ユニークな採用広告はメリットがある? 実施するときの注意点

資料を持って話し合う2人の女性

インパクトのある採用広告を出すことによって、人材獲得を狙うケースがあります。企業がユニークな採用広告を打ち出すのにはどのようなワケがあるのでしょうか。大手企業の採用・人事責任者を経験してきた株式会社人材研究所・代表の曽和利光さんに伺いました。

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ユニークな採用広告が登場するワケ

企業が採用を行う際に、ユニークで目を引く広告を出すケースが見受けられます。多くの場合、注目度を高めて応募者数を増やすといった自社アピールの一環であると考えられます。インパクトや話題を提供し、求職者に魅力的な企業に見られることによって会社としての価値を高めるための戦略です。
 
一見すると、ユニークな採用広告はターゲットを狭めるように思われるかもしれませんが、通常よりも多くの求職者の目に留まりやすくなります。また、求職者だけでなく取引先や消費者にも広くリーチするので、採用以外の効果も実は期待できるのです。

話題となった採用広告の事例

過去の広告でいえば、数年前に自動車会社が出した中途採用のポスターが例に挙げられます。ポスターの掲出先は、電機メーカーやIT系企業の研究施設が多い沿線の10駅です。自動運転をはじめとした開発が進む自動車業界では、エンジニアの需要が高まっています。そこでIT系エンジニアの人材を確保するため、沿線に勤務している社員にターゲットを絞りました。
 
ここで注目されたのが、ポスターにあるキャッチコピーです。「ネットやスマホの会社のエンジニアと、もっといいクルマをつくりたい」「えっ!? あの電気機器メーカーにお勤めなんですか! それならぜひ弊社にきませんか」など駅ごとにコピーを変え、特定企業のエンジニア社員にむけて呼びかけました。そうした“攻めの広告”はSNSで拡散され、大きな話題となったのです。
 
このポスターは話題作りとして成功したばかりか、“転職潜在層”にもアプローチできて成果にもつながりました。
 
また、ある企業では以前、実際に上司となる人を広告に出したほか、退職率や社内の男女比、平均年齢、有給消化率、果ては前年度の採用試験の応募者数と面接に進んだ人数まで、あらゆる数字を公表したことで話題になりました。
 
ある種の“透明性”がある広告は当時こそ画期的でしたが、今は多くの企業で実践できる例であるように思います。

採用広告を検討する上でのポイント

ユニークで目を引く採用広告は、採用意識の高い企業ほど行ってきたことです。しかしながら、今後はクリエイティブ重視からメッセージ重視の採用広告へ変化していくでしょう。
 
ユニークな広告を出すことで、一時的に応募者は増えるかもしれません。しかし、人口減少で求職者の絶対数が減っている中で、応募者数だけが増える広告は採用側にとってあまりメリットがないといえるでしょう。採用広告は奇をてらったりクリエイティブに凝ったりするよりも、求職者とマッチするためのメッセージを重視した情報の開示が求められています。
 
採用において、これからは“RJP(リアリスティック ジョブ プレビュー)”を備えた方法が主流になると考えられます。RJPとは、仕事や組織の魅力だけでなく欠点も含めた情報を伝えることです。採用広告で企業の良い面と悪い面を見せようとすると、注目を集めるだけのクリエイティブは邪魔になってしまいます。
 
もしもユニークな採用広告を打ち出すならば、いかに適切な人材を集めるか、そしてそのための情報提供をすることが重要です。あくまでも企業とマッチする人材が振り向くような仕掛けを重視すべきでしょう。注目を集めて応募者数を増やすのではなく、濃度の高い広告づくりを念頭に置かねばなりません。

コロナ禍こそ、採用活動を成功させるチャンス?

コロナ禍では採用活動のオンライン化も進み、応募者がインターネットを通じて採用広告に触れる機会が増えています。プロモーションやマーケティングの観点からいっても、ユーザーがこれほど真剣に自社を見てくれる機会はほかにありません。費用対効果が高く、会社のPRができる時期であるともいえます。
 
だからこそ、採用広告はクリエイティブだけを重視するのではなく、適切な情報開示が必要です。今後の厳しい人材獲得競争の時代を行き抜くためにも、買い手市場の今こそ、真摯な態度で採用活動にのぞむべきではないでしょうか。

 

<取材先>
人材研究所 代表取締役社長 曽和 利光さん
京都大学卒業後、リクルートに入社。人事部のゼネラルマネージャーとして培ったスキル・ノウハウと、2万人の面接経験を融合しワンランク上の人材を採用する独自手法を確立。その後、大手生命保険会社などで一貫して人事領域で活躍し、2011年に株式会社人材研究所設立。著書に『就活「後ろ倒し」の衝撃』(東洋経済新聞社)などがある。
 
TEXT:渡部あきこ
EDITING:Indeed Japan + 成瀬瑛理子 + ノオト

 
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