内定辞退の勧奨は違法に! 「事業主等指針」の改正


2021年4月、厚生労働省は「青少年の雇用の促進等に関する法律」(若者雇用促進法)第7条に基づき、「事業主等指針」を改正しました。
 
そもそも事業主等指針とは何なのでしょうか。改正の内容や背景、今後、企業が気をつけるべき点などについて、弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士の家永勲さんに伺いました。

 
 

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事業主等指針とは


若者の雇用促進をはかるために、企業(事業主)や地方公共団体などが果たすべき努力義務の具体的な措置をまとめたものが「事業主等指針」です。
 
これは、2015年に制定された「青少年の雇用の促進等に関する法律」(以下、若者雇用促進法。1970年に交付された「勤労青年福祉法」を改正)に基づきます。若者雇用促進法第7条では、「厚生労働大臣は、第四条及び前条に定める事項についての必要な措置に関して、事業主、特定地方公共団体、職業紹介事業者等その他の関係者が適切に対処するために必要な指針を定め、これを公表するものとする」と定めています。

 
 

事業主等指針の改正とその背景


2021年4月、青少年の雇用機会の確保と職場への定着をはかるために企業が講ずべき措置として、事業主等指針に以下の事項が追加されました。
 
1. 募集情報等提供事業者・募集者等における個人情報の管理
(人材募集にあたって、応募者の個人情報を適切に管理すること)
2. 就活生等に対するハラスメント問題への対応
(求人活動でハラスメントが発生しないような対策を講じること)
3. 内定辞退等勧奨の防止
(内定を辞退するよう促すなど、応募者の権利を侵害するような行為を行わないこと)
4. 公平・公正な就職機会の提供
(就活生などの応募者に対して、他社の選考を受けさせないなど、就職機会を妨害するような行為を行わないこと)
 
事業主等指針の改正がなされた背景には、近年問題になっている企業による就活生へのハラスメント(パワハラ、セクハラ、オワハラなど)が大きく影響しています。「3. 内定辞退等勧奨の防止」や、「4. 公平・公正な就職機会の提供」もハラスメント対策の一つといえるでしょう。

 
 

内定辞退の勧奨の違法性


改正の一つである「3.内定辞退等勧奨の防止」とは、採用内定が決定している就活生に対して、企業が内定を辞退するよう促す行為を指します。
 
採用の内定は、企業が採用内定通知を出し、就活生が承諾することによって成立します。新卒採用の場合、入社日までに日数があるため、労務提供の開始までは「内定」という位置付けになりますが、あくまでも便宜上のものです。内定が決定した時点で、企業と就活生の間に労働契約が成立したと見なされるのが一般的です。
 
つまり、企業の都合で自由に内定を取り消することはできません。内定の取り消しには内定者の合意が必須です。一方的な内定取り消しはもちろんですが、合意が得られないからといって、内定者自らが辞退するように仕向ける行為も「自由な意思決定の妨害」に抵触し、違法となる可能性があります。
 
内定を辞退するように強要されたと就活生が訴訟を起こし、その主張を認める判決がくだされた場合、企業は損害賠償の支払いを命じられることになるので注意しましょう。

 
 

内定取り消しおよび内定辞退の勧奨が違法にならないケース


内定取り消しおよび内定辞退の勧奨がすべてにおいて違法というわけではありません。
 
内定時に交わした誓約書等に記載している事項に就活生が違反した(卒業できなかった等)、提出書類に虚偽があった(健康状態等)など、客観的かつ合理的な理由がある場合は、企業が一方的に内定を取り消すことができます。とはいえ、一方的に取り消すのではなく、まずは内定辞退を勧めるなど穏当に対応することをおすすめします。
 
内定者には落ち度のない企業側の一方的な都合など、客観的かつ合理的な理由ではない内定辞退の勧奨は基本的に避けるべきです。どうしても必要な場合、内定者の「自由な意思決定」を妨げる行為は厳禁です。企業は内定者に対して誠意を持って、「誠実な協議」を行いましょう。

 
 

事業主等指針の改正によって企業が注意すべき点


コンプライアンスが重んじられる風潮にある現在、就業規則などでハラスメントに関する防止措置を明確に定めている企業は少なくありません。内容は変えずに、対象者を従業員だけでなく就活生にも適用することで、十分に対応できるはずです。
 
内定辞退の勧奨において問題になるのは、担当者の勧奨時の言動です。オワハラ行為はパワハラやセクハラに該当するケースが多々あるので、それらの規定事項を活かすことができます。
 
たとえば、セクハラ防止の観点からは女性の就活生は女性従業員が担当する、パワハラ防止の観点からは複数名で内定者に会うようにするといったルールが効果的です。ここまで細い事項を就業規則に定める必要はありませんが、対応する従業員に対しては研修などで理解させましょう。
 
正式な採用活動はもちろんですが、就活生のOB訪問なども含めて、ハラスメントを未然に防ぐ企業努力がより求められています。
 
また、今回の改正を機に、すでに事業主等指針に明記されている点についても改めて留意することをおすすめします。

 
 
 

※記事内で取り上げた法令は2021年7月時点のものです。
 
<取材先>
弁護士 家永 勲さん
東京弁護士会所属、弁護士法人ALG&Associates 執行役員 企業法務事業部長。
多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事し、企業経営に付随して生じる様々な法的な課題の解決にも尽力している。近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」(労働調査会)がある他、労政時報、労務事情等へ多数の論稿がある。
 
TEXT:塚本佳子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト


 
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