中小企業の変革や成長のきっかけとなり得るボランティア「プロボノ」の活用とは

工場で話し合う従業員のイメージ


社会人が仕事を通して培った専門的な知識やスキルを生かしてボランティアをする「プロボノ」が注目を集めています。また、プロボノの活動の場はNPO法人などの非営利団体にとどまらず、中小企業であることも珍しくありません。なぜ、プロが無償、あるいは低額で企業の仕事を手伝ってくれるのでしょうか。企業によるプロボノ活動の進め方や、受け入れのコツについて、名古屋産業大学准教授の今永典秀さんに聞きました。

 
 

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得意なことを活かした社会貢献


――「プロボノ」とは職業上の知識やスキルを生かしたボランティア活動と聞きました。こうした活動に取り組む人が増えているのはなぜですか。
 
プロボノは日本では2011年頃、東日本大震災を機にボランティア活動全般に関心が高まったことから広く知られるようになりました。ボランティア活動にはさまざまなものがありますが、プロボノの特徴は専門性を生かした活動をすることです。「自分の得意なことや好きなことを生かして、社会の役に立ちたい」と考える人が増えているのではないでしょうか。
 
私自身もキャリア教育や人材育成といった専門分野の知識を生かして、学生や若手社会人のキャリアに関する勉強会を主催したり、金融機関に勤務していた経験を生かしてNPO法人の経営の相談に乗ったりと、プロボノとして活動しています。
 
プロボノは「人の役に立てる」という喜びに加えて、自分のスキルアップにもつながるというメリットもあります。私の場合であれば、学生ではなく社会人に講義をする際にはどんな方法が良いかを考えたり、企業とは異なるNPO法人の会計を学んだりすることもできます。
 
プロボノの経験を通して知識やスキルをアップデートできる上、普段の仕事では接することのない業種の方や年齢の離れた人とも接することができ、社外にも豊かなネットワークを持つことができるようになります。

 
 

企業が行うプロボノは人材育成や採用にも好影響


――企業として「プロボノ」に取り組む例もあると聞きました。
 
企業が社員のプロボノ活動を支援するケースや、社員がチームとなってNPOや中小企業、ベンチャー企業でプロボノとして活動することは珍しくありません。広報のノウハウがないNPOに、プロボノがデザインの知識を生かしてホームページやパンフレットを作ったり、最近ではパソコンに慣れていない人や団体に対してオンライン会議のためのツールの使い方を教えたりといった活動も喜ばれています。また、自治体や地域の団体と一緒にまちづくりに取り組んだり、ベンチャー企業のPRや商品開発に関わったりといったプロボノもあります。
 
――企業は社会貢献活動の一環としてプロボノに取り組んでいるのですね。
 
そうですね。CSRや社会貢献はもちろんですが、企業が社員のプロボノを促進するもう一つの目的は人材育成だと考えます。先述した通り、社外でのプロボノ活動は社員のスキルアップやネットワークづくりにも役立ちます。
 
また、社員が「何か新しいことに挑戦してみたい」と考えても、中小企業では職場環境が変化する機会は少なくなりがちです。意欲ある社員に挑戦の機会を与える方法の一つとしても、社外でのプロボノは有効です。
 
加えて、地域のNPOなどに対するプロボノ活動が、メディアに取り上げられることもあります。自社のホームページでプロボノ活動の様子を紹介するだけでも、見た人に「地域に貢献している企業」「新しいことに挑戦できる企業」という印象を持ってもらえるでしょう。
 
特に最近ではSDGsや社会課題の解決に関心を持つ若者が増えていますから、企業のプロボノへの取り組みは、採用活動にもプラスの効果が生まれるのではないでしょうか。
 
――人材育成や広報など、企業がプロボノに取り組むと多くのメリットがあるのですね。では、気を付けるべきポイントはありますか。
 
活動先のNPOや外部企業と、プロボノ活動の内容や期間について事前に話し合い、確認しておくことが必要です。活動先が求めていることと、社員のスキルや知識のレベルが合っているか、自分たちが本当に役に立てるのかといったことも確認しましょう。
 
たとえば、NPOのためにプロボノとして団体のホームページを作っても、プロボノ活動期間が終わった後は団体内にページの更新方法の分かる人がおらず、古い情報のまま手を付けられない、といったことも度々あります。プロボノ人材がいなくなってから困ってしまわないよう、話し合いながら進めていくとよいでしょう。

 
 

プロボノが、自社事業を応援してもらうきっかけに


――先述のように、NPOのような非営利団体だけではなく、プロボノが外部企業で活動するケースはあります。「うちの会社もプロボノに手伝ってもらえないか」と考える中小企業もあるのではないでしょうか。
 
プロボノは「誰かの役に立ちたい」「社会や地域のためになる事業に協力したい」という人の善意に基づいた活動です。「従業員」でも「外注先」でもありませんから、プロボノに「何を」「どこまで」「いつまで」お願いするかはお互いがよく話し合って決めなければならず、意外と手間もかかり難しいものです。
 
当然ながらプロボノを「無償の労働力」としてだけ扱うことは、その方の善意を踏みにじるものであり、決してうまくいきません。企業の依頼どおりに仕事をして欲しいのであれば、通常取り対価を払って人や企業に発注した方が効率良いでしょう。
 
――なるほど。では、中小企業がプロボノ人材を受け入れる時の注意点を教えてください。
 
プロボノの力が生きるのは、企業とプロボノが対等な関係で「一緒に作っていく」事業です。「新しい商品やサービスの開発」「新商品の広告・宣伝」など、新規事業に大きな予算を付けることが難しい中小企業と、普段の職場では経験できない新事業に関わってみたいというプロボノの思いが合致して、専門知識を持ち寄りながら企画を考えていく、といったプロジェクトは上手くいきやすいと思います。
 
――今永さん自身もプロボノとして活動されていますが、プロボノを行う際に気を付けている点はありますか?
 
私は「もっと勉強したい」という若い人たちに乞われて、プロボノとして「社会人ゼミ」のような勉強会の講師をしています。意欲のある若者を応援したいという気持ちから、無償で行っていますが、企業から社内研修の講師をお願いされた際には相応の講師料をいただくことにする、という自分なりの基準を持っています。どこまでがプロボノで活動できる範囲なのかは、プロボノを行う人によって様々ですから、その都度、お互いに確認することが大切です。
 
「社会的な価値のある仕事ができた」「自分も勉強になった」と感じたプロボノは、活動の終了後も会社のファンや仲間のような存在になって、引き続き手伝ったり助言してくれたりするものです。中小企業こそ、社内外の人材の力を活かす方法の一つとして、プロボノを考えてみてはいかがでしょうか。

 
 
 

<取材先>
今永典秀さん
名古屋産業大学現代ビジネス学部経営専門職学科准教授、地域連携センター長。インターンシップを中心としたコーオプ教育や地域連携・産学連携に携わる。大学外では自らもプロボノとして学生と社会人が共に学ぶ場「NAGOYA×FOREVER」の代表を務めるほか、若者支援のNPO等の活動に関わる。
 
TEXT:石黒好美
EDITING:Indeed Japan + 笹田理恵 + ノオト

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