コロナ禍でも人材募集を積極的に行う企業の特徴

新型コロナウイルスの感染拡大の影響は企業の採用活動にも大きな影響を及ぼし、採用を取りやめるケースも見受けられます。そんな中でも積極的に人材募集を行っている企業にはどのような特徴があるのでしょうか。また、コロナ禍における採用活動に求められることや、企業側が注意すべき点はあるのでしょうか。大手企業の採用・人事責任者を経験してきた株式会社人材研究所・代表の曽和利光さんに伺いました。

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現在の採用市場の状況とは?

2020年9月の有効求人倍率は1.03倍と、前月の8月を0.01ポイント、前年の9月を0.54ポイント下回りました(厚生労働省調べ)。これは新型コロナウイルス感染症が世界的に広まり始めた1月から9カ月連続の下落で、依然として雇用情勢は厳しいと言わざるを得ません。
 
ただし、経済の状況を見るとリーマンショック後は、東京商工リサーチの調査によると倒産件数が年間で約1万5,000件あったのに対し、2020年の上半期は約4,000件にとどまっており、しかも前年とほぼ変わりません。仮に2020年の倒産件数が上半期の倍になったとしても、リーマンショック時の件数には及びません。
採用に関しても、リーマンショック時は新卒採用すらストップする流れが多業界にわたってあり、5年間は買い手市場が続きましたが、コロナ禍においてはそこまでの急激な落ち込みにはならないと考えられます。大手企業は採用数を多少減らしたとしても、全面的に新卒採用をストップするような声はほとんど聞きません。
 
一方、学生や転職者のモチベーションは大きく変化しそうです。不安な心理が働き、新卒者1人あたりがエントリーする企業数は増加することが予想されます。しかし、これは求職者の総数が増えたのではなく、あくまで求人の応募数が増えるだけなので、いざ採用しても内定辞退の嵐になるでしょう。
 
端的にいえば企業の“モテ期”が来たようなものなので、ぬか喜びせず、いかに適切な人材を呼びこむ情報提供をしていくかが重要になります。

積極的に人材募集を行っている企業の特徴

ただ、ソーシャルディスタンスや感染拡大防止が求められ、観光や旅行、エンタメなど人を集めることで収益を上げてきたような、いわば“コロナ直撃”業種は今なお苦境に立たされています。
一方で、ECやデリバリー、ゲーム、ガジェット関係などはこれまでにない特需の中にあり、金融の大元締めを直撃したリーマンショックと比べて、経済における影響が回復するのにそれほど時間はかからないでしょう。
 
とくに流通や食品、医療、建築といった人々の暮らしを司るインフラ系企業は、コロナ禍を契機にその存在感を増しています。いずれもこれまで求人を出してもなかなか人材が集まりにくかった業種ですが、他業種が採用に慎重になる今も積極的に募集を続けています。

コロナ禍でも積極的に人材募集を行うべき?

コロナ禍での収益減は多くの企業が経験したことと思います。中には、状況をふまえ採用自体を見送る企業もあるでしょう。しかし、仮に業績が戻りつつあるようであれば、人材募集はむしろ積極的に行うべきといえます。そこには、コロナ以前の「少子高齢化」という構造的な問題があります。
 
ここ数年は働き方改革や定年延長といった政策が進み、労働者人口は女性を中心に増加傾向にありました。これにより人手不足の状況は避けられていたものの、今後は若い世代の働き手も少なくなり、ましてやコロナ禍で外国人労働者、とくに高度人材はなおさら採用しにくい時代となっています。
 
リーマンショック後に採用活動を行わなかったため、30代半ばの中堅層が手薄になっていることに頭を悩ませている企業ならばなおさら、ここで採用しなければ数年後にまた同じ状況になるのは目に見えています。
 
感染拡大が収束する目途の立たない中、企業は採用に消極的になっているかもしれません。しかし、現段階では経済状況の急激な落ち込みは見られないため、企業側は長期的な視点で採用を考えることが重要です。需要が高まっている業界に限らず、基本的には採用を進めることが結果として企業にとって成功につながるといえるでしょう。


<取材先>
人材研究所 代表取締役社長 曽和 利光さん
京都大学卒業後、リクルートに入社。人事部のゼネラルマネージャーとして培ったスキル・ノウハウと、2万人の面接経験を融合しワンランク上の人材を採用する独自手法を確立。その後、大手生命保険会社などで一貫して人事領域で活躍し、2011年に株式会社人材研究所設立。著書に『就活「後ろ倒し」の衝撃』(東洋経済新聞社)などがある。


参考:
厚生労働省『平成 29 年版 労働経済の分析 イノベーションの促進とワーク・ライフ・バランスの実現に向けた課題』
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/17/dl/17-1-1-1_02.pdf
帝国データバンク『2020年度上半期(4-9月)の倒産件数は3956件、2004年度下半期以来の4000件割れ』
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000176.000043465.html


TEXT:渡部あきこ
EDITING:Indeed Japan + 成瀬瑛理子 + ノオト

 
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