社員の力を引き出す会話術「コーチング」とは


「部下とのコミュニケーションがうまくいかない」「応援したいと思ってアドバイスをしても、あまり伝わっていないようだ」こんな悩みを持ったことはありませんか。何気ない日常会話や、普段のミーティングに取り入れることで職場のコミュニケーションが改善され、社員の力がより発揮できるようになると言われる「コーチング」という技術があります。コーチングを生かした組織のマネジメント研修などを手がける谷口祥子(よしこ)さんに、コーチングとは何かについて解説していただきました。

 
 

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会話を通じて「自ら答えを出す」ことをサポート


――「コーチング」とは、どんな技術なのですか。
 
たとえば新入社員など、業務の経験の少ない人に対して具体的な指示を出したり、知識を伝えたりすることがありますよね。こうして一方的に情報を教えることを「ティーチング」といいます。
 
似たアプローチに「コンサルティング」があります。コンサルタントは顧客となる法人や個人よりも、より高い専門性を持っていて、それを元にアドバイスするものです。
 
しかし、「コーチング」において「コーチ」は課題を抱えている人に対してできるだけ直接的なアドバイスや提案はせず、その人の話を「聴く」役割に徹することに時間を使います。
 
――話を聞くだけで、その人の問題を解決することができるのでしょうか。
 
あなたが、「最近、職場でこんなことを言われて、すごく腹が立って…」と友人に愚痴を聞いてもらっていたら「それはあなたにも問題があるんじゃない?〇〇してみたら?」などと言われて不快な思いをしたことはないでしょうか? その一方で、友人がただ何もアドバイスをしないで愚痴を聞いてくれているだけなのに、話しているうちになぜか「考えてみれば、私にも良くないところがあったな」と自分で気づいて悩みの解決方法を思いつくことはありませんか?
 
コーチングはこの後者の例のように、会話を通じてその人が自ら真の問題に気づき、解決の手立てを考えられるようになることをサポートする技術なのです。
 
人は誰しも「自発的に行動したい」という気持ちを持っています。そのため、仕事でつまずいている人に「こうしたら」と助言しても、「やる気を損なう命令」になってしまうことがあります。それでもアドバイスを受け入れ、問題が解決されればいいのですが、上手くいかなかった場合には「あの人の言うとおりにしたけどダメだった」と他人のせいにするばかりで、かえって問題の本質から意識が遠ざかってしまうこともあります。

 
 

「コーチング」は社員の自発性を促す


――何かを教えたり、命令したりすることなく、自ら気づいてもらうために、コーチングではどんな方法を用いるのでしょうか。
 
私はコーチングを「自問自答」をサポートする会話のスキルだと考えています。
 
たとえば、売上が上がらない営業マンに「最近、なかなか契約が決まらない」と言われたとき「セールストークを磨いてみたら」と、こちらから「答え」を提示していませんか。でも、もしかしたら相手はすでにトークの勉強を一生懸命していて、それでも成果が出なくて悩んでいるのかもしれません。
 
すぐに助言するのではなく、「そうなんですね、どうすれば契約が決まるでしょうね?」と問いかけるのがコーチングの考え方です。すると相手は立ち止まって考えますから「お客様よりも自分が話しすぎていたかもしれない」と気づいたりします。その気づきをこちらがそのまま受け入れて、肯定的に聞き続けていると「お客様の要望をきちんと聞けておらず一方的なセールストークになっていたのかも」と自発的に解決策を立てられるようになります。
 
――誰かに指示されたことではなく、自ら考えて出した結論だから、納得して行動することができるのですね。
 
新入社員など知識が足りない人には、コーチングの前提であってもアドバイスをすることはあります。ただ、助言や提案をするときに「こんな風にしたら、どうなると思いますか?」と結果をイメージしてもらい、相手が主体的に考え、行動できるよう心がけます。
 
管理職や、部下を持っている人は「自分が部署のメンバーを引っ張っていかなければならない」と気負ってしまうものです。しかし、リーダーが教えて、指示してチームを動かしていくよりも、メンバーの一人一人が自発的に考えて動く組織の方が、活力にあふれ新しい発想も生まれやすくなるのではないでしょうか。そんな組織作りにも、コーチングは有効です。
 
コーチングの土台にある考え方は「承認」です。どんな意見にもオープンに耳を傾けてもらえる、という安心感のある組織はコミュニケーションが活発になります。リーダーばかりが頑張らなくても、自然と前向きに仕事に取り組む社員が増えていくでしょう。

 
 
 

<取材先>
株式会社ビィハイブ 代表取締役 谷口祥子さん
2004年からコーチング事業を開始。「ほめ方の極意」研修をはじめ、、経営者や管理職を対象にモチベーションアップ、ストレスマネジメントに関する講演・研修などを手がける。『図解入門ビジネス 最新 コーチングの手法と実践がよ~くわかる本』(秀和システム)、『あたりまえだけどなかなかできない ほめ方のルール』(明日香出版社)、『結果を出す人のほめ方の極意』(講談社)など著書多数。
 
TEXT:石黒好美
EDITING:Indeed Japan + 笹田理恵 + ノオト

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