若手社員の退職理由「キャリアパスが見えない」を解決する方法

机に伏せる女性のイメージ


退職を申し出た若手社員に話を聞くと「この会社では成長できないから」「先が見えないから」と言われるケースがあります。「成長できない」「先が見えない」という理由を紐解いていくと、「会社自体の成長性に乏しい」「自分のキャリアとしての成長性に乏しい」のいずれかが原因となっていることが多いです。前者はまだしも、後者は未然に防ぐ方法がいくつかあります。
 
その一つで最も有効だと考えられるのが、「キャリアパスの明確化」です。会社の規模を問わず、「従業員一人ひとりにどのようなキャリアを提供するのか」を企業側が明確化することで、従業員の自立的な成長を促し、一定の離職を防ぐことができます。今回はその手法について、様々な企業の人事支援に携わった経験からお伝えいたします。

 
 

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中小企業におけるキャリアパスの重要性


昨今、会社員のキャリアに関する考え方が変化しています。ある調査では、「会社に対してキャリア支援を望んでいる」社員は8割以上にも達し、「現在の勤め先でキャリアを築きたい」と考える社員は約半数にとどまりました。
 
さらに従来の終身雇用から、仕事に個人が紐付く「ジョブ型雇用」へのシフトによって、社員は安定して長く働ける会社ではなく、自分の技術やスキルを磨ける会社を求めるようになりました。転職することで、望むキャリアを社外で実現しようと考える社員はますます増えていくでしょう。
 
社員の志向の変化と、転職に関する環境変化を受けて、人事としてはどのような対策を進めるべきでしょうか。優秀な社員を自社につなぎとめる解決策の一つが「キャリアパス」の明確化と定着です。これらを怠った会社は、「先が見えない」という印象を若手従業員に与えかねません。その結果、離職率の向上につながり、事業計画にも支障が出てくるケースを、私自身も見てきました。

 
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そもそもキャリアパスとは?


「キャリアパス」の明確化の手法をお伝えする前に、その定義を定めておきましょう。「キャリアパス」とは、端的に言えば「企業が従業員に中長期で与えることのできる、ポジション・業務内容・報酬などの約束」を指します。ポジション(肩書き)や業務内容を通じて得られた経験とスキルが積み重なることで、従業員一人ひとりのキャリアが形成されます。その道しるべが「キャリアパス(パスは道の意味)」と呼ばれているのです。
 
一方で、「キャリアプラン」「キャリアデザイン」という言葉も聞いたことがあるかもしれません。これらは「従業員自身が思い描く、目指すキャリアや職業人生における目標」を指します。自社内にとどまらず、転職や独立などを考慮に入れているケースも多いです。
 
会社が提供する「キャリアパス」と、個人の「キャリアプラン(キャリアデザイン)」。この2つの整合性を取ることが非常に大切です。会社側の「人材育成計画」と、個人の「なりたい自分」が一致できれば、一人ひとりが大きなパフォーマンスを発揮できますし、中長期での自律的な成長が期待できます。
 
キャリアパスとキャリアプランの整合性を調整できなければ、不満が募り離職の可能性が日に日に高まっていきます。このような事態を防ぐためにも、従業員にいきいきと働いてもらうためにも、キャリアパスの明確化と定着に取り組む必要があります。

 
 

キャリアパスを明確化する4つのメリット


改めて、キャリアパスを明確化して定着させるメリットとして、以下を挙げることができます。

 
 

◆従業員のモチベーションを向上させ、中長期での成長を図る


個人のキャリアプランとの接続を行うことで、日々の業務によどみなく向き合うことができ、従業員の自律的な成長にもつながります。

 
 

◆退職リスクの低下につながる


キャリアパスを提示された従業員は、中長期でのキャリアをイメージできます。さらに職級と報酬を連動させることで、生活設計が立てやすくなり、腰を据えて働いてもらうことが可能になります。

 
 

◆現場のマネジメントの方針が明確になる


キャリアパスを明確化する中で、人材育成と評価の方針を定めることができれば、現場マネジメントにも迷いが無くなります。キャリアパスには、「マネジメントのモノサシ」としての効果も期待できます。

 
 

◆採用時のアトラクト力が高まる


アトラクトとは、面接における「魅力付け」を指します。そもそも転職は、求職者が自分のキャリアプランを実現するためのもの。採用の場は、求職者のキャリアプランと企業側のキャリアパスをすり合わせる場でもあります。競合他社に比べてより魅力あるキャリアパスを提示できれば、求職者の志望度が高まり、内定辞退者の減少が見込めます。
 
キャリアパスの設定は、事業成長や人材育成、社員を自社につなぎとめるための手段であり、つくること自体が目的ではありません。事業戦略や人材戦略の実現に向けて、上記が自社のメリットになるなら取り組むべきです。逆に、「今のままでも問題無し」という判断であれば、他の課題を設定して打ち手を検討した方が良いかと思います。

 
 

キャリアパスをなぜ提示できない? 企業が抱える3つの課題


自社のキャリアパスを、従業員がきっちりと理解して運用されている状態が理想です。そのような状態になっていない場合は、以下の3つの課題が生じている可能性があります。

 
 

◆1. キャリアパス以前の人材戦略がない


キャリアパスは、あくまで自社の人材戦略を可視化したものです。中長期での事業戦略を受けて、どのような組織をつくっていきたいのか、そのためにどのような人材を採用して育てていきたいのか、どのような報酬を与えていくのか。これらの考え方がまとまっていないまま形だけのキャリアパスを提示しても、現場が動かないばかりか、組織風土に悪影響を与えることもあります。
 
なぜ、そのキャリアパスなのか?「WHY」に当たるのが、人材戦略や人事ポリシーです。これらに対する経営陣や人事スタッフの思い入れの強さが、中長期にわたる運用の成否に直結します。

 
 

◆2. キャリアパスが明確化されていない


明確化された人材戦略や人事ポリシーがキャリアパスに反映できていないケースもあります。職級を定めてはいますが、その定義があいまいだったり、求める成果がうまく言語化されていなかったり。もしくは、社内でマイノリティである職種のキャリアパスが不明瞭だったり。あいまいさや定義モレがないか、できる限りチェックしましょう。

 
 

◆3. キャリアパスをうまく運用できていない


まさに「絵に描いた餅」となるのがこのケースです。キャリアパスを設定できてはいますが、報酬やポジションと連携していない、育成や研修制度が整っていない、マネジメントや評価の場で使われないといった状況の会社も見てきました。キャリアパスの提示は抽象性を伴う打ち手ですので、現場スタッフに「本当に実現可能なのか?」といった疑念を持たれることも多いです。だからこそ、他施策と連携しながら、マネジメントのシーンでも活用することが求められます。

 
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課題解決のために実践するべきこと


前述した3つの問題について、それぞれの解決手法を見ていきましょう。

 
 

◆1. 人材戦略・人事ポリシーを立案する


まずは、向こう5〜10年先の事業計画を組織戦略・人材戦略に落とし込み、人事ポリシーを制定する必要があります。どの組織の強化が必要で、そのためにどのような人材を獲得し育成すべきか明確にすることから始めてください。その際には、採用と育成をセットで考えることが大切です。特に育成の打ち手はおざなりになるケースも多いので、はじめから一定の人員と費用をかけて実行することをオススメします。

 
 

◆2. キャリアパスを明確にする


キャリアパスの基礎になる要素は、「職級(グレード)」と「業務内容」の2つです。まずはこの2つを明確化することから手を付けましょう。職級については、「スタッフ→リーダー→マネジメント」のように大枠を設定し、必要に応じて細分化していくのがコツです。業務内容を「成果」と「プロセス」に分けて考えるのも有効です。例を挙げると「売上●●万円をつくるために(成果)、新規の顧客を●●社、既存の顧客を●●社担当できる(プロセス)」のような形になります。
 
さらに、職級・業務内容の2要素を報酬や評価基準と接続させることで、「絵に描いた餅」になるのを防ぐことができます。加えて、昨今は「キャリアパスの複線化」がトレンドです。例えば、ビジネス職とプログラマー、デザイナーでそれぞれのキャリアパスを設定している会社も多くなっています。
 
キャリアパスを個人のキャリアプランと接続するためには、様々な工夫が必要になります。キャリアパスの表は採用における動機付けの材料になるため、採用サイトに公開されているケースも多いです。ぜひ、参考にしてみてください。

 
 

◆3. キャリアパスを現場で運用する


ここでの大切なポイントは、従業員の評価基準や報酬、研修制度など、他の従業員向けの打ち手とキャリアパスを有機的につなげること。キャリアパスは単体では機能しません。それぞれの施策と連携することで、はじめて「もっと上を目指そう」と従業員に感じてもらえるのです。また、個人のキャリアプランとのすり合わせも、現場マネージャーの大切な仕事になります。
 
運用が軌道に乗った後も、従業員個人への浸透が停滞することはしばしばあります。滞っている原因として、「従業員に認知されていない」「事業計画と乖離がある」「職級の設定に現場感が反映されていない」「マネージャーが運用のメリットを感じていない」などが考えられます。原因に応じた打ち手を継続的に実施していく必要があります。

 
 

キャリアパス・制度を運用するデメリット


最後に、キャリアパスを明確化するデメリットについても、汎用的なものを2つ挙げておきます。このような事態も想定しながら施策に取り組むことで、より高い効果を上げることができるでしょう。

 
 

◆従業員のキャリアや育成手法が限定されてしまう


キャリアパスの運用を遵守することが優先されるあまり、例外を認められなくなり、個人のキャリアプランを顧みることがなくなるケースです。キャリアパスを明確にしつつも、柔軟性を残しておくことで回避することは可能です。

 
 

◆外部環境の変化への対応力が損なわれる可能性がある


社外の事業環境の変化に対応するために、組織や人材戦略は常に進化していくべきです。そこで既存のキャリアパスの運用を優先してしまうと、優秀な人材を雇えず、育成もできず、時代に取り残される恐れもあります。キャリアパスは事業や人材の成長のための手段でしかありません。環境の変化や自社の規模の成長に応じて、見直しを図ることも必要です。
 
ただし、これらのデメリットを顧みても、キャリアプランを明確化して運用する意義は大きいです。人材育成や採用活動においても高い効果があるため、ぜひ、チャレンジしてみてください。

 
 
 

TEXT: core words 株式会社 佐藤タカトシ
EDITING:Indeed Japan + ノオト

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