広がる「成果型」昇給の導入 「一律型」との違いやメリット・デメリットを解説

談笑する若い社員たち

新型コロナウイルス感染症を契機に、多くの企業で社内制度の見直しが進んでいます。その一つが、「昇給」を含めた賃金制度です。
 
トヨタ自動車は2021年春より、「一律型」の定期昇給を廃止し、「成果型」のみに変更することを発表しました。今後、こうした変化が広がりを見せていくと推測されます。
 
そもそも昇給とは何なのか、一律型と成果型の違いや、それぞれのメリット・デメリットなどについて、堀下社会保険労務士事務所・代表の堀下和紀さんに伺いました。

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昇給とは。「定期昇給」と「ベースアップ」の違い

「昇給」とは、従業員の賃金が増額される社内制度のことです。法律上の定めはないため、昇給の条件は企業ごとに自由に設定することができます。昇給にはいくつか種類がありますが、多くの企業は「定期昇給」を導入しています。
 
定期昇給とは、毎年決まった時期に行われる昇給のことです。昇給する回数や時期は企業によって異なりますが、年1回が一般的です。企業ごとに定められた年齢、勤続年数、職務上の昇格など、「個人の要素」に応じて行われるため、従業員によって昇給率は異なります。
 
定期昇給と混同されやすいのが「ベースアップ」です。ベースアップも賃金を上げる制度の一つですが、アップ率は「会社の業績状況」に応じて決定されます。全員がもれなく同率・同額で賃金のベースがアップする仕組みです。

 
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定期昇給の種類

定期昇給には、個人の成績とは関係なく昇給が行われる「一律型」と、個人の成績に応じて昇給が行われる「成果型」があります。どちらか一方ではなく、二つを組み合わせた混合型を取り入れている企業が多いようです。
 
一律型は、一般的には年齢や勤続年数などによって賃金がアップします。従業員によって昇給率は変化するものの、決まったタイミングで自動的に、全員に昇給のチャンスがあります。いわゆる「年功序列型賃金」と呼ばれる制度です。
 
一方、成果型は事業主や人事が個人の働き(成果)に応じて評価し、昇給率を決定します。成果型のみを導入している企業の場合、人によっては定期昇給がゼロということもあり得ます。

「一律型」と「成果型」のメリット・デメリット

一律型にも成果型にも、それぞれメリットとデメリットがあります。

◆一律型のメリット

長期的な展望で人材育成ができる点です。従業員は目先の評価に左右されることなく、安心して業務に取り組むことができるからです。

◆一律型のデメリット

成果を出せなくても給料が上がるため、従業員によっては努力を怠る人も出てきます。年齢や勤続年数が上がるほど昇給率も上がるシステムの場合、ベテラン社員というだけで昇給率が高くなるので、若い社員からは不満が出やすいといえるでしょう。

◆成果型のメリット

基本的に自分が頑張った分だけ賃金に反映されるので、社員のモチベーションアップにつながります。その結果、企業の業績アップにも結びつきやすいとされています。年齢や経験に左右されることなく実力評価になるため、優秀な人材の確保にも寄与します。

◆成果型のデメリット

明確な評価基準を設けないと、評価の真偽について従業員から不平不満が起こる可能性があります。
 
また、成果型は実力に応じて昇給や昇格が短いスパンで判断されるため、従業員の定着率が低下し、長期的な人材育成にはデメリットに働く可能性があります。そのほか、社員格差が生じてチームワーク作業に支障が出ることも考えられます。

 
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今後の昇給のかたちとは

働き方改革や新型コロナウイルスの影響により、今後は一律型の定期昇給を見直し、成果型の定期昇給のみに切り替える企業は増えていくかもしれません。
 
「終身雇用の時代は終わった」といわれるようになって久しい昨今、昇給においても、自動的にアップするという考えではなく、成果に応じた報酬へとシフトチェンジが図られています。
 
前述したように、どちらにもメリットもあれば、デメリットもあります。成果が出るまでに時間がかかる職種や業種、チームワークが何よりも重要な職種や業種など、昇給制度を見直す際には、自社の特徴に照らし合わせることも大切です。


※記事内で取り上げた法令は2021年2月時点のものです。
 
<取材先>
堀下社会保険労務士事務所 代表 堀下和紀さん
 
TEXT:塚本佳子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト

 
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