資格取得支援の目的
資格取得支援とは、業務上、必要な資格の取得を企業が金銭面でサポートする制度のことです。
労働者のスキルアップやモチベーションアップなどの人材育成、業務の効率化や生産性の向上などを目的に、福利厚生の一つとして取り入れられています。
資格取得支援のメリットとデメリット
資格取得支援のメリット・デメリットには以下が挙げられます。
◆資格取得支援のメリット
- 労働者の知識や能力、技術が向上する
- 労働者のモチベーションがアップする
- 上記によって、業務の効率や生産性が向上する
- 企業イメージがアップする
◆資格取得支援のデメリット
- 費用がかかる
- 支援制度の導入や運用面で、人事労務担当者の作業の手間がかかる
支援の方法と資格手当の目安
資格取得支援制度は、各企業が任意で取り入れている福利厚生の一つです。そのため、サポート方法や費用に決まりはありませんが、導入例として次のようなパターンがあります。
◆支援方法の例
A 資格の取得にかかる費用の一部、もしくは全部を負担
B 資格を取得した際のお祝い金・合格報奨金を支給
C 資格を取得した後、資格手当を支給
Aは資格の取得にかかった費用(受講費、教材費、受験料など)の一部、もしくは全部を企業が負担する方法です。また、試験に合格した際には受験料を企業が全額負担するといった条件を設定しているところもあります。とはいえ、一般的には、資格取得にかかる費用は労働者が負担するケースが多いといえるでしょう。
支援方法として多くの企業が取り入れているのが、Bのお祝い金・合格報奨金やCの資格手当の支給です。お祝い金・合格報奨金は、資格を取得した労働者に一時金として支払う支援金です。資格手当は、給与に上乗せして毎月支給します。
支給方法や支給額は資格の内容や難易度によって変わりますが、以下の範囲で支給している企業が多いようです。
- お祝い金・合格報奨金の目安……5,000円~200,000円
- 資格手当の目安……1,000円~50,000円
資格支援制度を導入する際の注意点
制度を導入する際には、あらかじめ条件を就業規則等に定めたり、支援する労働者との間に契約書を結んだりする必要があります。
規定を整備していないと、業務に直接関係のない資格取得の支援を招くなど、せっかくの支援が無駄になる可能性があります。資格取得支援の目的、対象資格の種類、支給方法、支給額などを明確にしてください。
また、費用以外の支援の程度も明文化しておくことをおすすめします。たとえば、勤務時間内の試験勉強の可否や、受験日が勤務時間内だった場合の対応方法なども定めておきましょう。
支援した労働者の退社を防ぐ方法
資格支援制度を導入し、支援をしたにもかかわらず、資格を取得した労働者がすぐに退社してしまったという話もあります。特に資格取得にかかる費用を企業が負担する場合、せっかくの支援が無駄にならないよう、あらかじめ労働者との間に条件を明記した契約書を結んでおくことが重要です。
条件は自由に設定することができますが、前述したAの資格の取得にかかる費用の一部、もしくは全部を負担する場合であれば「資格取得にかかった費用は労働者への貸し付けとする。ただし、合格してから2年間勤務した場合、貸し付けた費用の返済は免除する」といった内容です。
以上のような契約書を結ぶことで、支援した労働者の退社防止にもなるし、万が一すぐに退社してしまっても、費用返済を求める根拠になります。逆に契約書を結んでいないと、返済の申し立てをしても企業に勝ち目はありません。
資格取得支援は、企業にとって人材育成のための投資です。支援を無駄にしないための措置はもちろんですが、負担にならない程度の条件から導入することをおすすめします。
※記事内で取り上げた法令は2021年8月時点のものです。
<取材先>
社会保険労務士法人 堀下&パートナーズ 代表社員 堀下和紀さん
TEXT:塚本佳子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト