内定者や新入社員をどうフォローする? 体験型研修「ビジネスゲーム」の目的と効果

内定者や新入社員をどうフォローする? 体験型研修「ビジネスゲーム」の目的と効果

採用担当者の仕事は、求人に多数の応募者を集め、選考・面接するだけではありません。新卒採用や中途採用、さらにインターンシップを対象とした内定者研修(新人社員研修)を通して、集まった人材の見極めとフォローを実施することも重要な業務です。
 
そんな社員研修の現場で最近、体験型研修「ビジネスゲーム」に注目が集まっています。これは、手を動かしながらチームで行う集合研修で、積極的に導入する企業が増えているそうです。
 
ビジネスゲームにはどんなメリットがあるのでしょうか。その開発や研修事業を展開する株式会社HEART QUAKE(ハートクエイク)代表取締役の千葉順さんに、ビジネスゲームの活用例やその効果について話を聞きました。

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ビジネスゲームとは? その種類と内容

 ――会社の研修で「ゲーム」を行うのはユニークだと思いました。まずは「ビジネスゲーム」とは何なのか、詳しく教えてください。
 
社員教育や研修のために開発された、業務の一部を疑似体験できるシミュレーションゲームです。課題解決や思考整理を行うカードゲームやボードゲームなどを用意し、数人が1つのグループになってプレイします。
 
ゲームの内容によって細かなルールは変わってきますが、基本的には自分の意見を相手に伝えたり仲間と相談したりと、コミュニケーションを中心に進行するのが特徴ですね。最後にゲームのプロセスと結果を振り返ることでその日の学びが言語化され、日常業務への応用が期待できます。
 
――どんな場面で活用できるのでしょうか。
 
ゲーム内容により、幅広いシーンで使い分けができます。具体的には、選考過程や内定者のフォローアップ、新入社員研修といった新卒採用過程の各フェーズです。また、中途入社社員の研修や管理職研修、会計・財務といった専門職の研修など、社員のフォローアップにも活用いただいています。
 
――ボードゲームは数年前からブームになっていますが、ビジネス向けではどんなゲームタイトルがあるのでしょう?
 
たとえば、内定者研修や懇親会でよく使われるのは、気軽にできる謎解きゲーム『汚れた企画書の謎』です。コーヒーをこぼして一部が読めなくなってしまった企画書について、断片的なヒントをもとに全容を解明していきます。5〜6名のチームで協力し、ひらめき系やロジック系など様々なタイプの謎を解くことで、一体感や達成感を得られるようになります。
 

『汚れた企画書の謎』ゲームセット『汚れた企画書の謎』ゲームセット
 
新入社員によくおすすめしているボードゲームは、こちらの『財務の虎』。プレイヤーが経営者になりきり、商品(チップ)を仕入れて顧客に販売するシミュレーションゲームです。4ラウンド実施し、利益剰余金が一番多い人が優勝となります。貸借対照表や損益計算書など、ゲームを通じて初歩的な会計・財務知識を学ぶことが目的です。
 

『財務の虎』ゲームセット『財務の虎』ゲームセット

 
このほか、アイスブレイク(初対面の人同士の緊張を解きほぐすこと)を目的とするゲームや、仕事とストレスの両方をマネジメントするゲームなど、目的別のゲームを多数用意しています。

 

ビジネスゲームのメリットと得られる効果

 ――ビジネスゲームを活用することで、どんな効果が期待できるでしょうか。
 
参加者の主体的な取り組みを促すことができます。研修と聞くと、受講者の中には「面倒だな」と感じる人や、「自分の仕事には役立たないだろう」と考える人もいるでしょう。ビジネスゲームは研修である以前にゲーム性の高いコンテンツです。そうした教材を使うことで研修のハードルが下がります。選考のプロセスで使う場合は、より自然な形で応募者の思考や人柄を知ることができるでしょう。
 
さらに、ビジネスゲームを活用することで研修の質が高まります。ゲームにはそれぞれ目的がありますから、判断力や論理的な思考力、協調性など、研修で重視したいポイントに合うゲームを選ぶことで、狙った効果を生み出せます。たとえば、経営や財務に特化したシミュレーションゲームは、これから取り組む業務の全体像を把握するのに役立つでしょう。
 
――チームで行う点も特徴的ですね。
 
そうですね。「みんなで何かをする」という経験によって、チームビルディング効果が期待できます。チームビルディングとは、多様な仲間と関わりながら主体的に組織をつくること。あまり面識のない人同士でも、体験型の研修を通して良いチームを作るために必要な意識が培われます。
 
また、他の人と意見を交わしたり相談したりすることで、一通りの意思決定プロセスを体験できます。自分の思考だけではなく、他人の言動から学べることは少なくありません。
 
――研修を企画する人事採用担当者にとっては、どのようなメリットがあるでしょうか。
 
まずは外部講師を確保する必要がないため、企画から実施までをスピーディーに進めることができます。1回のゲーム時間は30分から長くて3時間なので、社員の拘束時間が少なく済むでしょう。
 
研修内容が運営者の力量によって左右されにくい点も特徴です。たとえば弊社の場合、数十回以上のテストプレイや他社への導入実績があるビジネスゲームを揃えています。講師の話術などに頼らなくても、コンテンツの質や面白さが担保されているため、安心して使うことができます。
 
さらに、コスト面でも優位性があります。ゲームで使用するカードや冒頭のゲーム説明で使うスライドなど、一通りのキットをレンタルする必要はありますが、外部講師を招くコストに比べると割安になるはずです。

 

研修によって生まれる「相互理解」と「チームビルディング」

 ――どうして昨今、ビジネスゲームのような体験型学習に注目が集まっているのでしょうか。
 
世の中が変化するスピードがどんどん加速しているからです。新しいテクノロジーや価値観が次々に生まれる時代だからこそ、社員は「教わる」姿勢より自ら「学ぶ」姿勢が必要になります。
 
学習環境も日々大きく変化しています。従来の集合研修は「多くの社員に必要な知識をインプットする場」でしたが、最近では外部の教育機関やサービスが充実し、知識の伝達だけならeラーニング(インターネットを利用した学習教材)で十分担保できるようになりました。
 
また、業務の専門化が進み、同じ職場の従業員でも部署が異なると必要な知識が全く違うということも珍しくありません。そんな状況で、あえて社員を集めて研修を行うなら、それ相応の意味を持たせる必要があります。
 
――社員研修は、単に業務に関するノウハウを教えるための場ではなくなってきた、ということですね。今後の社員研修にはどんな役割が期待されるのでしょうか。
 
社員研修の意味を新しく位置づけるなら、2つの可能性があります。1つは、広く社員同士が顔を合わせる機会になること。デジタル化が進み、直接顔を合わせて話さなくてもオンラインで業務を進められる職場は今後ますます増えるでしょう。研修の場は、今後長い付き合いになる同僚をお互いに理解し合う場になるはずです。
 
もう1つは、チームビルディング。その場に集まった人と一緒に何かする体験を通して、他者への理解が深まります。また、多数決や妥協ではない合意形成のプロセスについて、ゲームを通して体験することは、実際の業務でも大いに役立つはずです。

 
 
 

<取材先>
株式会社HEART QUAKE 代表取締役 千葉順さん
https://heart-quake.com
1982年生まれ、神奈川県出身。株式会社ワークスアプリケーションズでシステムエンジニアとして会計システムの開発に従事。その後、独立し2010年10月に同社を設立。企業向けのITスキル研修やビジネスゲームの開発・研修企画・運営を行う。

 
TEXT:森夏紀/ノオト
EDITING:Indeed Japan + ノオト

 
 

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