企業が「人材ポートフォリオ」を作るメリットとは
人材ポートフォリオに決まったフォーマットは存在しませんが、見た目のわかりやすさから、縦軸と横軸からなる分布グラフで作成されることが多いでしょう。例えば、縦軸を専門職に就く「スペシャリスト」に、横軸を「年齢」に設定した場合、そこに自社の人員構成をあてはめてみると、組織としてのバランスをわかりやすく可視化することができます。
グラフ化されたポートフォリオを見て初めて、「うちの会社は意外と専門スキルを持つ人材が不足しているな」とか、「事務方の人員が多すぎるのではないか」、あるいは「このままでは5年後、10年後のマネジメント層が不足しそうだ」などといった課題に気づくこともあるはずです。つまり人材ポートフォリオとは、事業を効率化し、経営を安定させるための人事計画をサポートするツールと言えます。
どのような要素で構成するべきか
人材の配置バランスを適正化することは、適材適所につながり、組織全体の生産力向上に通じます。では、どのような評価軸で人材ポートフォリオを作成するべきかというと、まずは組織として目指す方向や目的を明確にしなければなりません。
例えば男女比や年齢層の分布をまとめることで、自社を構成する人材の多様性が明確に示されます。もし高齢層の多い組織であれば、どのくらいの時期にどの程度の退職金が発生するのか、ポートフォリオから予測することが可能です。
あるいは、正規雇用と非正規雇用のバランスや、語学力やプログラミングスキルといった専門領域別に構成をまとめたりするなどして、組織の実態把握に活用するのもいいでしょう。人材の構成バランスをチェックすることは、今後の人事異動や採用計画を検討する上で、大切な指標になるはずです。
つまり人材ポートフォリオとは、自社にとって不足している戦力やこれから必要になる戦力を検討する際に用いられるもので、浮き彫りになった課題をもとに、企業は新規採用や育成などの対策を講じることになります。
人材ポートフォリオの運用方法
技術革新やグローバル化によって、変化の激しい時代がつづいています。そのため、企業を取り巻く環境も日ごとに変化し、それに対応できる柔軟性が企業には求められます。その意味で、自社のどこに(部門や役職)、どのような人材が(スキルや適性)、どのくらい(人数)在籍しているのか、常に細かく把握しておくことは重要でしょう。
人材ポートフォリオは必ずしも売上アップや事業拡大といったポジティブな目的のためだけに用いられるものではありません。経営効率のテコ入れを行う際には、組織の改善計画を検討する材料にもなるはずです。
なお、人材ポートフォリオの作成・運用にあたっては、コンサルタントなどの専門家に頼る必要はないでしょう。まずは人事部門が把握しているデータをフル活用して、グラフ化してみてください。
こうしたポートフォリオの活用に長けた組織では、3軸、4軸でのグラフ化を活用するケースもありますが、情報が煩雑になるため、最初のうちは2軸でのポートフォリオ作成をおすすめします。
<取材先>
アルドーニ株式会社・代表取締役 永見昌彦さん
外資系コンサルティングファームなどで人事コンサルタントとして勤務した後、事業会社(ラグジュアリーブランド持株会社)で人事企画担当マネージャーとして人材開発・人事システム・人事企画を兼務。事業会社、コンサルティングファームの両面から人事に20年携わった経験を活かして、2016年にフリーランス人事プランナー・コンサルタントとして独立。2018年に法人化。現在、人事全般のプランニング・コンサルティング・実務に携わっている。
TEXT:友清哲
EDITING:Indeed Japan + ミノシマタカコ + ノオト