採用計画書以上に大切なのは、求める人物像の言語化と共有
結論からいえば、経営側と人事担当者が共通認識をもてる規模感・環境の場合、採用計画書は必要ありません。ただし、その場合にも求める人物像はきちんと言語化しておいた方が良いでしょう。
たとえば、採用基準を「礼儀正しい人」と定めても、何をもって「礼儀正しい」とするかは人によって異なります。「会社説明会や面接に来たときに自分から挨拶をする」といった、具体的な行動まで落とし込んだ方が面接評価のズレが起きにくくなります。
求める人物像を言語化し、共有することが採用計画書の作成以上に大切なのです。
採用したい人物像を完璧な人にしない
ただし、採用したい人物像が“完璧な人”になっていないか注意してください。「主体性があって、発想力に富んでいて、チームワークも発揮できる」といったマルチな人材はなかなかいないでしょう。
人物像を考えるときは、主体性や発想力、チームワークといった求める能力をまず洗い出します。そのうえで、Aさんの発想力は10点満点中5点、Bさんの場合は8点などと、在籍している社員を採点してみましょう。実際の社員に点数をつけることで評価者に共通の基準ができ、求職者に対する評価のズレが起きにくくなります。
また、上記の方法は会社のポテンシャルにあった人材を採用しやすくなるメリットもあります。たとえば在籍している社員よりもはるかに優秀な人材を採用してしまうと、すぐに辞めてしまったり、社員とのギャップが激しすぎて軋轢が生まれてしまったりする可能性があります。採用する人の能力値はあくまで経験則ですが、在籍する社員の1.2倍程度までを目安にすると良いでしょう。
採用計画書を作成しなくとも、データの蓄積と分析は必要
多くの中小企業では、採用計画書を作成せずに「求人広告を出して説明会を実施し、数回の面接を経て採用する」といった基本のプロセスに沿った採用活動を行っています。たしかに手順通りに行えば、人を採用することはできます。しかし、やみくもに採用活動を行ってしまうと今回の反省点を次年度以降に改善することは難しいでしょう。
たとえば、説明会の時期はいつが最適だったのかを振り返りたければ、申し込みの人数や参加人数などから分析する必要があります。
採用したい人物像が社内で明確になっていれば、必ずしも採用計画書を作る必要はありません。しかし、今後の採用を成功させるためにも、採用にかかわるデータはまとめておくことをおすすめします。すぐにデータを分析できるよう、学生から送られてきた履歴書から必要な情報を抽出しておくことも重要です。
採用計画は短期的に行うのではなく、3年程度の中期的な見通しをもって行うことが有効です。手探りの1年目から改善を少しずつ積み重ねることで、4年目からはより自社の理想にマッチした人材を採用できるようになるでしょう。
<取材先>
採用コンサルタント/アナリスト 谷出 正直さん
新卒で大手人材紹介会社に入社。子会社への出向を含め、新卒採用支援事業に約11年間携わる。独立後、フリーランスとして企業の採用コンサルティングや採用アナリストとして活動。新卒採用に関する情報、ノウハウの収集や発信、共有の仕組み、人のつながり作りに強みを持つ。メディアへの情報提供やコラム連載、記事の寄稿、企業や大学でのセミナーの講師、人事・経営者向けの勉強会・交流会の主催、オリジナルのメルマガの配信などを行う。
TEXT: 佐々木ののか
EDITING:Indeed Japan + 成瀬瑛理子 +ノオト