コミュニケーションを改善し、社員の自発性を引き出す 「コーチング」を組織作りに生かすには


「コーチング」とは、会話を通して自ら問題に気づき、新たな視点を見出すことをサポートする人材育成や能力開発の手法です。企業では組織のコミュニケーションを改善し、チームワークを高め、業務の改善のきっかけにもなるとして管理職研修に導入する企業も増えています。コーチングをマネジメントに生かす方法について、プロコーチの谷口祥子(よしこ)さんにお聞きしました。

 
 

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会話を通じて社員の主体性を引き出す


――「コーチング」を学ぶことは企業の中間管理職にとても有用と聞きました。なぜでしょうか。
 
職場のマネジメントにコーチングを導入すると、いわゆる「指示待ち」タイプの部下が減り、自発的に考えて行動できる社員を増やすことができるからです。
 
――なぜコーチングを取り入れると社員が自発的になるのでしょうか。
 
コーチングは、相手より上に立って教えたり導いたりする指導法ではありません。相手の話をよく聞き、適宜効果的な問いかけを行うことで、その人自身が悩みや課題を解決する方法を発見できるようにするコミュニケーションの手法です。
 
売上が上がらない部下に「もっと訪問回数を増やせ」「提案方法を変えろ」と一方的に指導しても、なかなか成果は出ないものです。それどころか「すでにどの方法も試しているのに」と自分の努力を否定されたように感じて、モチベーションが下がってしまうかもしれません。
 
コーチングを取り入れると、部下に「もしあなたがお客様だったら、営業が何をしてくれたら契約したくなると思う?」という問いを投げかけることができます。すると「一緒になって会社を良くしようと考えてくれる人なら契約したくなる」などと解決策を考えられるようになります。問題の答えは部下自身が持っていると考え、本人がそれに気づけるようサポートする会話を行うことがコーチングです。
コーチング的な関わりを繰り返すことで、徐々に指示がなくとも自然と次のアクションを起こす社員に成長していくでしょう。
 
――社員が主体性を発揮しながら成長できるようになるのですね。
 
そうですね。部下の指導方法の改善のためにと管理職の研修にコーチングを取り入れる企業は多いのですが、部下への接し方はもちろん、管理職自身の能力も開花することがよくあります。
 
エネルギッシュにメンバーを引っ張っていくタイプのリーダーに比べて、控え目な性格の人は管理職を担うことに自信を持てないでいることがあります。コーチングは、人のプラスの面、長所に焦点をあてながら、問いを重ねて多様な考え方に気づくものです。先陣を切るタイプではない自分だからこそできるマネジメントや、部下との関わり方があることに気づき、前向きに管理職のポジションを務められるようになった人もいます。

 
 

正しい知識を身につけて実践を


――コーチングでは知識や技術を伝えるよりも「話を聞く(傾聴)」「質問する」ということが重視されているのでしょうか。
 
その通りです。コーチングでは、必ずしもサポートする側(質問する側)の人が相手よりも仕事やその業界に関する専門的な知識を持っている必要はないとされています。むしろ、専門知識に捉われない方が、業界やその会社で当然とされている事柄もストレートに質問できるという利点があります。
 
物事を“色眼鏡”で見ないで、ありのままに話を受け止め、質問することで、業務を改善するきっかけを引き出せるのも、コーチングが果たす役割の一つです。
 
――普段の会話を通して、自然に人や組織を変えていくことができるのですね。
 
コーチングの基本は「承認」です。コーチングの考えが浸透すると、社員どうしがお互いの存在を認め合う環境ができます。相手の話をよく聞けるようになるのでコミュニケーションも促進され、職場に活気も生まれます。
 
ベースに「承認」がない組織は、他者からの評価や批判ばかりを気にして社員が萎縮しがちです。苦しい状況になっても「再発防止にはどうすればよいか」「自分にも反省すべきところがあったのでは」と社員が前向きになれるのは、組織にお互いの考えを認め合う土壌があってこそでしょう。
 
――では、コーチングをどのように社内で取り入れていったらいいのでしょうか。
 
「話を聞いて、質問をするだけなら、今日からさっそく実行しよう」と思われるかもしれません。しかし、実際にやってみると、傾聴しているつもりでも自分の思う方向に部下を誘導するような質問や助言をしてしまいがちです。
 
「相手の話を共感して受け止める」「色眼鏡を外す」のは意外と難しいものです。コーチングに関する出版やセミナーを提供しているコーチはたくさんいます。自己流ではなく、まずはご自身が分かりやすいと感じるコーチから学び、理論やスキルを身につけてから職場で実践されることをおすすめします。

 
 
 

<取材先>
株式会社ビィハイブ 代表取締役 谷口祥子さん
2004年からコーチング事業を開始。「ほめ方の極意」研修をはじめ、経営者や管理職を対象にモチベーションアップ、ストレスマネジメントに関する講演・研修などを手がける。『図解入門ビジネス 最新 コーチングの手法と実践がよ~くわかる本』(秀和システム)、『あたりまえだけどなかなかできない ほめ方のルール』(明日香出版社)、『結果を出す人のほめ方の極意』(講談社)など著書多数。
 
TEXT:石黒好美
EDITING:Indeed Japan + 笹田理恵 + ノオト

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