人手不足のいま、採用計画で押さえておきたい5つのポイント

人手不足のいま、採用計画で押さえておきたい5つのポイント

2019年『人手不足』関連倒産」(調査:東京商工リサーチ)によると、2019年の「人手不足」関連倒産は426件で、2013年の調査開始以来、過去最多を記録しました。要因の内訳を見ると、1位は代表者や幹部役員の死亡・病気入院・引退などによる「後継者難」(270件)で、全体の6割強。2位は人手の確保がままならず事業の継続に支障が生じた「求人難」(78件)、さらに「従業員退職」「人件費高騰」が続きました。
 
倒産にまで至らなくとも、採用難による事業の遅れや停滞・中止といった話も耳にします。採用活動の成否が、企業活動の継続・成長を左右すると言っても過言ではありません。採用活動を成功に導く「採用計画」のポイントをまとめてみましょう。

求人を掲載

採用計画とは何か

採用計画を簡単に定義すると、「企業の事業を進めるために、必要な人材を外部調達する計画」です。最近では、採用後の定着支援や育成計画までを含めて採用計画とする企業や担当者も増えてきています。というのも、採用したら任務完了でなく、その人材を戦力化できて初めて「企業の事業を進めるための人材を調達できたとみなす」という考え方が広まってきたからです。
 
以上を踏まえつつ、採用計画の基本を整理してみましょう。以下の5項目を明確にする手法とタスクをまとめ、スケジュールを組んだものが採用計画になります。

 
(1)自社の事業とはなにか
(2)自社の事業に必要な人材とはどのような人物か
(3)その人物をどのような方法で採用するか
(4)その人物をどうやって職場に定着させるか
(5)その人物をいかに迅速に戦力化するか

 

(1)から(3)までを採用計画の範囲とするか、(4)(5)を含んだ範囲とするかは、企業によって異なります。初めて採用計画を立てる場合は、この採用計画の範囲を事前に確認しておきましょう。

採用計画が必要な理由

採用活動を成功に導くために、採用計画が必要な理由を考えてみます。

◆時代背景

買い手市場(採用側、つまり企業が有利な状態)であれば、行き当たりばったりでも人を採用することはできました。各部門長から「新規採用」の依頼を受け、求人媒体に広告を出し、応募者の書類審査をして面接へ。数名まで候補者を絞ったから、あとは部門長のご判断――。1990年代後半から2010年代前半くらいまでは、企業にとって幸せな時代だったかもしれません。
 
しかし、数年ほど前から立場が入れ替わりました。明らかな売り手市場(応募側、つまり求職者が有利な状態)になったのです。しかもこれまでは、買い手市場と売り手市場の移り変わりは景気変動に左右されていましたが、少子化の時代はそもそも人、特に若手が極めて少ない時代に突入します。優秀な若手人材を求める限り、企業は売り手市場のなかで戦い続けるしかありません。「行き当たりばったり」が通じなくなる以上、綿密な採用計画の立案が必要とされます。

◆社内の協力を得やすくする

これからの採用活動では、社内の全面的な協力が必須になってきています。「第36回 ワークス大卒求人倍率調査(2020年卒)」(調査:リクルートワークス研究所)によると、従業員300人未満の中小企業カテゴリーにおいて、2020年3月卒業予定の大学生・大学院生の求人倍率は8.62倍。学生1人に対し、8.62件の求人案件があるという結果が出ました。これは大変な売り手市場です。
 
その一方、同調査結果には「インターンシップをはじめとするさまざまな施策が功を奏し、中小企業を希望する学生が増えた」との報告がありました。これは、年々厳しさを増す採用難を乗り越えるために、中小企業が全社を挙げて採用活動に取り組み始めた成果だと言えるでしょう。採用担当者は全社の協力を得るために、採用活動の概要や計画をわかりやすくまとめた採用計画を共有し、関係各所から事前に理解を得る活動を行うことが重要です。

◆採用チャンスを広げる

ここ数年、リファラル採用と呼ばれる、社員から求職中の知人を紹介してもらう仕組みが注目されています。自社はどんな人材を求めているのか、具体的な採用計画を社員に共有することによって、社員による紹介率の向上が見込まれます。ただし、採用計画によっては新規事業の概要が競合他社に知られてしまうことがあるので、社内向けとはいえ共有する情報の内容には注意が必要です。
 
また、採用計画を立てることによって、どんな人材を求めているのかが明確になっているはずです。これが明確であればあるほど、外部協力会社、たとえば求人媒体や人材紹介会社などから、採用に関する適切なアドバイスやサポートを受けやすくなりチャンスが広がります。

採用計画の立て方

前述の(1)から(3)、または(4)(5)までを含めた採用計画を立てる場合、目的を明確にするための手法・タスクをまとめ、スケジュールを組んだものが採用計画の基本になります。初めて採用計画を立てる場合は、どこから手をつけたらよいのか迷うでしょう。まずは新規採用を要求してくる部署に赴き、「既存のリソースで調整できない理由」を徹底的にヒアリングするところから始めましょう。
 
ここで一つ注意していただきたいことがあります。「なぜ既存のリソースで調整できないんですか」と、単刀直入に聞いてはいけません。悪意はなくとも、部門長にとっては現場を知らない採用担当者に「既存のリソースで調整できない、能力不足と見られている」と捉えられるケースがあるからです。
 
採用活動を成功に導くためには、該当部署と採用担当者との連携が非常に重要です。採用計画を丁寧にわかりやすく作成するとともに、あくまで該当部署をお客様として気を使うくらいの対応を心がけましょう。これが結果的に功を奏します。
 
「既存のリソースで調整できない理由」を徹底的にヒアリングすることで、「(1)自社の事業とはなにか」について、自身が再確認できるだけでなく、現場視点で情報を発信することができます。よりリアルな求人情報となるでしょう。また「(2)自社の事業に必要な人材とはどのような人物か」も知ることができます。既存のリソースで調整できない理由を突き詰めていけば不足している能力がわかり、それを補完できる人材が「必要な人材像」になるからです。
 
「(3)その人物をどのような方法で採用するか」については、求人広告を出す媒体や手法などを選定し、スケジューリングを行うのが主な作業になります。外部業者にサポートしてもらうことも可能な作業ですので、不慣れな場合や忙しい場合は外部業者の力を借りましょう。
 
「(4)その人物をどうやって職場に定着させるか」「(5)その人物をいかに迅速に戦力化するか」については、すべての方が扱う範囲ではないので今回は割愛します。

採用計画を立てて、採用難に負けない体制を構築しよう

繰り返しとなりますが、採用計画を成否に導くのは「既存のリソースで調整できない理由」を現場で徹底的にヒアリングし、「必要な人材像」を明確化することです。逆にこれを曖昧にすると、たとえ買い手市場であってもうまく採用できません。
 
ひと昔前に比べて採用担当者の業務は増えています。求人広告を出すにしても、複数の媒体を扱うようになってきました。さらに自社の公式サイトを整えたり、先輩の声といったコンテンツを増やすために社内を取材して回ったりと、採用担当者は多忙な毎日を送っているかと思います。
 
採用計画を立てるのは大変ですが、わかりやすく作れば作るほど、周りからの協力を得やすくなります。ひとりで抱え込むことなく、全社で採用難に立ち向かえる体制を構築し、採用計画を立ててください。

 

参考文献:
株式会社東京商工リサーチ「2019年『人手不足』関連倒産」
https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20200109_01.html
リクルートワークス研究所「第36回 ワークス大卒求人倍率調査(2020年卒)」
https://www.recruit.co.jp/newsroom/pdf/20190424_01.pdf
 

TEXT:国家資格キャリアコンサルタント 戸田敏治
EDITING:Indeed Japan + ノオト

 
“マンガで解説 Indeedで求人をはじめよう! ダウンロードはこちら" 

求人を掲載
準備はできましたか?求人を掲載

*ここに掲載されている内容は、情報提供のみを目的としています。Indeed は就職斡旋業者でも法的アドバイスを提供する企業でもありません。Indeed は、求人内容に関する一切の責任を負わず、また、ここに掲載されている情報は求人広告のパフォーマンスを保証するものでもありません。