リモートワークで組織デザインはどのように変化する?

リモート会議をする女性

新型コロナウイルスの影響により、企業では勤務形態を出社からリモートワークへとシフトする動きが広まっています。多様な働き方が求められている中でメリットも大きい反面、直接会う機会が減ることから組織を運営するうえで新たな課題も生まれています。
 
今後、企業の組織デザインはどのように変化していくのでしょうか。リモート環境における「職場」の在り方を研究するVirtual Workplace Lab.代表の神谷俊さんに伺いました。

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リモートワーク普及によって起きた変化とは

これまで多くの日本企業では、オフィスという対面できる場で働くことが主流でした。しかし、新型コロナウイルスの影響によってリモートワークの増加とともに、勤務時間も融通がきくようになりました。従来より「フレックスタイム」として始業や就業時間を自由に決められる企業もありましたが、出社の必要性がなくなったことでより活用しやすくなったのです。
つまり、リモートワークによって好きな場所から、好きな時間に働きやすくなりました。働き方の自由度が増した一方、これまでとは違った変化が起きています。

◆個人が担う「役割」が混在

オフィスでは“ビジネスパーソン”として働き、家に帰れば“親”として子育てをするように、個人の「役割」を切り分けることが可能でした。しかし、リモートワークで在宅勤務できるようになり、仕事とプライベートが混在するようになりました。
その結果、仕事と家庭の両立に葛藤を感じる「ワークファミリーコンフリクト」が発生しやすい状況になったのです。

◆コミュニケーションの「質」の変化

オフィスで働いているときは、周りにいる社員の会話や表情などから、感情・価値観・雰囲気などをキャッチでき、常に職場の現状が把握しやすい環境でした。しかし、リモートワークにより自宅で一人作業になると、組織の情報を簡単に得ることが難しくなりました。

◆コミュニケーションの「量」の変化

今までは、たとえば営業先からオフィスに帰ってくれば「今日はどうだった?」と声をかけられるなど、「雑談」が自然と生まれやすい環境でした。実はオフィスでのコミュニケーションの大部分は雑談であるともいわれています。リモートワークによりこれらが失われると、「社会的孤独感」を抱きやすくなります。
他の社員との関係が希薄になることで「何のために働いているだろう」と目的を見失ったり、「自分は本当に評価されているのか」など不安になる場合があります。とくに新入社員や若手社員は顕著です。

今後、組織デザインはどのように変わっていく?

「組織デザイン」とは、個々人が最高のパフォーマンスを発揮できるよう、業務やオフィスの環境などをデザインしていくことです。リモートワークの普及は今後、組織デザインにどのような影響を及ぼすのでしょうか。
 
はじめに、組織デザインの基本的な考え方は「分業」と「調整」を効果的・効率的に設計していくことです。社内の状況を見ながら、職務役割や階層・部署などを調整し、組織のパフォーマンスを高めていきます。しかし、個人が分散するリモート環境では社員の状況が見えにくくなってしまうため、この「分業」と「調整」が難しくなります。そのため、今までよりもさらに詳細な組織デザインが必要となるのです。
 
これからの組織デザインにおいては、マネージャーやリーダーなど“チームを束ねる層が重要な役割を担っていくことになるでしょう。リモート環境では、働ける時間や環境、場所が個人によってバラバラです。これをチームのリーダー層が、社員一人ひとりの状況に合わせて「分業」の仕方を考えていく必要があるのです。
 
たとえば「子どもがいる社員の業務量を見直す」など、個人の状況に合わせたマネジメントを行うことになります。
 
また、今まで以上に社員一人ひとりも率先してリーダー層に要望を伝えることが必要です。上からの指示を待つだけではなく、「自分の状況」や「チーム内で起こっていること」などを報告し、自ら目標を提示したり、チームメンバーのことを意識したりすることが求められるでしょう。

リモート環境の組織デザインは連携しやすい体制の見直しが重要

リモートワークによって、組織でのコミュニケーションや連携が今までよりも難しくなりました。
今回、新たにリモートワークを導入した企業も少なくありません。円滑に組織を運営するには、リモートワークによって起きた変化を理解し、最適な組織デザインを行う必要があります。社内の体制を見直し、社員が働きやすい環境づくりを模索しましょう。


<取材先>
Virtual Workplace Lab. 代表/株式会社エスノグラファー・代表取締役 神谷 俊さん
2016年株式会社エスノグラファー創業。企業や地域をフィールドに活動。定量調査では見出されない人間社会の有り様を紐解き、多数の組織開発・製品開発プロジェクトに貢献してきた。2020年4月からは、リモート環境における「職場」の在り方を研究する“Virtual Workplace Lab.(バーチャルワークプレイスラボ)”を設立。学術的な知見を基盤に「分断・分散」を前提に成立する組織社会の在り方を構想する。
 
TEXT:稲垣恵美
EDITING:Indeed Japan + 成瀬瑛理子 +ノオト

 
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