無意識の思い込み”がキャリア開発を妨げる? アンコンシャスバイアス研修に期待できること

アンコンシャスバイアス研修を導入している企業のイメージ

「アンコンシャスバイアス(無意識の偏ったものの見方)」に気づくための研修を導入する企業が増えています。アンコンシャスバイアス研修のポイントは、バイアスを“なくす”のではなく、“知る・気づく・対処する”こと。目的や期待される効果、いま注目される理由とは一体どんなものなのでしょうか。
 
アンコンシャスバイアスに関する知見を研修や書籍などで広める、一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所代表理事の守屋智敬さんに話を聞きました。

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アンコンシャスバイアスに気づき、誰もが活躍できる職場に

――アンコンシャスバイアスの研修にはどういった目的があるのでしょうか?
 
「アンコンシャスバイアス(無意識の偏ったものの見方)」は、全ての人のなかに存在しています。決して悪いものとは限りませんが、これに起因して誰かを傷つけたり、自分の可能性を狭めたりしてしまうことがあります。そこで、アンコンシャスバイアスを“知る・気づく・対処する”ための研修を行なっています。
 
研修をご依頼いただく場合、企業側の目的として最も多いのはダイバーシティ&インクルージョン(※1)の実現ですが、イノベーションやハラスメント対策、キャリア開発といった目的もあります。
 
(※1) 外見や内面、属性の違いに捉われず、多様性(ダイバーシティ)を受容(インクルージョン)して活かしていくこと
 
――キャリア開発の目的もあるのですね。
 
アンコンシャスバイアスに影響を受けて、キャリア開発が難しくなっている方もいるからです。たとえば「自分のポジションでは〇〇な仕事はできない」と無意識に考えて一歩を踏み出せずに成長機会を逸してしまうのは、「ステレオタイプ脅威」というアンコンシャスバイアスの影響の可能性があります。
 
ステレオタイプと聞くと「他人に対する先入観」をイメージするかもしれませんが、実は自分に対して先入観を持ってしまうこともあるのです。たとえば「自分は若手だから」「男性だから」「女性だから」などといったことですね。これらはアンコンシャスバイアスの存在を知ることで捉え方を変えることができます。

 

日常の些細なことから「これ、ちょっと違ったやり方でやってみる?」

――社員の「ステレオタイプ脅威」に課題感を持っている企業も多いかもしれません。
 
はい。本当はできるのにできないと感じてしまう社員の方に対しては、「できる」という経験によって「アンコンシャスバイアスの上書き」をしてもらうことが大切です。まずは小さな目標をサポートすることや、過去にできていたことに意識を向けて「実はできていたんじゃないか」と認識を新たにすることが大事です。
 
――アンコンシャスバイアスには、他にどのような種類があるのでしょうか?
 
たとえば「正常性バイアス」は、「私たちは大丈夫」と思う心理を指します。感染症の蔓延や災害があるなかで、「私は大丈夫」「私は問題ない」と思っていると、準備を怠ったり逃げ遅れたりしてしまうこともあり得ますよね。職場においては「私は変わらなくても問題ない」などと無意識に思い込み、環境の変化についていけなくなることがあります。これでは、新たな方法を取り入れるべき重要な局面でも、仕事のやり方をなかなか変えられないかもしれません。
 
事業の方針を転換するような大きな意思決定は、それほど頻繁に起こりませんが、普段から「あたりまえを疑ってみる」「このままでいいのだろうか?」と問いを立てることは大切です。

 

「説明」よりも「体験」を大切に

――アンコンシャスバイアスの研修では、どんなことを実施していますか?
 
自分自身のアンコンシャスバイアスに気がつくためには、説明よりも体験が重要ですので、座学の講義よりもワークを多く取り入れています。「まさかそうは思わなかった」とハッとする体験や、参加者同士で対話しながら自分のアンコンシャスバイアスに気づく体験をしてもらいます。
 
特に、参加者同士でアンコンシャスバイアスを自己開示するのが重要です。「自分には、こんなアンコンシャスバイアスがあるかもしれない」と口に出して言うことで自己認知が進んでいきますし、周囲が自分のバイアスに気がつくきっかけになるんです。
 
たとえば「長期間育休を取得する男性社員に対してこんなアンコンシャスバイアスがあった」「仕事内容よりも勤務時間で評価をしていたのはアンコンシャスバイアスだった」などと他の参加者の自己開示を受けたときに「それって私もあったかもしれません」と他の参加者の呼び水になることがあります。
 
――アンコンシャスバイアスに気づくためのポイントはありますか?
 
アンコンシャスバイアスに影響を受けている言動には特徴があり、「決めつけ」「押しつけ」が見られます。「女性ってこうだ」「男性ってこうだ」と性別で決めつけてしまったり、「若い人ってこう」と世代で決めつけたりと、属性で語ってしまうことなどが挙げられます。研修中の自己開示を通して、無意識だった「決めつけ」「押しつけ」を意識できるようになることがポイントです。
 
また、職場では相手の「心のあと味」に目を向けることも大切です。コミュニケーションにおいては、無意識に相手を少し不快にさせる言動を取ってしまうこともあります。それでも、相手の表情や態度の変化に表れるサインに注目して、「心のあと味」が悪くなっていないか確認しましょう。
 
――研修の参加者の感想には、どんなものがありますか?
 
「自分にはアンコンシャスバイアスはないと思っていたが、いろいろな影響を受けていると分かった」「属性で決めつけていたと分かり、ハッとした」という声が多いです。さらには、アンコンシャスバイアスに気づいて「部下との関わり方や、コミュニケーションの仕方を変えていきたい」と行動変容につながる声もありました。「アンコンシャスバイアスを知って、見える世界が変わりました」と言ってもらえることもあり、これは本当に嬉しいですね。
 
企業の規模に関わらず、アンコンシャスバイアスを知ることで、職場の雰囲気や働き方、キャリア開発などに良い影響をもたらすはずです。

 

研修後は「メモ」で振り返りと共有を

――企業の担当者や経営者が、研修の事後のフォローとしてできることにはどんなものがありますか?
 
研修後、アンコンシャスバイアスに気づいた時にメモをつけるルールで2 週間過ごしてみてください。本当に簡単なメモで、1日1回でも構いません。「今日のウェブ会議で〇〇さんが暗い顔をしていた原因は、アンコンシャスバイアスかな?」といったことを書き出して、少しだけ「なんで暗い顔をしていたんだろう?」と思いを馳せていただきたいです。
 
メモを2週間つけてみると、自分のアンコンシャスバイアスに気づいたり、思考のクセに気づいたりと、様々な発見があるでしょう。
 
この活動を通して、研修で行った振り返りが習慣化されます。「これってアンコンシャスバイアスかも」と意識する心の持ちようが自然に作られるからです。このような習慣づけは非常に効果的でしょう。
 
そうしたフォローをしながら、アンコンシャスバイアス研修をうまく取り入れていけば、一人ひとりがイキイキと活躍する職場を作ることができると思います。

 

 

<取材先>
 

守屋智敬さん
一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所
代表理事 守屋智敬さん
 
ひとりひとりがイキイキする社会を目指し、一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所を2018年に設立、代表理事に就任。著書『「アンコンシャス・バイアス」マネジメント最高のリーダーは自分を信じない』(かんき出版)など。

 

TEXT:遠藤光太
EDITING:Indeed Japan + ノオト

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