自分のスキルを生かし、社会に貢献する「プロボノ」とは?

仕事をする女性のイメージ


仕事で培ったスキルや専門的な知識を生かして、社会的・公共的な活動を行う「プロボノ」が注目を集めつつあります。個人でボランティアとして取り組むケースはもちろん、企業が社員のプロボノ活動を支援したり、企業としてプロボノを行ったりするケースも増えています。自身もプロボノとして活躍している、名古屋産業大学准教授の今永典秀さんに、企業が行うプロボノや外部からプロボノを受け入れることの意義を聞きました。

 
 

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「自分の得意なこと」を生かした社会貢献


――「プロボノ」とは何でしょうか。
 
社会的、公共的な目的のために、ビジネスなどで培った専門的な知識やスキルを生かして行うボランティア活動を「プロボノ」といいます。「公共善のために」を意味するラテン語「Pro Bono Publico」が語源です。もとは欧米の法律家による、低所得者や社会的弱者に対する無料法律相談などの社会奉仕活動から始まりました。
 
日本では東日本大震災の後、ボランティア活動に対する社会的関心が高まったこともあり、10年ほど前から注目されるようになりました。
 
また、ここ数年間で「兼業」や「副業」「複業」を認める企業が増加しました。本業とは別に、様々な活動や仕事をする「パラレルキャリア」という言葉も、新しい働き方として広まりつつあります。働くことに対する考え方の変化も、プロボノに注目が集まっている背景の一つです。
 
――ボランティアということは、賃金や報酬を発生させずに知識やスキルを提供することが多いと思います。プロボノ活動をする人たちの動機はどんなことでしょうか。

 

  • 持っているスキルを社外でも生かしたい
  • ボランティアや社会問題解決への興味・関心がある
  • 自身のスキルアップのため


上記の理由でプロボノを始める人が多いようです。「自分の得意なことで、誰かの役に立ちたい」「社外の活動に関わることで、自分も成長したい」と考える人たちの活躍の場の一つとして、プロボノが選ばれているのでしょう。
 
私自身もプロボノ・ボランティアとして、大学生のキャリア支援をしたり、社会人と大学生が共に学ぶ交流会や勉強会を主催したりしています。自分のビジネスマンとしての経験や研究から得た知見を生かして、学生や若手社会人の役に立てることはうれしいですし、私自身も本業の仕事だけでは会えない人との出会いや、新しい知識が得られることを楽しんでいます。
 
また、私は大学教員になる前は金融機関に勤めていたこともあります。その経験を生かして、NPO法人やベンチャー企業を立ち上げた若い人たちの相談に乗ったりもしています。財務諸表や事業計画を見せてもらい、経営について助言することもありますが、プロボノとして無償で関わっているのは「若い人たちを応援したい」という気持ちと、自分も最先端の事業や社会課題に触れられて学びが得られるからです。

 
 

企業の人材育成や社会貢献にもつながる


――個人的にプロボノとして活動するだけではなく、企業としてプロボノに取り組むケースも増えていると聞きました。
 
CSRや社会貢献活動の一環として、また社員の育成を目的として、社内で希望者を募り、チームになってNPOなどでプロボノを行う企業もあります。
有名な例として、コロナ禍で医療用の防護ガウンの需要が急増した際に、小さなガウン工場に大手自動車メーカーの社員がプロボノとして入ったことが大きな話題になりました。自動車製造で培ってきた知識を生かして、どう生産工程を改善するべきかを工場の人たちと一緒に考えて、大きく生産能力を向上させました。
 
――プロボノには高いスキルや専門性が求められるのでしょうか?
 
必ずしも卓越した高度な技術や最先端の知識が求められているというわけではありません。
NPOや立ち上げて間もないベンチャー企業には「ノウハウ(情報)」が足りないことが多いものです。企業では当たり前に行われている業務や習慣が役立つケースも多々あります。
 
たとえば、環境問題の取り組みや障害者・高齢者支援など素晴らしい活動を行っているのに、世間に知られていないためにスタッフや活動資金が集まらず困っているNPOはたくさんあります。活動が忙しくて団体の広報に手が回らなかったり、そもそも広報のノウハウを持っていなかったりすることが多いためです。そこでプロボノとして、団体のパンフレットやホームページをきれいに、分かりやすく作るだけでも大変喜ばれることでしょう。
 
他にも、経理や会計の仕組みを一緒に整えたり、短時間で充実した議論ができるよう会議の進め方のノウハウを伝えたりと、企業で働く中で身につけてきた知識やスキルを活用できる場面は多々あります。
 
――では、プロボノを行う人たちのメリットも教えてください。
 
企業では転勤やジョブローテーションによって、過去に身につけたスキルが今の部署では十分に生かしきれないこともあるのではないでしょうか。たとえば、プロボノの活動を通じて営業やマーケティングのノウハウやスキルを生かし、現場で使わなくなっていた自分の知識やスキルをアップデートすることができた、という話を聞くこともあります。
 
社員のプロボノ活動を認める企業側にとっても、プロボノの経験を通して社員が成長し、社外の活動で得た経験を職場でも生かせるようになることは大きな利点です。地域の団体や外部企業とつながり、一緒に活動することで自社に親しみを感じ、応援してくれるファンが増えることは得がたい財産になるでしょう。

 
 

共創・共働する仲間としてのプロボノ


――プロボノにはさまざまな意義があることがよく分かりました。注意すべき点はありますか?
 
「外部の知見を得られる」「スキルを有効利用できる」というメリットが生まれる一方で、プロの知識やスキルを無償あるいは低額で提供したり、してもらったりすることは、トラブルにもつながりかねません。
 
「誰かの役に立ちたい」という思いを、単なる「無償の労働力」として都合良く利用することは許されません。また、自身や自社がプロボノとして活動する場合も、つい善意からあれも、これもと引き受け過ぎて無理を重ねることも良くありません。
 
個人、あるいは企業としてプロボノ活動をする場合には、事前に相手の企業や団体とよく話し合い、プロボノとして責任を持って活動できる範囲はどこまでか、時間や期間はどれくらいかを決めておきましょう。「ここからは費用が必要になります」とはっきり伝えて納得してもらうことも時には必要です。何をどこまでお願いできるか、丁寧なコミュニケーションが必要なのは、プロボノを受け入れる側になった時も同じです。
 
――双方のコミュニケーションが欠かせないと感じます。プロボノを受け入れる側にも、理解や心構えが必要ですね。
 
「プロボノを受け入れる」「プロボノが自社の活動に協力してくれる」ということは、単に「プロが無償で仕事をしてくれる」ということではありません。プロボノは人によって熱意もスキルも異なりますし、必ずしも受け入れる側のニーズに合った能力や意欲を持っているとも限りません。
 
しかし、「地域に仲間やファンを作りたい」「社外の人と一緒に自分たちも学び、成長したい」と考えるのであれば、プロボノは中小企業にとって強い味方になるでしょう。思いを理解し合い、共に企業や地域の抱える課題に取り組んでいく仲間として、プロボノと良い関係を作っていくことが大切です。

 
 
 

<取材先>
今永典秀さん
名古屋産業大学現代ビジネス学部経営専門職学科准教授、地域連携センター長。インターンシップを中心としたコーオプ教育や地域連携・産学連携に携わる。大学外では自らもプロボノとして学生と社会人が共に学ぶ場「NAGOYA×FOREVER」の代表を務めるほか、若者支援のNPO等の活動に関わる。
 
TEXT:石黒好美
EDITING:Indeed Japan + 笹田理恵 + ノオト

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