事業縮小に伴い、人手不足を実感する企業は減少した
新型コロナウイルスの影響で、事業を縮小している企業が増えています。必要な人材の数も減るため、人手不足よりもリストラを検討しなければいけない企業の話を聞く機会が増えているのが現状です。とくに対面で接客するスタッフを多く雇用していた外食産業や一部の観光業は厳しい選択を迫られています。
一方、ECサイトやWebメディアなどIT関連は右肩上がりの業績で、人手不足を実感している企業も多くなっている印象があります。エンジニアやSEO・Webマーケティングの知識がある人材は、ますます重宝される予想です。
バブル崩壊後やリーマンショック時とは異なり、全ての業界や企業が不景気に見舞われたのではなく、業界や企業によってバラつきが出ているのが特徴と思われます。
求人倍率が下がっている間に、積極採用するのも有効
不景気の時期は、どうしても企業は採用を控えてしまいがちです。しかし、求人倍率が下がっている現在は、これまでの売り手市場から買い手市場へとシフトしています。つまり企業にとっては人を採用しやすい絶好の機会ともいえます。
中には、不景気のときこそ優秀な人材を積極的に採用する企業も存在します。慢性的な人手不足に悩まされている場合、求人倍率が下がっている今こそ、採用に注力してみるのも一案です。
人手不足でなくても、採用を続けた方が良い
差し迫った人手不足を感じていない場合、採用自体を取り止めてしまうケースもあるでしょう。しかし、中長期的に見ると、企業にとってあまり良い施策とはいえないとも考えられます。
これまで様々な企業のコンサルティングに携わる中で、新卒で入社した社員が、新しく入社してきた後輩を指導することで成長するケースを多く目にしてきました。後輩から頼られたり、仕事を教えたりする中で、先輩としての自覚や知識を身につけていく部分もあるものです。つまり後輩が入ってこなければ、社員の自立を促すのが難しいともいえるでしょう。採用を取り止めてしまうと、社員を育成できない要因にもつながるのです。
また、採用を行わない期間が長く続くと、組織のバランスが崩れてしまいます。たとえば、40代と20代のメンバーだけの組織では意思の疎通が難しい面があります。中堅の社員も加え、バランスよく構成するのが理想でしょう。
バブル崩壊後、企業が採用を一気に控えたために、組織のバランスが崩れたことは今でも語り継がれる失敗例の一つです。業界によって状況は異なりますが、基本的には採用活動を継続させることを提案します。経営体力のある企業はコロナ禍でも積極的に採用を行い、“afterコロナ”を見据えることが重要です。
<取材先>
採用コンサルタント/アナリスト 谷出 正直さん
新卒で大手人材会社に入社。子会社への出向を含め、新卒採用支援事業に約11年間携わる。独立後、フリーランスとして企業の採用コンサルティングや採用アナリストとして活動。新卒採用に関する情報、ノウハウの収集や発信、共有の仕組み、人のつながり作りに強みを持つ。メディアへの情報提供やコラム連載、記事の寄稿、企業や大学でのセミナーの講師、人事・経営者向けの勉強会・交流会の主催、オリジナルのメルマガの配信などを行う。
TEXT: 佐々木ののか
EDITING:Indeed Japan + 成瀬瑛理子 + ノオト



