内定取り消しは違法なのか
結論から言えば、内定とは労働契約が成立した状態を指すため、一方的な取り消しは違法になります。実際の入社前であったとしても、法律上では「始期付解約権留保付労働契約」にあたり、たとえ就労前であっても雇用関係は成立していると見なされるのです。
正当な事由の例
では、どのような事由であれば、内定取り消しが認められるのか。具体例を見ていきましょう。
◆業績悪化
業績悪化が整理解雇(リストラ)の理由として認められるには、過去の判例から次の要件を満たさなければならないと考えられています。
(1) 人員整理の必要性
(2) 解雇回避努力義務の履行
(3) 被解雇者選定の合理性
(4) 解雇手続の妥当性
内定取り消しにおいても同様に、上記の要件をすべて満たしているケースであれば、正当な事由として認められると考えていいでしょう。
◆病気や怪我
内定者が大きな病気や怪我により、労働の提供ができなくなってしまったケースは、内定取り消しが認められる事例の1つでしょう。労働契約を結んだ時点の条件から大きく変わってしまったとなれば、やむを得ない措置と言えます。
◆犯罪歴の発覚
選考の時点で明らかにされていなかった犯罪歴、あるいは反社会的な行為が判明した場合は、採否の判断に重要な影響をあたえる事項を隠していたもの(経歴詐称)として、内定取り消しが認められます。
◆卒業できない
高校・大学等を卒業する前提で内定が出されている場合には、単位不足などの理由で卒業できなければ採用の要件を満たしていないため、内定取り消しが認められます。
内定取り消しで起こり得るトラブル
では、こうした条件を完全に満たしていない場合、内定取り消しによってどのようなトラブルが起こり得るのか。その最たるものは、内定者から予定通りの採用や損害賠償請求を求められて訴訟に発展するリスクでしょう。
この場合、金銭的なデメリットはもちろんのこと、不要な悪評をインターネット上で拡散されるような事態も考えられます。また、会社側があまりに一方的で悪質な内定取り消しを行ったと見なされた場合、厚生労働省が社名を公表することもあり得ます。いずれも会社の大きなイメージダウンに繋がり、次の採用活動にも支障をきたしかねません。
こうしたトラブルを避けるためには、なぜ内定を取り消さなければならないのか、誠意をもって説明し、相手に理解を求めることが一番です。もし業績悪化が理由であれば、むしろ「入社前に実情を知れて良かった」と思ってもらえることもあるでしょう。厳しい経営状況下で無理をして新たな人材を採用しても、その負担がいっそうの業績悪化を招くこともあり得るのです。
とはいえ、内定取り消しは相手にとって人生を左右する重要な事柄です。謝罪の気持ちと厳しい事情を理解してもらうことで、トラブルに発展しないよう務めましょう。
監修:うたしろFP社労士事務所 社会保険労務士 歌代将也
TEXT:友清 哲
EDITING:Indeed Japan +友清 哲 + ノオト