虚偽の申告が多い項目の例
採用候補者の中には、応募した企業に入社したいがために、選考書類の経歴を偽る人がいます。企業にとっては、応募条件に合わない人物を採用してしまうことにつながるため注意が必要です。以下は応募書類の中でもとくに虚偽の申告が多い項目です。
◆学歴
企業の募集要項では「大卒以上」など、最終学歴に条件を設けることは珍しくありません。しかし、応募者の選考書類に「●●大学卒業」と記載があるものの、実は「大学を中退していた」「別の大学名を書いていた」など、学歴を詐称している場合があります。
◆前職
中途採用の場合は、専門的なスキルや経験が求められる場合が多いです。そのため、自分のスキルや経験を少しでも良く見せようと、実際には勤めていない有名企業などの社名を経歴として書く人がいます。前職は職務経歴書をチェックする際に注目すべき項目です。
◆前職の給与
給与をより良い条件で交渉するために、前職の給与を実際よりも高い金額で申告する人もいます。交渉に乗ってしまう前に、前職の給与が事実かどうか疑問を持つようにしましょう。
経歴詐称する人物を雇用することのリスク
経歴詐称する人物を雇用することは、企業にとって少なからずリスクが生じます。例えば前職の給与を多めに偽っていた場合、それよりも高い給与を条件に雇うことは企業の負担になります。また、経歴詐称をする人物は誠実であるとは言えず、何かをきっかけにほかの社員や取引先とのトラブルに発展してしまう可能性もあるでしょう。
「時間とコストをかけて採用選考を行ったのに、思わぬリスクを負ってしまった」ということにならないためにも、雇用前に見抜くことが大切です。
提出書類等で経歴詐称を見抜くポイント
それでは、どのようにして経歴詐称を見抜けばよいのでしょうか。選考時に見抜くためのチェックポイントは以下の通りです。
◆入社前の提出書類
入社後に保険や税金の手続きを行なう際には、前職での雇用保険被保険者証や源泉徴収票が必要となります。これらの書類には会社名が書かれているため、職歴を詐称している場合こうした書類の提出を拒むケースがあります。
◆履歴書
履歴書には「賞罰の履歴」の記載を求めるものがあります。賞罰の「賞」は受賞歴や表彰歴を、「罰」は犯罪歴(確定した有罪判決)を記載します。実は犯罪歴がある求職者は、こうした欄のないフォーマットを使用する傾向があるので注意しましょう。
◆職務履歴書
例えば懲戒解雇の履歴などは、上述の「罰」にはあたらないと考えられていますが、職務経歴書に前職を書いた場合、退社理由を話さざるを得なくなるため、職歴から前職自体を削除するケースも散見されます。最終職歴がかなり前の職歴で止まっている場合、前職で懲戒解雇されたことを秘匿している可能性も視野に入れてチェックしましょう。
面接時に経歴詐称を見抜くポイント
面接時に見抜くポイントとしては、候補者の気になる点に対し、何度か質問を繰り返して情報を掘り下げることです。例えば前職の情報が気になった場合は、「その部署では具体的にどんな業務をしていたんですか?」「どんなスキルが身に付きましたか?」などと質問を重ねていくと、情報に偽りがないかを見抜きやすくなります。
また、中途採用などでスキルや経験を重視する場合は、「情報に間違いがないか、前職に確認してもいいですか?」と、本人に尋ねてしまうのもいいでしょう。返事に困った場合や、動揺している様子であれば、何かを隠している可能性があります。
経歴詐称を見抜くには事前の調査が必要
候補者が記載した応募書類の内容は、100%が事実であるという保証はありません。企業側は、候補者からの情報だけを信じずに、自分たちで調査することも大切です。経歴詐称を事前に見抜くことで、雇用後のリスクを回避しましょう。
<取材先>
寺島戦略社会保険労務士事務所代表 社会保険労務士 寺島有紀さん
人材採用コンサルタント/社会保険労務士 稲田行徳さん
TEXT:稲垣 恵美、友清 哲
EDITING:Indeed Japan + ノオト