせられるからこそ、同じように多様なお客様一人ひとりのニーズに寄り添った貢献の形が見出だせるのだと確信しています。
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