通年採用とは
通年採用を導入して時代の変化に即した採用活動を行うためには、通年採用がどのような仕組みなのかを理解しておくことが大切です。
まずは、その概要について詳しく説明します。
◆年間を通じて採用活動を行うこと
通年採用とは、年間を通じて採用活動を行うことをいいます。
通年採用を導入すれば時期を限定することなく人材を採用できるため、人員増減の偏りを防げるようになると期待されています。年間を通じて安定的に人員が維持できれば、一部の従業員にかかる負担を分散しながら、円滑な事業運営ができるようになるはずです。
◆近年導入する企業が増えている
通年採用は新卒採用とは違い、留学生や帰国子女、第二新卒や社会人経験者も積極的に採用できることから、企業にとって理想的な人材を見つけられる可能性が高まります。
また、高付加価値人材を採用するだけでなく、「新卒採用を行っても十分な応募が集まらない」といった理由で通年採用を導入する企業も増えてきています。
新卒者に内定を出しても、内定辞退者が出ることで最終的に欠員が生じるなど、正常な事業運営ができなくなる危険性も高まっていることから、年間を通じて安定的に人材の確保を目指せる通年採用を導入する企業はさらに増える傾向にあります。
◆経団連が方針を定めている
企業の人材採用と密接な関わりがある経団連は、2019年4月に通年採用を拡大する方針を発表しています。そこでは、従来のように年度初めである4月の一括採用は維持しつつ、インターンに参加した学生や、専門分野を履修した学生などを卒業後でも選考対象に加える方針が発表されています。
今後はこういった「複線型」の採用を実施することで学生の採用チャンスを拡大するとともに、各企業が時期に関わらず柔軟に人材が確保できるような仕組みが構築されることが期待されています。
経団連(日本経済団体連合会)の「採用と大学教育の未来に関する産学協議会 2020年度報告書」によると、2021年卒者の採用と比べて2022年卒者の採用時期は通年採用が増加すると予想されています。また、今後5年間で通年採用を増やしていくという企業もあり、一括採用から通年採用に切り替える企業が増えています。
通年採用と新卒採用の違い
通年採用と新卒採用には次の3つの違いがあります。
◆採用期間の長さ
通年採用は、年間を通して人材を募集しているのが特徴です。選考スケジュールを自由に設定できるため、時間をかけて自社に必要な人材を見極められるというメリットがあります。
一方、新卒採用は、決められた時期に複数の企業が一斉に採用活動を始めるのが特徴です。新卒採用では企業の広報活動や選考の開始日が「就活ルール」で策定されています。例えば2022年卒の採用では、広報活動の解禁日が2021年3月1日、選考解禁日が2021年8月1日です。この解禁日を軸に採用スケジュールを立てていくことになります。
新卒採用だけでは必要な人材を確保できない企業も多く、今後は通年採用を取り入れる企業が増えると予想されています。
◆新卒学生以外の採用
新卒採用では、採用する人材が新卒者に限定されているのが特徴です。同じ時期に新卒者を採用することで人材育成にかかるコストを削減できると期待されています。
一方、通年採用では、留学経験者や既卒者も採用対象に含まれます。新卒者以外にも幅広い人材を集められるため、企業にとって即戦力となる人材を採用したり、企業にイノベーションを与える人材を採用できる可能性が高まります。
◆内定辞退者への対応
新卒採用では一度にまとめて採用することができますが、内定辞退者がたくさん出てしまうと予定採用数を割り込んでしまい、正常な事業運営が困難になってしまう危険性があります。
そのため、あらかじめ内定辞退者が出ることを想定して多めに内定通知を出したり、内定通知後に内定者に対してフォローをするといった手間がかかってしまいます。
内定辞退者が出た場合、新卒採用より通年採用の方が柔軟に対応できます。必要な人材が充足すれば募集を締め切ることもできるので、安定的な事業運営を維持しやすくなるのです。
通年採用のメリット
企業が通年採用を導入することには、次の3つのメリットがあります。
◆慎重に学生を選ぶことができる
通年採用を導入していれば、年間を通して時間をかけながら採用活動ができるため、慎重に学生を選ぶことができます。
新卒採用のように、選考の期限は決まっていないため、より企業に適した人材を選びやすくなります。入社後のミスマッチを防ぐことにもつながるので、企業だけでなく求職者にとってもメリットが大きいです。
◆内定辞退のリスクに備えられる
先述した通り、内定辞退が出た場合、不足分の人材を補充しやすいのは通年採用です。新卒採用であれば、内定辞退の連絡を受けた時期によっては、追加募集ではなく次の年度の採用時期まで待たなくてはなりません。
一方、通年採用は企業のスケジュールに合わせて募集をかけられるため、適宜人材を補充できます。予定の人員数を確保することを重視するのであれば、通年採用の方がリスクは下げられるでしょう。
通年採用のデメリット
通年採用を導入しようと考えている場合、通年採用のメリットだけでなくデメリットについても知っておくことも大切です。通年採用のデメリットとして、次の2つが挙げられます。
◆採用担当者の負担が増加する
1つ目は、採用担当者の負担が増加すること。通年採用を導入すると、1年中人材を募集し続けるため、応募数によっては採用担当者の業務が大変になってしまいます。
企業の採用担当者は、採用以外にもたくさんの業務を抱えている場合があり、時期によっては採用業務に集中できなくなるかもしれません。
◆採用コストがかかる
2つ目は、採用コストがかかること。通年採用では、採用活動の期間が限定されている新卒採用よりも多くの場合、時間や費用がかかります。
もちろん、自社のホームページで求人情報を掲載したり、ハローワークに求人を出したりすれば、コストを抑えて人材を確保できるかもしれません。しかし、求人を出していることを幅広い求職者に認知してもらうためには、それなりの工夫が必要になるでしょう。
広告宣伝をおこなうなど、予算に応じて適切な採用活動を行うことが大切です。
通年採用を成功させるためのポイント
通年採用を成功させるためには、次の3つのポイントを意識しておくことが大切です。
◆学生への理解を深める
通年採用を成功させるためには、まずは学生への理解を深めることが大切です。就職活動を行う学生が就職に対してどのような考え方を持っているのか、海外志向や転職への意志がどの程度あるのかといった内容を把握することで、企業と学生のミスマッチを防げます。
また、学生によっては、卒業研究や留学などでスムーズに就職活動を行えない人もいます。学生が就職活動をしやすいスケジュールを組むことによって、自社に合った学生を採用する機会を増やすことができるのです。
◆採用エリアを拡大する
企業によっては、企業周辺のエリアに限定して採用活動を行っているところもあるようです。しかし、採用エリアを限定していては、十分な求職者を確保できず円滑な事業運営が難しくなるかもしれません。
東京や大阪といった大都市に求人が集中しやすい傾向がありますが、地方や海外まで採用エリアを広げることで、より多くの人材を確保しやすくなります。
まとめ:通年採用で優秀な人材を集めよう
ここでは、通年採用の概要や新卒採用の違い、通年採用を導入するメリットとデメリットなどについて説明しました。
通年採用を成功させるためには、多様化する求職者を適切に見極める能力を身につけるとともに、コストパフォーマンスの高い採用活動を行うことが大切です。ここで説明した内容を参考にして、企業が必要とする人材を効率的に集められるようにしておきましょう。