希望する人材像を定める
採用活動を始める前に、今回の採用でどんな人材を求めるのかを明確にしましょう。希望する人材像を定めておけば、採用基準がブレることなく選考できます。
まずは、自社や自店舗の理念や業務内容がどのようなものか、そのためにはどんなスキルを持つ人材が社内に必要なのかを書き出します。次に、これだけは譲れないという優先的な条件と、譲歩できる条件を整理してみましょう。これによって、いま求める人材像が明確に浮かび上がります。
労働条件を決める
人を雇用する際、事業者は労働者に労働条件を伝える義務があります。ですから、採用を行う前に主な条件を整理しておきましょう。
◆募集時点での明示が必須となる労働条件
- 業務内容
- 契約期間(期間を定めるのかどうか、定める場合の満了時期)
- 試用期間
- 就業場所(勤務地)
- 就業時間(始業および終業時刻、休憩時間、休日、残業の有無)
- 賃金(試用期間で増減がある場合はその金額を併記)
- 加入できる保険
- (派遣労働者として雇用する場合)雇用形態
- 募集者の氏名または名称(〇〇株式会社など)
◆労働条件の変更
募集開始時から採用後の労働条件通知書を渡すまでの間に労働条件を変更する場合は、その内容をできるだけすみやかに求職者に明示する必要があります。変更の明示が必要になるのは、以下のような場合です。
- 「当初の明示」と異なる内容の労働条件を提示する場合
例)募集時:時給1,500円 → 時給1,300円
- 「当初の明示」の範囲内で特定された労働条件を提示する場合
例)募集時:時給1,000円〜1,500円 → 時給1,300円
- 「当初の明示」で定めていた労働条件を削除する場合
例)募集時:時給1,300円、〇〇手当1,000円/回 → 時給1,300円
- 「当初の明示」で定めていなかった労働条件を新たに明示する場合
例)募集時:時給1,300円 → 時給1,300円、〇〇手当1,000円/回
明示方法は、変更前・変更後の内容を比べながら確認できるよう、書面で伝えるのが望ましいでしょう。労働条件通知書の変更箇所に下線を引いたり、着色や脚注をつけたりといった方法でも構いません。
就業規則を決める
常時10人以上の労働者を雇用する会社は、必ず就業規則を作成しなければなりません。また、採用後に就業規則の作成や変更をする場合は、従業員の意見を聞く義務があります。
◆就業規則に必ず記載すること
- 始業および終業の時刻、休憩時間、休日、休暇
- (交替制勤務の場合)就業時転換に関する事項
- 賃金に関する事項
- 退職に関する事項
採用・雇用にかかるコストを計算する
新しい従業員を雇い入れる際は、採用時はもちろん採用後も継続的に費用がかかります。事前にコストを計算し、希望する採用人数や労働条件に無理がないかを確認しましょう。また、雇い入れの条件次第では助成金を受け取ることができます。
◆従業員を雇い入れるときの主なコスト
- 採用にかかる費用
求人広告の作成費や掲載費、求人担当者の人件費など。
- 給料
募集地域の給与水準を参考に、職務内容や責任範囲に見合う額を設定。
- 保険料
社会保険は「健康保険」「厚生年金保険」の2種類、労働保険は「雇用保険」「労災保険」の2種類があり、それぞれ加入義務の条件が異なる。このうち、「労災保険」はアルバイト従業員を含む全ての労働者に適用され、保険料は事業主が全額負担。ほか3つの保険は、労働条件により適用範囲が定められており、保険料は事業主と労働者が折半する。
- 教育費用
新人研修の費用や教育を担当する従業員の人件費など。 - 福利厚生
備品や制服などの費用、場合によっては食事や社員寮などの費用。
人材の採用は計画的に
中小企業や個人経営店であれば、採用担当者が他の業務を兼務しながら採用活動を進めることは珍しくありません。入念に事前準備をしておけば、実際に応募者とやり取りする段階での作業がスムーズになります。また、人材採用に関するルールをよく確認し、求職者に対して誠実で魅力的な応募先となるよう心がけましょう。
※記事内で取り上げた法令は2019年12月時点のものです。
参考文献:
厚生労働省『人を雇う時のルール』
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudouseisaku/chushoukigyou/koyou_rule.html
厚生労働省『労働者を募集する企業の皆様へ』
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000171017_1.pdf