オンラインのメリットをどう生かす? 在宅ワークで営業職の新入社員を育てる方法


営業職は、自社の経営理念や商品・サービスについて詳しく知っておかなければなりません。しかし、在宅ワークを導入した場合、従来のオフィスワークで行われていたような新入社員の教育、研修が難しくなってしまいます。
 
オンラインで営業職の人材育成を行うためには、どうすればいいのでしょうか。在宅ワーク中の新入社員をうまく育てるポイントや、モチベーションを維持する方法について、専門家にお聞きしました。株式会社船井総合研究所 HR支援本部のシニア経営コンサルタント・宮花宙希さんが解説します。

 
 

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対面との違いは? 在宅ワークにおける人材育成の課題


――「在宅ワークを導入すると、営業職の人材育成が難しくなるのでは?」という不安があります。新人教育をオンラインで行う場合のメリット・デメリットを教えてください。
 
メリットとしては、動画を利用して教育しやすい点が挙げられます。営業のトーク例を動画で作成し、「お客様にはこう話しましょう」と説明したり、新入社員が話している内容を録画して上司にチェックしてもらったりするなど、動画+オンラインによって反復練習がしやすくなりました。また、「先輩が研修で話している動画を、新入社員が移動中にスマホで見て学ぶ」といった、すきま時間の有効活用ができます。
 
一方、「その場に居合わせて学ぶことができない」というデメリットもあります。従来の新人教育では、お客様との商談に同行し、先輩のトークを聞きながら学ぶケースが多いでしょう。「こう切り返すのか」「ここで語調を強くするのか」と、営業手法を肌で感じ取ることができます。その点でみると、動画やオンラインでは限界があるかもしれません。
 
――在宅ワークが広がっていくと、新人育成の面でどのような課題が生まれるでしょうか?
 
「企業文化の形成」と「コミュニケーション・人間関係」の2つが課題として挙げられます。企業文化とは、会社全体としての考え方や価値観、理念です。在宅ワークでは会社の理念がきちんと共有されず、なかなか浸透しづらい可能性があります。
 
コミュニケーションの部分は、上司との信頼関係はもちろん、他のメンバーとの関係性も考える必要があります。従来のオフィスワークであれば、初めてチームを組むとしても「社内で見かけたことがある」「以前に一度だけ挨拶をした」というレベルから始まるケースが多いはずです。まったく会話したことのない先輩から「オンラインで一緒に仕事してください」と言われても、新入社員がすぐに対応するのは難しいでしょう。
 
――たしかに、オンラインで信頼関係を構築するのは時間がかかるかもしれませんね。
 
もう一つ、在宅ワークでは社員のコンディションを把握しづらいという問題があります。従来のオフィスワークであれば、隣で仕事をしながら「Aさん、今日は元気がないな」と気づいたり、「体調が悪いの?」と声をかけたりできるでしょう。しかし、オンラインで打ち合わせをするだけだと、部下のコンディションを把握することが難しくなります。そこは在宅ワークのリスクの一つです。

 
 

インプットよりアウトプットが重要  オンラインで研修を行うときの注意点


――オンラインでの新人教育や研修は、どれくらい浸透しているのでしょうか。
 
新型コロナウイルスの影響で、Zoomなどオンラインツールを使った新人教育や研修は一気に広がりました。また、育成を効果的にするためのシステムやアプリが進化しています。
 
たとえば、お客様に対して商品説明している動画をスマホで撮影し、ネット上にアップロードできるシステムがあります。動画を社内で共有し、上司が「○分○秒あたりの説明が少し違う」と細かくコメントをつけてフィードバックするのです。上司が出張中であっても、空いた時間に動画を見て指導できるので、時間の有効活用に繋がります。
 
新人教育は、いかにして早く一人前に育てられるかがカギとなります。オンラインだと移動しなくて済むので、地方にいる内定者に対し早い段階からレクチャーすることもできるでしょう。
 
――入社前の段階から新人教育を進めておくということですね。では、オンライン研修を行う場合の注意点を教えてください。
 
新入社員が積極的に聞く環境を作るためには、受講上のルールをしっかり作っておく必要があります。たとえば1回あたり上限50分までとし、こまめに休憩を入れるなど、研修時間をうまく調整しましょう。2時間続けてオンライン研修となると、聞く側の集中力が続きません。
 
また、研修が終わったあとに、「参加者同士で意見・感想などをディスカッションしてください」「今日の話を聞いて、自分にどう生かせるかアンケートフォームに書いてください」といった、アウトプットの時間を設けることが大切です。インプットよりもアウトプットを重点的に考えながら、研修プログラムを作成してください。
 
――営業職というと、直接お客様の会社や自宅へ訪問するのが一般的ですが、商談自体もオンラインに移行しつつあるのでしょうか?
 
それは業界とエリアによって差があると思います。都心部では、中小企業を含めITリテラシーが高い傾向があるので、「打ち合わせはオンラインでいいですか?」とお客様側から望まれるケースも増えています。しかし地方では、「やったことがない」「手順がわからない」という声がまだまだ多いでしょう。
 
また、不動産など高額な商品を扱う企業では、オンライン商談が難しくなります。いくら「VRシステムを使えば、オンラインで部屋の内部を見られますよ」といっても、「やっぱり現場を見て決めたい」「直接話を聞かないと不安だ」となるケースが多いはずです。
 
オンラインで営業活動する機会が多いか少ないかによって、人材育成の方法を変えていく必要があるでしょう。

在宅ワークのイメージ
 
 

部下の異変に気づけるか? 在宅ワーク社員のモチベーションを維持する方法


――在宅ワークでは、仕事に対するモチベーションを維持することが難しいのではないかと思います。どのように対処すればいいのでしょうか?
 
在宅ワーク中の社員に対しては、仕事の習慣やリズムを作ってあげることが大切です。とくに若い新入社員の場合、毎日朝礼を行うなど、スムーズに仕事に入れるようセットしてあげてください。
 
また、終礼でその日の仕事内容について上司と部下が一緒に振り返ったり、業務日報を提出したりするのも有効です。仕事のリズムを管理することが、モチベーション維持に繋がります。
 
――なるほど。では、組織やチームとしての一体感はどのように醸成していけばいいのでしょうか。
 
社長や役員がしっかり講話をし、それに対してどう思うか話し合う場を設けることが重要です。「こういう方向に進むべきだ」とビジョンや方向性を示しながら、組織の一体感を高めていきましょう。
 
従業員が何千人、何万人といるような組織の場合、全国の支店や営業所から一か所に人を集めるのは大変です。しかしオンラインであれば、交通費や移動スケジュールの問題がなくなります。また、地方にいる一般社員と役員が話せる機会を設けることも難しくありません。オンラインならではのメリットをうまく活用しましょう。
 
――新型コロナウイルスの影響により、「仕事上でストレスを抱えている社員が増えているのではないか」という懸念があります。在宅ワークにおけるメンタルケアについては、どのように対処すればいいのでしょうか。
 
メンタルヘルス対策で重要なポイントは、雑談と相談です。気軽に雑談できる環境をつくり、コミュニケーションが取れていれば、部下に対し「最近なにか悩んでいるの?」と気遣うことができるでしょう。
 
逆に部下の立場で考えると、上司に相談しにくいケースがあるかもしれません。ホットラインのような形で、人事部に相談窓口を設けておくのも有効です。
 
社員のメンタルヘルスは、本人から申告してくれればそれほど大きな問題にはならないでしょう。一番良くないのは、まわりが誰も気づかないまま精神的に追い込まれてしまい、退職につながるケースです。そういった事態を防ぐためにも、普段からオンラインでのコミュニケーションをしっかり取り、異変を感じたらすぐに声をかけるなど細かい気遣いが大切です。

 
 
 

<取材先>
 

株式会社船井総合研究所 宮花宙希さん
株式会社船井総合研究所 HR支援本部
HRD支援部 シニア経営コンサルタント
宮花宙希さん
 
船井総合研究所に入社後、不動産ビジネス・通販ビジネス・自動車販売店のコンサルティングを手がけ、さまざまな規模の企業支援に携わる。現在は住宅・不動産部門の人財コンサルティングチームにて、主に評価制度を担当。人材採用から人を育てる評価制度構築支援などを手がけ、総合的なマネジメント強化による業績アップを得意としている。
 
船井総合研究所/人材開発コンサルティング ホームページ

https://hrd.funaisoken.co.jp/
 
 

TEXT:村中貴士
EDITING:Indeed Japan + ノオト

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