テレワークの求人数は138.6%増に
コロナ禍においてテレワークを導入する企業が急増しましたが、最近はコミュニケーション不足の懸念などから、以前の出社スタイルに戻す企業も多くあります。しかし、毎日の出社は通勤や職場などによる従業員の感染リスクを高めるため、新しい選択肢としてオンライン(テレワーク)とオフライン(出社)を組み合わせた「ハイブリッド」なワークスタイルが定着しつつあります。
実際、企業の「テレワーク」に関する求人数の割合は、どうなっているのでしょうか。Indeedの調査によると、「テレワーク」に関連した求人の割合は、4月に入ってから大きな伸びを示しており、2020年5月5日時点の「テレワーク関連についての求人数(※1)」は2020年1月1日時点の138.6%増となっています。
※1 Indeedがインターネット上からクローリングしたもの、およびIndeedに直接投稿された全求人情報のうち、「在宅勤務」「リモートワーク」「テレワーク」が含まれる求人数の割合を算出(2020年1月1日〜2020年5月5日)
景気減退期により、求人社数の全体数が減少傾向にあるので、実際の求人数は微増に止まっています。しかし、今後も企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)や働き方改革を背景に、求職者が生産性の高い多様な働き方を求める動きは変わらないはずです。テレワークが働き方の1つの選択肢として定着していくことになるでしょう。
求職者の「テレワーク」関心度も依然として高い
一方、求職者はどのくらい「テレワーク(在宅勤務)」に関心を抱いているのでしょうか。「テレワークに関する仕事検索数(※2)」の推移を調査すると、3月末から4月上旬にかけて検索数が急増。政府が東京都など7都道府県を対象に緊急事態宣言を発令した4月7日がピーク(1月1日時点の139.1%増)となりました。その後は減少傾向にありますが、それでも発令前の1月1日と比べると、66.3%増と高い水準を維持しています。
※2 Indeedにおける日本での全検索数のうち、「在宅」「リモートワーク」「テレワーク」の3つのキーワードを用いた検索数の割合を算出(2020年1月1日〜2020年5月5日)
コロナ禍の求人に入れておきたいキーワード
こうした機会を逃さないためにも、企業は「テレワーク」への対応を充実させていきましょう。
「テレワーク」は、一般社団法人日本テレワーク協会によると、「ICT(情報通信技術)を利用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」と定義されています。
また、「テレワーク」は働く場所によって、「在宅勤務」「モバイルワーク」「サテライトオフィス勤務」の3つに分類されています。
- 在宅勤務…自宅にいて、パソコンや電話、ファクスで会社と連絡をとる働き方
- モバイルワーク…顧客先での滞在時や移動中にパソコンや携帯電話を使う働き方
- サテライトオフィス勤務…勤務先以外のオフィススペースでパソコンなどを利用する働き方
それ以外には「リモートワーク」(オフィス以外の場所で勤務できる)や「フルリモート」(原則オフィス出社なしで働ける)などを採用している企業も多いです。
しかし、求職者は「オフィスに出社せずに、自宅で働く」意味として、これらの言葉を認識し、活用しているようです。求職者に自社の求人を検索してもらうためには、「テレワーク」だけでなく「リモートワーク」や「在宅勤務」などの検索されやすいキーワードを組み合わせて、求人情報に反映しましょう。
また、オフィス出勤がある企業の場合、「時差出勤」や「交替制出勤」など柔軟な働き方に対応した制度があれば、それも求職者へのアピールポイントになります。あわせて表記していきましょう。
コロナ前の求人情報のままでは、自社に合う人材を逃すことに
コロナ禍のような景気が減退した局面においては、従来であれば「安定性」「安定企業」といったキーワード検索が多くなるもの。今回のように「テレワーク」などの働き方に関するキーワード検索が増えているのは、これまでにない傾向だと思います。
新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、求職者は働き方とともに価値観や生活様式も大きく変わり、「テレワーク」ができるかどうかは、今や会社選びの1つの基準になってきています。そこに、環境の変化へ柔軟に対応する企業の姿勢や、社員の安全を本気で考えている企業の姿勢が表われていると求職者は感じているからです。
また、テレワークが可能になれば、採用募集のエリアが広がります。企業にとってはアプローチできる人材が増え、今まで採用難易度が高かった職種も、自社に合う人材を確保できるようになるかもしれません。
それゆえ、「テレワーク」を導入しているにも関わらず、コロナ前の求人情報をそのまま使い続けていると、採用のチャンスをみすみす逃してしまうことになりかねません。企業が今必要とする人材は、経験の有無1つとっても、コロナ前とは違ってきているのではないでしょうか。
売り手市場から買い手市場に潮目が変わり、自社に合う人材を採用しやすくなっています。今一度、求める人物像を整理して、「テレワーク」制度を契機に、会社の魅力を訴求し直してみてはいかがでしょうか。
TEXT:キャリアコンサルタント 西谷忠和
EDITING:Indeed Japan + ノオト