1on1とは?
上司と部下が1対1で、30分から1時間程度の時間をとって話をする場を指します。タスク確認やビジネス上の進捗確認ではなく、部下のやりたいことを引き出し、会社のミッションと紐づいている点を整理しながら対話を進めます。
1on1では、上司と部下がお互い同じ目線で、困っていることやうまくいっているポイントを確認し合います。上司と部下であってもフラットな関係性で対話するのが1on1の大きな特徴です。
◆1on1の目的
情報を共有してお互いを尊重しながら、気持ちよく働ける状態を作ることが1on1の目的です。1on1がうまくいけば、部下は個人としてやりたいことが実現でき、理想的な状態に近づきます。また、個人の軸と会社の軸をうまく結びつけながら成長できれば、結果として会社の業績アップや離職防止にもつながるでしょう。
◆「1on1」と「普通の面談」との違い
一般的な面談の場合、「評価する側」と「評価される側」といった上下関係が明確にあらわれます。しかし1on1は、お互い同じ目線でフラットに、困っていることや悩んでいることを引き出そうとする場です。
また、普通の面談では目の前の課題を解決しようと考えますが、1on1ではキャリアやビジョンなど中長期的な目標を設定します。
1on1のメリット
◆メンバーが自主的に動くようになる
1on1は、上司が部下に命令して動くのではなく、自ら考えて動くことを促す手段です。目標をすり合わせることにより、次のアクションが決まります。1on1を続けることで、部下は仕事がやりやすくなり、自主的に努力するようになるでしょう。
◆人事評価に対する納得感が生まれる
1on1でお互いの考えを知ることにより、部下は人事評価に対する納得感を得やすくなります。
◆組織全体のパフォーマンスが上がる
1on1は、時間はかかるものの、長く続けることで「何も言わなくても部下が主体的に動いてくれる」「組織のビジョンやミッションを深く理解してくれる」といった効果が得られます。結果として、組織全体のパフォーマンスが向上するでしょう。
1on1のデメリット
◆時間がかかる
仮に上司が10人の部下を受け持っており、1on1のために1人あたり1時間の設定だとすると、それだけで10時間のスケジュールが埋まってしまいます。実施頻度を変える、1回あたりの時間を短くする、事前にメールでやり取りする等の工夫はできるものの、一定の時間がかかってしまうことは避けられません。
◆気苦労が増える
上司は、部下の想いや考え方、キャリアビジョンなど深い部分と向き合うことになるため、想像以上に精神的な労力がかかります。
◆1on1のスキルを身に付けるのに時間がかかる
1on1は、ある程度のフォーマットはあるものの、属人的な要素が強いミーティングです。したがって上司側は、うまく進めるためのスキルを少しずつ磨いていくしかありません。
◆ピラミッド型の組織には馴染まない可能性がある
ピラミッド型の組織で仕事を進めている企業も少なくありません。ピラミッド型とは、トップに経営者を設置し、その下に権力が大きい順に部長、課長、係長、一般社員が置かれているようなトップダウン形式の組織です。
ピラミッド型組織において、フラットに話し合う1on1を導入すると、トップダウンの形式が取りにくくなりお互い働きづらくなってしまう可能性もあります。
1on1が「無駄だ」「意味がない」と言われてしまう理由
◆普通の業務ミーティングと同じような内容になってしまう
1on1は、相手の話に耳を傾けて質問したり提案したりしながら、内面にある答えや潜在能力を引き出すための場です。単に「指導をする場」「進捗確認をする場」になってしまうと、普通の業務ミーティングと同じような内容になり、1on1の意味が失われてしまいます。
◆すぐ効果が出ることを期待してしまう
1on1は、1~2カ月で効果が出るものではありません。1年以上の長い時間軸で内容や進め方を計画し、お互いを理解し合うことが必要です。すぐに効果が出ることを期待しすぎると、「無駄だ」と感じてしまうでしょう。
◆良い変化につながらない
1on1を長く続ければ、「部下の考え方が変わった」「自分の強みは○○だと気づいた」などの良い変化が表れるはずです。しかし、1on1を実施しても部下の態度や仕事の進め方に全く変化が見られないと、上司側は「やっても意味がない」と感じてしまいます。
もし1on1を長く続けても良い変化につながらない場合は、運用方法を見直したほうがいいでしょう。
効果的な運用をするために意識すべきポイント
◆上司側から心を開いて話す
最初に気を付けるべきポイントは、上司が自己開示をすることです。上司側から「1on1の目的は○○なので、こう進めていきましょう」、「私は○○についてはアドバイスできるけど、××の分野は苦手かもしれない」、「お互いが成長し合う場だから、本音で話しましょう」といった伝え方をすれば、部下も心を開きやすくなるでしょう。
◆できる限り対面して話す
最近はリモートでの1on1も増えているようですが、なるべく対面して話す方がいいでしょう。リモートと実際に会って話すのとでは、ちょっとした仕草や顔色、体の動きなどから得られる情報量が変わるはずです。
◆定例化し、リスケしない
1on1は「毎週○曜日の×時~」など定例化し、リスケ(開催の延期)を避けましょう。上司がリスケをすると、部下は「上司は1on1より自分の業務を優先した」「1on1の場はそれほど重要なものではない」と捉えてしまいます。1on1は、進捗確認のミーティングとは異なり、人と人が本音で向き合う場です。それを反故にされると、部下は「自分のことを軽んじられている」と思ってしまうかもしれません。
◆改善点や次のアクションを伝える
話し合いをする中で、「このやり方は変えた方がいい」「次は○○を目指そう」といった改善点やアクションプランを伝えましょう。雑談だけで終わってしまうと、次のアクションや変化に繋がりません。
◆実施頻度を上げて、時間を短くする
1on1の頻度は、週1回がベストだと考えます。最低でも、2週間に1度は場を設けるといいでしょう。また、同じ時間をかけるなら「隔週で1時間」より「週1回で30分」の実施がおすすめです。頻度を上げることで、最近の出来事や変化、気づきを忘れないうちに話すことができます。
業務時間内であれば、朝食やランチの時間を使うという手もあります。
◆人によって距離感や接し方を変える
社員の中には、「あまり本音を話したくない」「会社とは距離を置いて、最低限の成果だけ出しておこう」と考える人もいます。「Aさんは、早い段階から深く踏み込んで話す」「Bさんは浅い話から始めて、少しずつ深掘りしていく」など、メンバーによって距離感の取り方や接し方を変えることが重要です。ただし、特定のメンバーを特別扱いしているような誤解を生まないよう、上司から部下への対応として適切なやり取りを心がけましょう。
もし部下が中長期のキャリアについて話したがらない場合、「最近困っていることを教えて欲しい」「私が対応できることならフィードバックするよ」といったスタンスで話すなど、相手によって1on1におけるコミュニケーション方法を使い分けましょう。
<取材先>
core words株式会社
佐藤タカトシさん
2001年、大手人材企業に入社。11年間に渡り、大手自動車メーカー、大手素材メーカー、インターネット関連企業、流通・小売企業など、100社以上の採用ブランディング、採用コミュニケーションを支援。マネージャー、クリエイティブディレクターを務めたのち、2012年、大手ベンチャー企業に転職。採用チームに所属し、採用ブランディングとダイレクトリクルーティングをメインミッションとして活動。2015年7月、core wordsを設立。
TEXT:村中貴士




