人材育成とは? 目的や考え方、人材教育との違いを解説


企業が自社の人材育成に着手しようとした場合、あるいは見直しを図ろうとする場合、どのように進めていけばよいのでしょうか。そもそも人材育成とはなにか、どのように実施していけばよいのかなど人材育成の全体像について、立教大学経営学部助教の田中聡さんにお話をお聞きしました。

 
 

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そもそも人材育成とは


人材育成とは、企業が戦略目的を達成するために必要なスキル・能力・コンピテンシー(行動特性)を定め、これらの獲得のために従業員が学習するプロセスを促進・支援する活動と仕組みのことを指します。そのため、「育成」が主目的ではなく、あくまで企業の戦略の遂行や、事業の推進のための手段という考え方です。
 
企業が人材育成に着手する背景には、人手不足や働き方改革、働き方の多様性の広がりなど、社会の変化への対応があります。

 
 
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人材教育や人材開発との違いは?


人材育成に類する言葉で「人材教育」「人材開発」の単語も聞かれます。いずれも人材育成と定義に違いはなく、同義語として使用されています。
 
ただ、日本において「教育」というと、一方向的に教え伝えるというニュアンスがあるため、「育成」のほうが本人の性質や目指す目標に合った方法を取る印象があるといえます。

 
 

人材育成のステップ


人材育成に着手する場合、次のステップで考えていきます。
 
1.自社の戦略や将来的なビジョンを明確化する
この部分が曖昧になると、採用でミスマッチが生まれたり、社員が何を目指してよいのかわからず迷走してしまったりする可能性があります。すでに戦略を定めている企業も、定期的に見直してみることが大切です。
 
2.入社後の社員研修を行う
自社の目標を本人(社員)に知ってもらい、会社と本人とで目指すべきゴールを共有します。新卒社員の場合などは、社員研修の中で一般的なマナーなどの研修も行います。多くの会社ではこのステップは人事部門の教育研修担当者が担います。
 
3.各部門・部署において経験を積みながら育成する
配属後は、各部門・部署の成長のために業務経験を積み上げていきます。ここでは現場を取り仕切る上司が部下である本人と仕事を通じて育成を行うOJT(On the Job Training)を実施します。
 
4.定期的に上司と部下の相手で個別面談を行う
定期的に業務の進捗確認や人事評価について上司と部下で話し合います。3と4のステップの繰り返しが人材育成において重要な段階となるため、下記の点を掘り下げて可視化し、上司と本人が育成計画をすり合わせていきます。その際、部下側の成長目標を明確にすることがポイントです。

 

  • 現時点で、スキル等の観点で自分がどのレベルにいるか
  • 1年後はどんな自分になっていたいか
  • その目標を達成するためには何が必要か
  • 必要なスキルを得るためにはどのような方法が有効か


近年では、半年から1年に一度行われる人事評価面談とは別に、1カ月に1回など短いサイクルで上司と部下が業務についての困りごとや課題について面談する「1on1」(ワン・オン・ワン)なども、よりよい人材育成につながる手法として注目されています。

 
 
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人材育成の基本的フレーム


人材育成は、フレームワークや学習理論を活用することでより効率的・効果的に行えます。

 
 

◆経験学習理論


能力開発において、現場での経験が最も重要だという考え方があります。米国の研究者であるデイビッド・コルブ氏によって提唱された「経験学習理論」は、ビジネスにおいてすべての人に役立つともいわれている学習モデルです。下記の1~4のサイクルを繰り返すことで、人は学び、スパイラル状に成長していくと考えられています。
 
1.経験する
例:営業担当として、クライアントのコンペに参加するも、失注してしまった。
 
2.内省する(経験したことを振り返る)
例:なぜクライアントから高い評価を得られなかったのかを振り返った。
 
3.抽象化する(振り返った内容を言語化する)
例:クライアントの真のニーズを探るには、クライアントだけでなく、クライアントの先にあるエンドユーザーへのヒアリングが重要であることを学んだ。
 
4.別の場面に応用する
例:今回の教訓をもとに、次回のコンペでは、クライアントのエンドユーザーに対するヒアリングを実施した上で、提案内容を検討する

 
 

◆リフレクションサイクル


「経験学習理論」のサイクルに含まれている「内省」は、経験を生かして能力を向上させるために重要な要素です。「内省」を深めることによって、経験をさらに効果的に活かすことができるでしょう。
 
内省を効果的にすすめるプロセスは「リフレクティブ(reflective)サイクル」と呼ばれます。特に最初のステップとして「事実の記述」が重要です。
 
事実の記述とは「いつ、どこで、誰が、何をした」など、起こった「事実」を思い出し、正確に記述することです。これにより、経験を正確に内省することができます。
 
人は印象的な出来事や思い返したい記憶だけを手がかりに内省を行おうとしますが、それでは経験から効果的に学ぶことはできないので注意しましょう。
 
ただし、起こった出来事を正確に思い起こし、深く濃く振り返ることができようになるためには、相応のトレーニングが必要です。たとえば、「昨日はどのような1日だったか?」と自らに問いかけ、どれだけ深く事実や出来事を思い返すことができるか、というシンプルな訓練から始めてみることをおすすめします。

 
 

◆発達的挑戦課題


次に挙げる「発達的挑戦課題」の5つの経験を積むことで、マネージャーなどの管理職に必要なリーダーシップや問題解決などの能力を培うと考えられています。
 
1.不慣れな環境への異動経験
部署異動など、不慣れな環境に身を置くことで経験値を上げる。
 
2.高度な責任を伴う経験
大きなプロジェクトを任されるなど、今までになかった重い責任を背負う経験により、一皮むける。
 
3.権限がない中で関係性を構築する経験
たとえば新規事業部の立ち上げなど、社内においてこれまでの権限やリソースが使えない状況で、別部署の技術や人脈などの力を借りてミッションを遂行する経験。部署の垣根を超えた連携を経験し、より大きく成長する。
 
4.トラブルが多発する経験
予測できない、うまくいかない経験。トラブルを乗り越えることで失敗や逆境に負けない、問題解決能力が身につく。
 
5.変革する余地のある経験
現状に満足するのではなく、自ら変化を作り出す経験。環境変化に適応したり、組織に変革をもたらしたりする力がつく。

 
 

人材育成を実施する場合の注意点

 
 

◆人材育成の観点から面談をする


人事評価面談をはじめ、上司と部下の面談では、業務の進捗の確認や、一方的に企業側の目標を提示するだけにとどまるのではなく、部下本人の育成を促すことを第一の目的とします。上司と部下の間に信頼関係が築けていないと、せっかくの面談も実のないものになるケースが多々あります。上司は、日頃から良好なコミュニケーションが取れるように意識しましょう。

 
 

◆上司の負担を軽減する


管理職である上司がいわゆるプレイングマネージャーであり、自身の業務で手いっぱいで部下の育成どころではないというケースをよく耳にします。せっかく社員が入社しても成長機会が与えられず、育つ前に辞めてしまう悪循環を避けるには、上司の業務負担を調整することも重要です。

 

  • 上司の評価内容に「部下の育成」を組み込んで、成果に応じてインセンティブを与える
  • 既存のマネージャーとは別に人材育成専門のマネージャーのポストを作るなど、人材育成に取り組みやすい環境を作る


人手不足の中、即戦力をもとめてメンバー育成より優秀な人材の中途採用を優先したくなる気持ちもわかりますが、人材育成への積極的な投資は優秀な人材を採用する上でも有効です。まずは自社の人材について現状を見直してみましょう。

 
 
 

※記事内で取り上げた法令は2021年10月時点のものです。
 
<取材先>
立教大学経営学部助教 田中聡さん
東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。総合人材サービスの企業を経て、人と組織に関する調査研究・コンサルティング事業を専門とする企業の立ち上げに参画した後、2018年より現職。専門は、人材開発・チーム開発。主な著書に『経営人材育成論』『チームワーキング』など。
 
TEXT:宮永加奈子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト


 
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