中途社員がすぐ転職してしまうのはなぜ? 定着率が低い企業が見直すべきこと

苦労して採用したにもかかわらず、すぐに転職してしまうなど中途社員が定着せずに悩んでいる企業は多いのではないでしょうか。そこで、組織人事コンサルタントの曽和利光さんに中途社員の離職の要因と、定着率を高めるための施策について伺いました。

求人を掲載

中途社員が会社を辞めて転職する2つの理由

中途社員が会社を辞めて、転職する理由は大きく2つあります。

 

◆入社後のフォロー不足による「お手並み拝見」現象

1つ目は、早期退職者に多いパターンで、その会社の慣習や文化、意思決定ルートといった明文化されていない規則がつかめないことです。
 
新卒社員であれば、フロアを連れ歩いて他部署のキーパーソンを紹介するなど、先輩社員が自然とインフォーマル(非公式)なネットワークを教えることもあると思います。中途社員の場合、一般的にはそこまで手厚いフォローを行いません。それは、迎え入れる側がそこまでやるのは、中途社員を子ども扱いしているようで失礼にあたるのではないかという思いがあるからでしょう。
 
中途社員はキャリアや経験もあり、新卒と比べて高い給料をもらうため、ほとんどの場合は仕事のやり方を含め「お任せします!」というケースが多いと思います。私は、これを「お手並み拝見」現象と呼んでいます。この結果、中途社員は「組織に受け入れられていない」という感覚に陥り、会社の文化に馴染めず、辞めてしまうのです。
 
新卒社員だと他社での経験がない分、企業文化やルールを吸収しやすいと思いますが、中途社員は、やはり以前勤めていた企業のルールや考え方をリセットして、新たな企業文化などを学び直す「アンラーニング」の期間が必要となってきます。

 

◆配属予定先との相性を軽視した「スキル最適」での採用

2つ目は、上司や同僚との相性(性格最適)が考慮されていないという本質的な理由です。
 
中小企業の中途採用の場合、入社後のポジションは既に決まっていて、誰が上司で、誰が同僚になるかも分かっているはず。それにもかかわらず、応募者と社内メンバーの「性格最適」を考慮せずに選考を進めてしまうケースが非常に多いです。理由としては、能力や経験などの「スキル最適」が優先されてしまうからでしょう。
 
例えば、内定候補者が2名いたとします。「スキルのマッチングで選べばAさん、パーソナリティ(チームとの相性)で選べばBさん」という評価の場合、多くの企業はAさんを選択するでしょう。しかし、スキル面は問題なくとも、周囲との相性が今ひとつで、うまく連携が取れないということは十分考えられます。Aさんが思うようなパフォーマンスを発揮できず、チーム内に不協和音が起こると、それがAさんの退職につながってしまうのです。
 
社員の行動データなどを収集・分析して組織開発を行う「ピープルアナリティクス」の分野では、パーソナリティを重視して配属された人は、スキル最適で配属された人よりも、シナジー効果を起こして高いパフォーマンスを生み出すことが証明されています。実際、名だたる大手企業では、チームメンバーとの相性を考慮した中途採用が行われて、成果を出しています。
 
もちろん、相互依存性が低く、周囲とのチーム連携がそれほど重要ではない仕事なら「スキル最適」で人材を採用しても問題ありません。しかし、多くの仕事では周囲とのコミュニケーションやチームワークが必要になるので、最初から配属先が決まっている社員募集であれば「性格(パーソナリティ)最適」を考慮した採用を心がけるようにしましょう。

 
Indeed (インディード) | はじめての求人投稿、初期設定を電話でサポート! | 詳しくはこちらIndeed (インディード) | はじめての求人投稿、初期設定を電話でサポート! | 詳しくはこちら

「性格最適」で採用できない場合の施策とは

しかし実際の現場では、「スキル最適」も非常に重要な要素なので、社員との相性を最優先に人材を採用するのは、非常に難易度が高いものです。そこで、「性格最適」が「完璧にできないとき」、もしくは「性格的にマッチしない人材を採用してしまったとき」の対応策をお話します。大きく分けて3つの施策があります。

 

1.中途社員と上司・同僚との相互理解が深まる場を設ける

中途社員と配属先の上司や同僚が、それぞれの性格や考え方・価値観の違いを認識し合うための場を設けましょう。ワークショップなどの手の込んだイベントまでは行わなくてもいいと思いますが、しっかり時間をとって部署メンバーが自己紹介をしたり、上司との1対1の面談や懇親会などを実施したりすることで、相互理解を深めることが重要です。
 
業務上のコミュニケーションエラーが発生したときも、その人の性格を知っていれば「悪気はなかったんだ」と言うことが分かり、むやみに腹も立たなくなります。性格的には違っていても、お互いを理解することで相手を尊重し合いながら仕事ができる。そういった素地を作りましょう。

 

2.上司は中途社員に合ったマネジメントに切り換える

基本的には、上司が歩み寄って中途社員のパーソナリティに合ったマネジメントを行うことです。主体的に仕事に取り組むタイプなら、裁量権を与えて仕事を任せた方がいいですし、慎重派のタイプには、イチから丁寧に教えて、仕事を覚えてもらう方が結果的にスムーズでしょう。どのようなマネジメントを行うべきか上司が判断しきれない場合は、採用に関わった担当者が入ってサポートしましょう。

 

3.入社後2週間を目安に、人事担当者などが面談を行う

相性を考慮せずに採用した時点で、その組織内で問題が起きる可能性は非常に高いです。入社後は早期に状況を把握して、最悪の場合は「異動する」などの対応も検討する必要があるでしょう。そこで、入社後2週間程を目安に面談を行い、状況をヒアリングします。直属の上司がトラブルの原因になるケースも多いので、面談は上司の上司、もしくは人事担当者が行うのがいいでしょう。

 
Indeed (インディード) | 世界No.1の求人サイト Indeedで求人掲載してみませんか | 掲載をはじめるIndeed (インディード) | 世界No.1の求人サイト Indeedで求人掲載してみませんか | 掲載をはじめる

定着率を上げるには、3カ月で受容感が得られる組織づくりを

企業は、「中途社員は即戦力である」という意識を捨て去ることも大切です。最初にお伝えしたように、前職の経験があっても入社後は新しい企業文化や価値観などを学び直さなければいけません。中途社員が企業に定着し、戦力化するためには、入社後3カ月間に受容感(組織から受け入れられる感覚)を得られることが必要です。それがないということは周囲からサポートを得られていない状況なので、企業の不文律なども学べず、早期退職の可能性が高まります。
 
企業として中途社員を定着させ、戦力化するまで受け入れ体制を整え、サポートを行う。こうした「オンボーディング」を導入することも、中途社員の定着率を高めるポイントになるでしょう。


<取材先>
株式会社人材研究所 代表取締役社長 曽和 利光さん
京都大学卒業後、リクルートに入社。人事部のゼネラルマネージャーとして培ったスキル・ノウハウと、2万人の面接経験を融合しワンランク上の人材を採用する独自手法を確立。その後、大手生命保険会社などで一貫して人事領域で活躍し、2011年に株式会社人材研究所設立。著書に『就活「後ろ倒し」の衝撃』(東洋経済新聞社)などがある。
 
TEXT:西谷忠和
EDITING:Indeed Japan + ノオト

 
“マンガで解説 

求人を掲載
準備はできましたか?求人を掲載

*ここに掲載されている内容は、情報提供のみを目的としています。Indeed は就職斡旋業者でも法的アドバイスを提供する企業でもありません。Indeed は、求人内容に関する一切の責任を負わず、また、ここに掲載されている情報は求人広告のパフォーマンスを保証するものでもありません。