中途社員から転職の申し出があったとき、人事が取るべき行動とは?


第一線で活躍していた社員から突然退職の申し出を受けてしまったら、人事担当者はどのような行動を取ればいいのでしょうか。組織人事コンサルタントの曽和利光さんに、配属先の管理職との連携や、退職を希望する社員との面談で気をつけるべきことなど、具体的な対応について伺いました。

 
 

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人事担当者と現場の管理職が迅速に連携


転職や家庭の事情などで社員が退職を考えるとき、まず直属の上司に退職の意向を申し出るのが一般的です。そのため、人事は後日その上司から報告を受けるケースが多く、対応が後手に回ってしまいがちです。

 
 

◆管理職からの迅速なエスカレーションを徹底する


本人が「辞める」と決めた時点で、いくら説得を試みても意志を覆すことは難しいでしょう。そのため、本人が退職するかどうか悩んでいる期間だけが、引き止めることができる唯一の機会です。
 
だからこそ、現場から人事への報告が遅れると、引き止めるチャンスを失ってしまうかもしれません。従業員を引き止めたい場合は、人事部と現場が迅速に情報を共有し、連携を組むことが大切になってきます。
 
日頃から管理職に対して「部下から退職に関する相談があったときには、すぐに経営層や人事にエスカレーションする(相談して判断を仰ぐ)」というルールを徹底しておきましょう。
 
上司によっては、自分の管理下にあった社員が辞めてしまうとマネジメント能力にマイナス評価がなされると感じ、ギリギリまで隠してしまうケースが非常に多いです。自分でなんとか解決しようと説得を試みるも部下の意思は変わらず、反対に上司の強引な説得が部下の辞める意思を固めるきっかけにもなりかねません。

 
 

◆管理職と人事で役割分担を相談する


人事は現場の上司から報告を受けたらすぐに、役割分担を相談しましょう。退職希望者本人に合った対応をとることが大切です。
 
<対応の例>
・退職希望者が上司や同僚とうまくいっていない場合
→人事担当者が間に入って、本人に退職理由などを詳しくヒアリングする
 
・退職希望者と上司の間で信頼関係が構築できている場合
→上司に直接話をしてもらい、人事担当者は裏方として転職を希望している社員の最近の状況を同僚などにリサーチする

 
 

「引き止めるべきか」「送り出してやるべきか」面談でのスタンスは?


次に重要なのは、退職を考えている社員と面談する際のスタンスです。会社のことを考えて「引き止めるべきか」、もしくは本人の意思を尊重して「気持ちよく送り出してやるべきか」は、非常に悩むポイントだと思います。
 
結論としては、どちらでもなく「フラットな気持ち」で面談するのが、最も正しい向き合い方です。どちらかの意図を持って接していると、相手にそれを気づかれた瞬間に、全ての言葉が眉唾として受け取られてしまい、その時点で説得力がなくなってしまうからです。
 
たとえ企業側に「引き止めよう」という意思があったとしても、面談の最中はそれを一切出さずにフラットな気持ちで臨むのが、退職を考えている社員との面談の基本姿勢です。

 
 

退職が確定した際に人事担当者がやるべきこと


話をしてみても本人の意思が変わらず、退職が確定した際には、人事担当者としてやるべきことが2つあります。
 
1.退職者面談
必ず面談の機会を設けて、社員が辞める本当の理由をしっかり聞き出します。このタイミングが退職理由を聞ける唯一の機会になりますので、本音を語ってもらえるように信頼できる面談を心がけましょう。
 
例えば、「オファーをもらった転職先の条件が良かった」が主な理由だとしても、現職に対して何か納得できなかったこと、嫌なこともあったかもしれません。それをどこまで聞き出せるかが人事の腕の見せ所でしょう。
 
実際、退職者の発言は、社内を変えていくときの大きなパワーになります。人事は日頃の業務で新しい提案をするためのエビデンスをつかむのが非常に難しいため、こうした「退職」という重い決断をした元社員の言葉は、データとして価値もあり、組織改革などを行っていくには非常に重要な要素になりえます。
 
少子化が進む日本では、人手不足で悩む会社が年々増えていく傾向にあります。退職者をできるだけ出さないためにも、転職の意思を固めた社員の本音を聞き出すのには意味があります。
 
2.退職理由を現場にフィードバック
退職する社員の所属部署には、退職理由を必ず共有します。ここで気をつけるのは、直属の上司ではなく、その上司を育成するさらに上層の立場の人に伝えることです。直属の上司に伝えても、その上司こそが辞める要因だった場合は、もみ消されるかもしれませんし、違う解釈をされる場合があります。経営層クラスに現状を認識してもらうようにしましょう。

 
 

退職希望者に異動や昇格を提案するのは有効?


退職の申し出があった場合、人事担当者は異動や昇進・昇格といった人事権を行使した提案をすることができるでしょう。
 
例えば、「転職するので退職したい」という申し出に対して、「じゃあ、半年後に以前からやりたいと言っていたマーケティングのポストが空くのでやってみる気はないか」といった異動のオプションを提案する方法があります。
 
確かに、組織として「今抜けられると困る」といった局面では、こうした提案も1つの手段にはなります。しかし、基本的には人事権の行使は「最後の手段」だと考えるべきです。
 
私自身、長い人事経験の中で、異動や昇進による引き止めは短期的な効果はあっても、長期的に見てうまくいったケースはほとんどありません。こうしたオプションを一度使ってしまうと、「『辞めたい』といえばなんとかなる」という話が社内に広まり、組織が乱れてしまうからです。最終的に人事権を行使するかどうかは、総合的に判断して決断する必要があるでしょう。

 
 
 

<取材先>
株式会社人材研究所 代表取締役社長 曽和 利光さん
京都大学卒業後、リクルートに入社。人事部のゼネラルマネージャーとして培ったスキル・ノウハウと、2万人の面接経験を融合しワンランク上の人材を採用する独自手法を確立。その後、大手生命保険会社などで一貫して人事領域で活躍し、2011年に株式会社人材研究所設立。著書に『就活「後ろ倒し」の衝撃』(東洋経済新聞社)などがある。
 
TEXT:西谷忠和
EDITING:Indeed Japan + ノオト

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