テレワーク導入で社内コミュニケーションにどんな問題が起きているのか


テレワークや在宅勤務が推進される世の中になり、1年が経とうとしています。働き方の急激な変化により、企業ではどのような問題が起きているのでしょうか。今回は、社内コミュニケーションについて、企業の生の声を聞いているキャリアコンサルタントが、各社の声を拾ってきました。

 
 

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テレワークや在宅勤務で叫ばれるコミュニケーション問題


突如訪れたコロナ禍。人事担当者は様々な問題に直面し、忙しい日々を送っているかと思います。社員の健康・安全を守るためのルール策定、新しい働き方に適応した人事制度の作成、テレワーク重視の業務フロー作りなど課題は山積みです。特に社内のコミュニケーション問題には苦労されているのではないでしょうか。
 
未知の状況であり、先が見えないからこそ、他社の状況を知りたいかと思います。キャリアコンサルとして規模や業種を問わず、他社から伺ってきたことを共有します。(注:各社の人事担当の方には、本記事の趣旨をお伝えし、企業名が特定されない範囲での公開との前提で実例を収集しています)

 
 

実際に社内ではどんな問題が起きているのか(企業の事例)


ケース1:「テレワーク中心になって、元々関係性が薄かった社員たちは、全くコミュニケーションを取らなくなりました」
 
これは多くの人事担当者が感じていることではないでしょうか。毎日同じ場所で働いていると、ふとしたきっかけで関係性が良くなることがあります。たとえば、「帰郷していたのでお土産です」と配られたお菓子を見て同郷だったことがわかり会話が生まれたとか、観光に行った場所だったので話が弾んだとか――。
毎日顔を合わせていると、思いもよらない瞬間にコミュニケーションが生まれることがあります。テレワーク中心になると、こうした会話が発生する確率は極めて低くなるでしょう。
 
ケース2:「若手社員が、上司や先輩に気軽に相談できなくなった」
 
これも複数の企業から聞いています。また、逆に「上司が部下に気軽に声をかけにくい」といった状況も起きているようで、上下間のコミュニケーションにも支障をきたしています。
特に深刻なのは、上司、つまり管理職の落ち込みようについてです。ある日本の大手老舗企業からは、「会社にいて部下の働きぶりを監視することが仕事だと思っていた管理職は、テレワークで仕事の成果を示すことができなく、自分の存在価値について真剣に頭を悩ませているようだ」との声があり、さらに大手外資系企業からも同様の声が挙がっています。
 
テレワーク中心となり、雇用形態が「メンバーシップ型」から「ジョブ型」へ移行しつつあると言われています。チームプレーでプロジェクトをこなす「メンバーシップ型」では監督やコーチ、キャプテンなど、対面でコミュニケーションを取り信頼関係を築きながらチームをまとめ、選手(部下)を引っ張る存在が必要でした。しかし「ジョブ型」となると、プロジェクトの達成に必要なタスクを部下に振って、スケジュール通りにタスクをこなしてもらう形式になります。これまでの対面コミュニケーションは不要になり、適切にタスク管理をできるシステムがあれば事足りる世の中に近づいていきます。当然ながら、管理職の役割は減るので、管理職のポスト数も減ることになります。
 
「コロナのせい、時代のせい」、はたしてそれで良いのでしょうか。「新しい働き方」になったからには、これまで社内コミュニケーションを支えてきた管理職の「新しい役割」を考える必要があります。

 
 

新しい社内コミュニケーションのために、管理職のトランジションを支える


キャリア理論の世界では「トランジション(転機)」という言葉があります。これまでの生活や考え方が変わってしまう機会と例えるとわかりやすいでしょうか。急激に訪れたコロナ禍において、世界規模で生活や考え方が変わり、管理職をはじめ全ての方々がトランジションの最中にあると言えます。
 
トランジションの研究について、世界的に有名なのはナンシー・K・シュロスバーグ。アメリカを代表する理論家であり実践家です。トランジションに直面した方々に対してのカウンセリングに必要なことの一つとして、「Situation」「Self」「Support」「Strategies」の頭文字を取った4Sでのアプローチを挙げています。

 

  1. 状況:Situation どのような状況なのか。それは自分で変えることができるのか、できないのか
  2. 自己:Self 現在の自分自身の力はどうなのか
  3. 支援:Support 周りからどのような協力を得ることができるのか
  4. 戦略:Strategies どのような戦略で転機を乗り切ろうと考えるか(乗り切る過程でストレスが生じるので、そのマネジメントも含めて)


今回のコロナ禍でいうと、特に「1.状況:Situation」で、その状況をポジティブに捉えているか、ネガティブに捉えているかが大切な要素になります。
 
実は「テレワーク導入後に社員のエンゲージメント調査をしたら、昨年より上がっていた。コロナ前は歓送迎会や忘年会、新年会、社員旅行、他スポーツ大会などエンゲージメントを高めるために社内行事に力を入れていたけど、その意味が分からなくなった」との声も寄せられています。また「テレワーク中心のワークフローになって業務効率は上がったし、家族との時間も増えたので、この生活を維持したい」という社員もいるようです。
 
人事担当者は、社員一人ひとりがテレワークの状況をどう思っているのかを把握し、それに対して、「2.自己:Self 部下の能力や業務遂行にあたり問題になること」「3.支援:Support 上司がどうサポートできるのか」「4.戦略:Strategies これらを踏まえて、部下がパフォーマンスを発揮できるよう、どう戦略を立てるのか」を管理職と一緒に考えましょう。そのように作業を進めることで、新しい管理職の働き方を創りだすきっかけになると考えています。
 
「管理職の人数はこんなにいらないよね」ではなく、管理職が主導し、新しい社内コミュニケーションを創り出していける体制を構築することが重要です。先の見えない時代だからこそ、これまで牽引してきた管理職が元気になり、新しい体制を創ることが、部下の希望につながるはずです。

 
 
 

TEXT:国家資格キャリアコンサルタント 戸田敏治
EDITING:Indeed Japan + ノオト

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