コロナ禍で社会人2〜4年目が悩んでいる? 若手社員のキャリアをどう支援するか


若手社員は会社の未来を担うマネージャーやリーダー候補。長い採用活動で、やっと出会えた人材であり大切に育てたい存在です。そのような中、突然訪れたコロナ禍。彼ら彼女らのキャリアをどう支援したらよいのでしょうか?キャリア理論の中から参考になる一例を挙げます。

 
 

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「ニューノーマル」な社会で若手世代がおかれている状況とは


コロナ禍において「新しい働き方」や「ニューノーマル」などの言葉が次々と生まれました。働き方に対する今までの常識が覆り、2020年は戸惑いの多い1年を過ごしたかと思います。
 
特に、2020年に社会人1年目から3年目を迎えた若手社員ら(2021年には社会人2年目から4年目になる世代)の戸惑いはかなりのものだったと想像しています。この世代は具体的にどんな状況に置かれているのでしょうか。まずは、2020年のコロナ禍に社会人としてデビューを果たし、2021年に2年目を迎える社員から見ていきましょう。

 
 

◆社会人2年目


この年次の方々は、突然のコロナ禍のあおりを受け、入社後すぐに在宅での新入社員研修やテレワークを強いられた方が多い世代です。中小企業の人事担当者からは、「新しい社内制度の構築などに追われ、十分な教育をすることはできなかった」との声も聞きます。
 
「名刺交換の仕方」や、「取引先に訪問する時には、入り口でコートを脱ぐ」といった社会人としての基本的なマナーですら十分に伝えられていないケースもあるそうです。学ぶ機会がなかったのですから、彼ら彼女らに責任はありません。社会人の振る舞いとして何が身についていて、何が身についていないのか、再度確認して企業側が支援することが必要でしょう。

 
 

◆社会人3〜4年目


次は、幅が広くなりますが、2021年に社会人3〜4年目を迎える社員です。
 
この年次の方々の特徴は、右肩下がりしか知らない世代であることです。日本経済の歴史を参考にすると、バブル崩壊後、2000年前後に発生したネットバブルもすぐに崩壊、その後もリーマンショックや自然災害が次々に発生。暗い社会状況を幼い頃からみていた世代で、右肩上がりの希望に満ちた社会を知らないのです。そのため自分はどのように社会人としてキャリアを築いていけば良いのか、今後のキャリア形成に迷いが多い世代と言えるかもしれません。
 
さらに社会人2〜4年目の社員は今、コロナ禍で入社してきた新卒社員を先輩として手助けする一方で、オンラインツールが苦手な上の世代をデジタルに詳しい年代としてフォローする……なんてケースも。新しい業務形態に戸惑いながら周囲のサポート業務にも振り回され、疲弊する若手社員も少なくないと感じています。
 
このような不透明な時代の中で、自分のキャリアはどうなっていくのかと、若手社員の不安は募ります。会社にとっては貴重な次世代のリーダー達です。自社で前向きにキャリアを形成できるよう、支援が必要になります。
 
そのようなときに、キャリア支援の世界で利用している一つの理論が、キャリアアンカーです。

 
 

仕事への自分の価値観、キャリアアンカーを知ってもらう


キャリアアンカーという言葉をご存知な方も多いでしょう。マサチューセッツ工科大学ビジネススクールの組織心理者、エドガー・ヘンリー・シャイン博士が提唱した言葉で、「自身が仕事をしていくうえで譲れない最も大切な価値観」を指します。キャリア教育や人事の世界では有名な言葉なので耳にした方も多いでしょう。
 
キャリアアンカーは8つに分類されています。
 
1. 専門・職能的(能力)
自分の専門性や技術が高まることに魅力を感じる
 
2. 全般管理(能力)
大中小、規模を問わずチームを動かすことに魅力を感じる
 
3. 自律・独立
自分のやり方で仕事を進めていくことに魅力を感じる
 
4. 保障・安定
経済的に安全で確実な職場に魅力を感じる
 
5. 起業家的創造性
必ずしも起業することだけではない。新規事業開拓など新しいことに魅力を感じる
 
6. 奉仕・社会献身
組織や世の中を良いものにする仕事に魅力を感じる
 
7. 純粋な挑戦
解決困難と思われていたプロジェクトに挑戦することに魅力を感じる
 
8. 生活様式
仕事と家庭、趣味など生活自体をトータルに考え充実を求めることに魅力を感じる
 
自分のキャリアに不安を抱く若手社員には、まず自分がどのキャリアアンカーの傾向に近い価値観を持っているのか知ってもらう。加えて、その価値観をもとに人事担当者がキャリア形成のヒントとなるような助言をすることができれば、若手社員の悩みが少しは軽くなると考えています。

 
 

キャリアアンカーの診断方法と使い道


若手社員は、自分がどのキャリアアンカーの傾向があるのか、どうやって診断したら良いのでしょうか。キャリアアンカーの診断には、質問事項が必要です。最近はインターネット上で質問票を無料公開しているWebサイトがあるので、インターネットで検索すればすぐに利用できます。
 
ただし、まずは人事担当者がご自身で試してください。いきなり社員に実施しても診断結果をどうやって活用するのか、どうアドバイスしたらよいのか実感が湧かないからです。ご自身で試して概要をきちんと把握したうえで、今後のキャリアについて不安を抱いている若手社員に対して行いましょう。
 
さて、どのような診断結果が出たでしょうか。ここからは8つのキャリアアンカーに適した若手社員への声かけの一例を紹介します。
 
1. 専門・職能的(能力)の傾向が強い若手社員
「○○さんは専門性や技術を高めることに興味があるようだから、現在担当している業務もやりつつ、その中で一番好きな業務を選んで、これからの一年をかけてスキルを磨いていこうよ」
 
2. 全般管理(能力)の傾向が強い若手社員
「○○さんはチームで働くことに興味があるようだから、今のうちからマネージメントを勉強していかない」
 
3. 自律・独立の傾向が強い若手社員
「○○さんは仕事のプロセスを考えることに興味があるようだから、現在の業務フローの問題点を洗い出して、定型業務は自然と回る仕組みを作ってみたら」
 
4. 保障・安定の傾向が強い若手社員
「○○さんはコツコツと努力を積み重ねることに興味があるようだから、営業利益率は薄いけど継続受注できる●●を攻めてみたら、安定的な収入につながるね」
 
5. 起業家的創造性の傾向が強い若手社員
「〇〇さんは新しい取り組みに興味があるようだから、担当している業務から新規事業を興してみたら」
 
6. 奉仕・社会献身の傾向が強い若手社員
「〇〇さんは困った人を支援することに興味があるようだから、コロナ禍における社内コミュニケーション不足を解消するためにサポートした施策を、同じ悩みを抱えるお客様にプレゼンしてみたら」
 
7. 純粋な挑戦の傾向が強い若手社員
「〇〇さんは困難に対して粘り強く取り組めることに興味があるようだからら、コロナ禍で振り回されている所属部署内で、上司先輩が挑戦している解決困難な問題に挑戦してみたら」
 
8. 生活様式の傾向が強い若手社員
「〇〇さんはワークライフバランスを大切にした働き方に興味があるようだから、仕事と家庭、趣味など日々の生活を充実させたいタイプのお客様のために商品・サービスを作ってみたら」
 
このように診断結果を見て、個々に合ったアクションを提案し、目標設定をする。キャリアアンカーは、適性職種を調べるツールではなく、自分の特性を生かして組織の中でいかに自分は活躍していくのか。そんな気付きをもたらす、次世代のリーダーに対してのキャリア構築を支援することができる手法だといえるでしょう。

 
 

採用困難な売り手市場時代にやっと巡り合えた仲間を大事に


人事担当者からすると、若手社員はコロナ前の採用困難な売り手市場時代にやっと巡り合えた人材です。さらに、不透明な社会を、これから一緒に生き抜いていく仲間でもあります。苦しい時代ではありますが、相談しやすい環境を整えたり、先人が作ってきたキャリアアンカーなどのキャリア理論を利用したりすることで、若手社員の仕事へのモチベーションアップや定着支援につながるでしょう。

 
 
 

※この記事は2021年1月に執筆されたものです。
 
TEXT:国家資格キャリアコンサルタント 戸田敏治
EDITING:Indeed Japan + ノオト

 

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