早期離職する原因を分析する
まずは若手社員が早期離職する原因について、データを元に分析していきます。「若手社員」と言っても、離職理由は勤続年数や性別で異なります。
労働政策研究・研修機構の「若年者の離職状況と離職後のキャリア形成」に関する調査(※1)によるといくつかのことがわかります。男性社員の「初めての正社員勤務先」を離職した理由は、勤続期間が長くなると「賃金」「キャリアアップ」「会社の将来性」を考えて離職する割合が高くなります。一方で、「自分がやりたい仕事とは異なる内容だった」「仕事が上手くできず自信を失ったため」の2項目は勤続期間が短いほど高い回答率になっています。
女性社員の場合はいくつかの項目での違いはあります。しかし、勤続期間が短いほど「自分がやりたい仕事とは異なる内容だった」「仕事が上手くできず自信を失った」の回答率が高いのは男性社員と同様です。特に「一年以内」に離職した人の回答率が高いことも大きな特徴です(※1)。
男女共に勤続年数が短いほど、この2項目の理由で離職する割合は高いので、新入社員が仕事への自信を持てるようにし、困ったことがあったら誰かに相談できるような環境づくりが必要です。
早期離職を防止する対策を立てる
現状で若手社員の離職率が高い場合、彼らにとって働きやすい環境を整備することが、早期離職を防止する上で重要です。実践可能な対策として、次の2点をご紹介します。
◆育成体制の見直しをする
入社3年以内に離職する理由として「仕事が上手くできず自信を失った」と回答している割合が高いことからも、若手社員の育成方法は重要となるでしょう。「とりあえず業務に取り組みながら覚えてもらう」というやり方をしていたり、人手不足のため業務内容についてしっかり説明をする時間が取れないまま仕事を任せてしまう場合もあるかもしれません。そうすると仕事が上手くできないのは当然です。育成担当の社員を決める、育成計画を立てるなど、体制を見直し、若手社員が仕事に対して自信をなくさないようにするとよいでしょう。
◆社員間のコミュニケーションを増やす施作を実施
誰でも、新たな環境に慣れるまでは不安や悩みがつきまとうものです。そこで、新入社員とのコミュニケーションを促進し、仕事に関する希望や分からないことなどを積極的に聞くための施策を取り入れることをお勧めします。
最近では、上司と部下が個別面談する「1on1ミーティング」を取り入れる企業もあります。また、単なる上司との雑談でも離職意向度の低減に寄与していることが、リクルートキャリアの「中途入社後活躍調査」(※2)でも明らかになっています。こうした機会を利用して、上司が部下である新入社員から直に状況をヒアリングして意向を把握し、励ましの言葉を伝えることなどで、信頼関係の構築が期待できます。
今後の採用活動に活かすには
早期離職の原因分析と防止策が立てられたら、今度は自社の採用に活かしていきましょう。求人情報作成の時点で気を付けるべき点を紹介します。
◆退職理由をヒントに、求人情報を改善する
男女共に早期離職の原因となっている2つの理由、「自分がやりたい仕事とは異なる内容だった」「仕事が上手くできず自信を失った」については求人情報作成時に気をつけましょう。「自分がやりたい仕事とは異なる内容だった」という理由については、仕事内容を詳細に記載するとよいです。その上で面接でも仕事内容を説明し、相違がないかを確認します。そうすると入社後のミスマッチを防ぎやすくなるでしょう。
また、「仕事が上手くできず自信を失った」という理由についても、フォローの体制があることを求人情報に記載をしておくとよいです。
例)経理事務の仕事内容
NG)
給与計算、振り込み、入力業務など
OK)
- 経理伝票入力
- 請求書のチェック、入金・出金確認
- 売上伝票の入力
- 給与計算
- 定例支払い(ネットバンキング)
その他、経理付帯業務使用ソフト入力
基本は会計ソフト入力がメインになります!
経験豊富な先輩のサポートが受けられます。
また、顧問税理士がついているので、わからないことがあれば随時教えてもらえます。
◆仕事に対して何を求めているかも求人情報作成のヒントになる
若年層が仕事に対して何を求めているかを知ることも、彼らの心情に響くキーワードを探る上で、大きなヒントになるものと思われます。
リクルートが毎年新入社員を対象に行っているアンケート(※3)によると「働いていく上で大切にしたいことは何ですか?」に対する回答として、「仕事に必要なスキルや知識を身につけること」が1位となり「社会人としてのルール・マナーを身につけること」が2位(昨年は1位)、「周囲(職場・顧客)との良好な関係を築けること」が3位にランクインしました。
また「どのような特徴を持つ職場で働きたいですか?」の問いには、「お互いに助け合う」が突出して1位となり、「アットホーム」が2位、「お互いに個性を尊重する」が3位という結果に。上司に期待することについても、「相手の意見や考え方に耳を傾けること」が1位、「一人ひとりに対して丁寧に接すること」「好き嫌いで判断しないこと」がトップ3を占めました。
こうした結果から、新入社員は職場や上司には個性を大切にしてほしいと考え、仕事に必要な知識・スキルを身につけることへの関心が高い傾向が見えてきます。その仕事で身につけられる知識やスキル、相互に支え合うアットホームな社風などを想起できる言葉も適切なキーワードとして浮かび上がってくるでしょう。
キーワードを求人情報に盛り込み、まずは応募を増やしましょう
求人情報に職場環境や実務をイメージできるキーワードを含めることは、応募数向上を促す上で大事な工夫ポイントです。また、求人検索エンジンのIndeed(インディード)では、求人情報に記載してあるキーワードと求職者が検索したキーワードが一致すると、検索上位に表示されやすくなります。Indeedで求人の掲載を検討をお考えなら、先に挙げた詳細な仕事内容やフォローの体制、求人情報に若年層の求職者に合うキーワードなどを入れておくことも検討してみてはいかがでしょう。
※1 独立行政法人労働政策研究・研修機構 「若年者の離職状況と離職後のキャリア形成 Ⅱ」(2019年3月29日発表)
https://www.jil.go.jp/institute/research/2019/documents/191.pdf
※2 リクルートキャリア プレスリリース 2019年9月27日
https://www.recruitcareer.co.jp/news/pressrelease/2019/190627-01/
※3 リクルートマネージメントソリューションズ プレスリリース 2019年6月11日
https://www.recruit-ms.co.jp/upd/newsrelease/1906101825_7021.pdf